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伝統の新しい形vol.2 東京から生まれた和紙の新たな世界

シェア街のdentou庵によるトークイベント2回目を開催しました。
今回は東京で作られる『和紙の地域との関りや歴史、海外での反応や、新しい取り組みなどについてお話を伺いました。

2021年4月10日(土)19:30~21:00 Zoomで開催しました。
参加者は30名弱(撮影掲載許可をいただいております)。

全体写真

登壇者は東京産の原料で和紙を作られている「東京和紙株式会社」代表取締役の篠田佳穂さん。

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タイムスケジュール
19:30~ 挨拶と概要説明
19:40~ アイスブレイク
19:45~ 登壇者の話(クイズ形式&HP等)
20:40~ 質疑応答
21:00   終了

【はじめに登壇者からの質問】

質問1:どこから参加していますか?
千葉県 / 千葉市原 / 愛知です! / 横浜市鶴見区です! / 静岡県からです / 東京都中央区 / 川崎市麻生区から / 千葉の浦安市から参加してます! / 千葉!! / 東京都北区です! / 東京都台東区です / 千葉県柏市です! / 横浜です / 東京です。 / A305→部屋番号!? / 松戸から参加です

質問2:ここ一年和紙に触ったことはありますか? はいorいいえ
はい→8名
いいえ→11名
※お札は和紙でできている→いいえと答えた人も実は触っていた説!
※偽札体側のためお札は洋紙ではなく和紙!

質問3:はいと答えた人は何で和紙に触れましたか?
紙漉き体験 / 折紙 / 懐紙(天ぷらをのせる)→洋紙かも / ぽちぶくろ / 紙漉き体験 / 名刺を和紙でつくりました / 筆箱と名刺入れ / 障子 / 和紙の懐紙をつかっています^^ / 名刺入れ / 鏡餅を、和紙を敷いてかざりました /お箸置き 

質問4:どうやって和紙は作られているか知っていますか? はいorいいえ
はい→9人
いいえ→9人
※はいの人→和紙は何で作られていますか?
 楮 / こうぞ / みつまた / 植物の繊維と糊、こうぞ、みつまたetc /

【和紙作りの工程】

工程

楮(こうぞ)の木を刈り取る(12~1月にかけて)→東京和紙はショップ前のプランターに植わっている楮を刈り取り一部使用しています。

②木を適当な長さにカットして3時間ぐらい蒸した後、芯と皮に分け、剥いていく(皮剥ぎ⇒地域で呼び方が違います)。

③剥いたものを再度3時間ほど煮る(煮熟 しゃじゅく)⇒硬い繊維を柔らかくする。

④煮込んだものを何度も洗う⇒アクを抜いていく。山の方では川で余計なものを洗い流すけど、都内では難しいので水道水で行ってます。白皮についた傷、不純物などを取り除く作業(塵取り ちりとり/ちりより)。

⑤余計なものを取り除いたきれいな白皮をたたいて解す(打解/叩解 だかい/こうかい)⇒機械でたたくところもあるけど、東京和紙では全て手打ち。
篠田さんQ:どのぐらいたたくでしょうか?
参加者A:100回 / 3日くらい?/ 500 / 1万回とか / 100!/ 1000 /2時間くらい/10000/1万くらい?
正解:量にもよるけど2~3時間たたきます(機械だと15分ぐらい)

⑥トロロアオイ(オクラの親戚で食べられる)の根をたたいて抽出したネバリを使い、白皮の繊維を水中に均一に分解させる。

⑦漉き舟の中に叩いた白皮と水とトロロアオイのネリを入れて攪拌。主に木枠の「桁(けた)」に挟んだ「簀(す)」(竹ひごや萱と絹糸で編んだもの)の上に水中の白皮の繊維を平らに敷き伸ばすことが漉(す)きの作業。漉き方も様々ある。漉き上がり、まだ水分を含んだ「湿紙(しとがみ)」を一枚ずつ重ねて置いていく⇒紙床(しと)。

⑧紙床を板に挟んで圧搾機などでプレスして、水分を搾り出し、搾った湿紙(水分を含んだ状態の和紙)を一枚ずつ剥がして刷毛で板などに干して自然乾燥(熱い鉄板で乾燥する方法も)。オンラインワークショップではアイロンで乾燥させました。

【東京和紙の商品】

・廃棄寸前の野菜を使った和紙
・工程で取り除く鬼皮、あま皮をあえて使った和紙
・和紙で作った鞄、籠バッグ(濡れても大丈夫なように加工済み)
・和紙の座布団
・水引結び(商品販売から結びのワークショップまでやっています)

写真1:廃棄野菜からできた和紙⇩

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写真2:和紙の鞄⇩

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写真3:和紙の座布団⇩

座布団


写真4:水引⇩

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【水引との繋がり】

先祖は長野県飯田市で水引問屋をやっていました。祖父の代まで続いた商売を継いでいきたいという思いと、水引の芯は和紙でできているため、和紙からその文化を伝えていきたいと思ったのがきっかけです。ワークショップに使う水引も長野県飯田から仕入れています。

【作らないで伝える和紙の魅力】

日本にある伝統的な文様から和紙の魅力を伝えるセミナーもやっています。代表的な歌舞伎の文様から、動植物、また道具などに由来するものなども伝えています。

篠田さんQ:9頭馬文様にはどんな意味があるでしょうか?
参加者A:上手くいく/キューバ/食べることしか浮かばない(笑)
正解⇒上手くいく

写真5:9頭馬文様の和紙⇩

9頭馬文様

【浅草の和紙の歴史】

水や運搬などの面から、地方の山があるところで作られることが多い和紙(新潟、埼玉、島根、高知など)。しかし、実は浅草でも和紙を作っていた歴史があります。

浅草の和紙の歴史は再生紙に由来していて、そのはじまりは使い古した和紙を再生する産業として生まれました。当時は書き損じた紙をくず紙拾いの人が回収して、紙漉き屋に流し、再生して和紙にしていました。この動きが江戸時代後期には非常に盛んになり、「浅草紙」と呼ばれる浅草の一大産業の一つとなったのです。最初に産業として始めたのは浅草雷門近くの田原町で、地図に紙漉町と記されるほど和紙職人が集まる浅草紙の産地でした。

しかし、浅草寺の活気が満ちるにつれて、作業場所を要する紙漉屋の活動拠点は狭まり、東京の山谷・吉原に活動拠点を移すも、近代化の波により足立区に再度拠点を変えた後、やがて衰退してなくなってしまったという歴史があります。

写真6:昭和初期の再生紙を模倣した和紙(原料は新聞紙)⇩

再生紙

【現代の浅草紙に新たな価値を】

浅草紙が当時、使われなくなったものを再生する産業だったことから、現在は廃棄野菜の活用だけでなく、お役目を終えた「おみくじ」を神社から回収して和紙として再生させています。浅草紙の歴史を踏まえた上で、その役割を現代的な発想やモノでアレンジし、東京和紙オリジナルの和紙『平成ASAKUSA和紙』として提供しています。

おみくじのような身近なものが伝統工芸品として再生されることや、鞄などの日用品として手に取りやすい形にすることで、より多くの人に和紙に触れてもらう機会を提供しています。

写真7:お役目を終えた「おみくじ」入りの和紙⇩

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篠田さんQ:どんなモノだったら和紙に触れてみたいと思いますか?
参加者A: 本/日記とか?/ブックカバー/財布やパスケース/スマホカバー/しおり/かばん/pen/財布/名刺とか/手紙/コピー用紙?/コップ/便箋/紙皿とか、ちょっと良い使い捨て食器/小さいテーブル/上着/壁紙/ /包み紙/食べられるもの/お弁当箱とかいいですね!/家具? /家中和紙にしたい/サンダル

【見つけてもらいたいというお願い】

こんなものだったら和紙に触れてみたいと回答された商品は、実はほとんどが実際に存在しています。職人はみんな工夫を凝らして思いや商品を発信し続けているけど、消費者がその発信を受け取る機会がないと、結局は一方通行になってしまいます。もっと消費者の方達に見つけてもらいたいです。

職人側が工夫して発信する努力をするだけでなく、消費者も「こんなものがあったらいいな」という思いがあるのであれば、受け身だけにならず、作り手側が発信している情報をキャッチする力をつけてほしいです。和紙という一つの伝統を無くさないためにも、職人側からのお願いです。

そして「こんなものがあったらいいな」ということがあれば、ぜひ出していってもらいたいです。今後は財布、防水のエプロンなどを計画しています。

【「食」の視点からの和紙】

和紙を作って使うだけでなく、別の視点で和紙を楽しんでもらうためのプログラムも用意しています。和紙作りでは、材料となる楮以外は、破棄されてしまうので、それを再利用して「食」という視点からワークショップも開催しています。実は和紙漉に使うトロロアオイは別名「花オクラ」と呼ばれ、実も花も食べることができ、一部の地域では野菜として販売もされています。これらを使ったレシピ開発や紹介、他の食材とのコラボ企画も開催しています。

写真8:和紙の原料を食す⇩

食べる

【海外に向けて】

現在、日本人の和紙を含む伝統工芸の評価は薄く、逆に海外からは高く評価されているのが現状で、東京和紙は立ち上げ当初から海外に目を向けて発信を始めました。ブームの逆輸入のように、海外で日本の文化が評価され、それを見た日本人が魅力を再認識してくれればいいと思っています。

実際に訪れたイギリス、フランス、アブダビ、タイ、ドイツなどではとても良い反応をもらいました。提供したものや、それぞれの国の文化や歴史で反応は違えど、「日本らしさ」「自然」「エコ」という部分にはとても関心が強くありました。

商品を購入してくれた海外の人は、皆「日本が好き」という方がとても多く、もっと多くの日本人が日本のこと、和紙のことを海外の人に伝えていけるようになればいいと思っています。

【和紙から生まれた言葉】

「冷やかし」
語源は浅草紙。紙すき職人が、使い古しの紙を一昼夜水に浸けて繊維をほぐす工程を冷やかすと言います。その工程の間は職人はやることがなくなるので、歓楽街に出向くものの、お金が無く遊ぶこともできないので、歓楽街の遊女達から、また『冷やかし』が来たと言われていたことが言葉の由来になります。
※当時吉原周辺は田んぼが多く、足元が泥で汚れている様を見て、遊女達はすぐに冷やかし(和紙漉職人)が来たと分かったという説があります。

「横紙やぶり」
和紙には繊維の目に方向があり、縦には簡単に破けるけど、横にはなかなか破れないようにできています。そこで、力ずくで横から破ろうとすること(無理に事を成そうとする様)を『横紙破り』といいます。理にかなっていないことを無理やりする強情な人に使ってみましょう(笑)

【質疑応答】

Q:江戸時代から再生紙は和紙?
A:元々和紙はとても貴重な品で、経典や高貴な身分の人の戸籍謄本のようなものに使われていて、一般庶民に使われるようになったのが江戸中期から。白い和紙はとても高価なものだったので、再生紙として和紙を使う人が増えていった背景があります。

Q:和紙のコピー用紙は無理?
A:機械式で作った和紙のインクジェットプリンター用紙などはあるけど、原料は洋紙と混ざっていたりするので一概に純和紙製のコピー用紙とは言えません(毛羽立ちやすいので紙詰まりするかもしれない)。

Q:欧米以外で和紙について関心の強かった国はありますか?
A:海外でも元々紙作りの文化はあり、韓国などでは日本の薄い和紙は反発されたりするので、今は欧米系が有力です。

Q:日本以外で和紙は作れますか?
A:和紙作りには水が大事で、日本は軟水のため薄い和紙作りに適しています。しかし、海外では硬水が多く、紙の質感がバリバリになってしまいます。硬水ではトロロアオイの粘りが効かないため、日本で作る薄い和紙のようにはならないと思います。

Q:日本で和紙職人は何人ぐらいいますか?
A:作家も混ぜるとかなりいると思うけど、一概に何人とは答えづらいです。作家は多いけど、商品を誰かに納品している職人は少なくなります。 現状和紙業界も人を雇えなくなっているので、職人になりたくてもなれない人は結構いると思います。

Q:和紙と洋紙の違いは何ですか?見分け方を教えてください。
A:和紙の原料は木の皮からできています(楮、ミツマタ、雁皮、桑、竹、麻など)。それに対して、洋紙はパルプなどを粉砕してのりで固めたものです。和紙は繊維が絡まってできていて、のりを使わずに作っているため、簡単には破けませんが、洋紙は簡単に破ることができます。わかりやすいのがレシートです。ポケットに入れて洗濯した経験がある人も多いと思います。和紙はポケットから出し忘れて洗濯してもボロボロにならないです。ちぎってみるとわかるけど、見た目で言うと、機械で作ったものは洋紙とも混ざっていたりするので、正直見た目の違いはわからないというのが本音です。

Q:江戸時代、古紙回収はどうやっていたのでしょうか?
A:くず紙を集める場所がありました。くず紙を拾う人(非人)の頭がいる近所(吉原に付近)にあったそうです。山谷だけでなく入谷、鳥越など点々と集める場所があったそうです。

Q:和紙で絵本をつくっている事例などあるのでしょうか?
A:原料・製法を問わなければ作れると思います。和紙100%で作ったらかなり高価な絵本になると思います。完全に手作りではなく、機械製造などに頼る形にすれば可能かと思います。

その他、参加者のコメント、感想
●商品について
鞄すごい/水引すてきです/座布団ほしい!/文様がすてきですね。/自然な色合いが素敵です/にんじんもカワイイ
●浅草紙と現在の取り組みについて
日本(江戸)ってすごい/初めて知りました、日本の再生紙の歴史!/再生紙の歴史って意外に古いんですね!/おみくじ入りの紙ってなんかありがたい感じがします/とても勉強になりました!
●和紙文化について
文化がなくなっていくのは純粋に寂しいですね。/あって欲しい!/もったいない、無くなったら困る/横紙やぶり使うタイミングが難しい(笑)
●アイデア
何か”食”を提供されているカフェや居酒屋と共創して提供すると良いのかもと思ったりしました。/「わし」っていうタイトルの絵本もおもしろそう。

【終わりに】

一度は衰退してなくなってしまった伝統を、現代の発想や今あるモノの価値を添えて新しく作り直す取り組み、とても素敵だと思いました。それも浅草の歴史や地域の特性、先祖の思いも受け継いでいるところや、常に新しい挑戦を続けているところ、そして何より作り手だけでなく、私達買い手側に必要なこともしっかり伝えていただき、とても学びの深い回になりました。今後、浅草を歩くとき、紙に触れるときはいろいろ思い出すことが多くなりそうです。

お話しいただいた篠田さん、ご参加いただいた皆様、本当にどうもありがとうございました。

【告知】
次回トークイベントの日程
『シェア街文化祭』⇒後日詳細が告知されると思います!
~私達の身近な「和」の世界~
2021年5月5日(祝水)14:30~15:30
「和の文化を五感で楽しむ講座」主宰の橘茉里さんと、珈琲片手にSDGsなテーマで語り合うコミュニティ「エシカルカフェ」主宰の佐藤紗希さんにお話しを聞かせていただきます。

私達の身近にどんな和の世界があり、どんな関わり方ができるのか、参加者の皆さんも一緒に想像してみましょう👍

詳細はシェア街ホームページやdentou庵のFacebookページで告知します。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

dentou庵、シェア街の参考リンクは以下より
【dentou庵】
●facebook
https://www.facebook.com/dentouan
●note
https://note.com/sharemachi/n/n3577a1b60778
●第一回トークイベントまとめ
https://note.com/gunmalover/n/n49f4f491e05d


【シェア街】
●公式サイト
https://www.share-machi.com/
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