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限界状態の中で見える、人間の醜さと美しさ(本を読んで考える:同志少女よ、敵を撃て)

戦争小説は苦手です。というか、戦闘シーンがだいたいダメです。
心がえぐられるような気持になるから。誰かが苦しむ音が聞こえるから。

私は小説で戦争を追体験するだけでもダメなのに、この苦痛を戦地に赴き、その身にすべてを受け止めようとした少女たちがいました
それが、「同志少女よ、敵を撃て」の主人公たち、ソ連の女性狙撃小隊に所属する齢15ほどの"少女"たちです。

少女たちは、自らも銃をもって激戦地を転々とし、狙撃手の精鋭として味方兵士の期待までもを背負います。

敵兵がたくさんいる場所に砲弾を撃つ戦車兵などとは異なり、彼女たち狙撃手は明確に1人の敵を狙います
主人公の少女セラフィマは狙いを定め、銃弾を放つ…すると、狙われた敵は、彼女のスコープの中で息絶えるのです。
命をまた奪った罪の意識も、敵兵の死の苦痛も、彼が撃たれなけば生きられたかもしれない人生や、家族の気持ちも、セラフィマは全部受け止めようとします。

やはり、というのもなんですが、彼女たちの幼い心と身体は、そのすべてを受け止められるほど強くできていません
だから、何度も心を狂わせて、そして殺して、激戦地へとまた歩みを進めるのです

狙撃兵としてのプライドを胸に…。

彼女たちが行く先には、戦地で敵兵や女性、子供にいかにひどいことをしたかでマウントを取り合うような、どうしようもない味方の男性兵たちが待ち構えています。その中にはセラフィマの幼馴染も…。
彼らの醜さと対比するように、主人公たち女性狙撃兵の純真さや、美しさが際立つのです。

物語の構成、展開、情景や心情の描写、どれをとっても圧倒的な完成度。
これが新人作家 逢坂冬馬さんのデビュー作だというから本当に驚きです。

本書は、鈍器本とまではいかずとも、だいぶ厚いです…。
けれど、ページをめくる手が止まらず、最後に主人公のセラフィマが放った一発が、私の胸を熱く打ち抜いて、もう興奮が止まりませんでした…。

本当におすすめです。
ぜひ手にとってください…。
まだ読んでいない人がうらやましい…。

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最近はちらほらと秋雨の日が出てきました。
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ではでは^^


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