マガジンのカバー画像

日本とは何か?

73
日本列島における人間の営みについて思想を軸にした書評中心のライティング。
運営しているクリエイター

#仏教

古代は「仏教」、現代は「啓蒙主義」

古代史の勉強をしたり、実際に奈良のお寺を回っていると、奈良時代の社会を支える虚構(=社会を成り立たせる物語)は仏教(今は啓蒙主義)だったんだな、と改めて感じます。 (薬師寺:2021年春、以下同様) 今に生きる我々がお寺を訪れるのは、多くの人は観光資源としての建築や仏像など、芸術鑑賞やちょっとしたお願い事をするためだと思います。しかし当時の人にとっては、芸術体験やちょっとしたお願いのためために訪れたのではなく、病気や貧困などの真剣な悩みを解消するために訪れていたでしょうし

なぜ神と仏は分離されたのか「廃仏毀釈」について

「なぜ神と仏は分離されたのか?」 その答えは 「明治政府が神(と天皇)を利用して日本という近代国家を創造したかったから」 となります。 神と仏が分離されたことに伴う悲劇「廃仏毀釈」について、今回は最後に紹介した新書2冊を中心に読んでみました(2冊読むとさまざまな地域の廃仏毀釈の実態がわかり、興味のある方はセットでの通読をオススメ)。 日本列島では神仏習合といって「神と仏が合体している姿が、古代から江戸時代にかけて1,200年間続いた日本の宗教の姿」でした。そして基本

「廃仏毀釈」という松本藩主の忖度(改訂版)

本書によれば、松本市は、鹿児島や高知、水戸などと並んで、激烈な廃仏毀釈運動が展開された地域。 その要因は、もともと徳川家一族だった松本藩最後の藩主、松平(のちに戸田)光則の、お家存続をかけた必死の維新政府への忖度がもたらしたもの。そのおかげかどうかはわかりませんが、戸田光則は、維新政府から初代松本藩の知藩事に任命されます。 松本の廃仏毀釈の激烈さは過去に紹介した、破却率100%の鹿児島にはさすがに及びません。 しかしながら、松平戸田家の菩提寺だった全久院はじめ、164あ

修験道とは?「修験道入門」五来重著 書評

<概要>国土の八割が山の日本において生まれ、山岳宗教に陰陽道や仏教を融合させて誕生した「修験道」は、「日本人のあらゆる宗教や文化の原点をなし、庶民信仰を包含した宗教である」ということを紹介した、修験道に関する詳細な著作。 <コメント>「入門」というタイトルとはいえ、これを読めば、修験道のほぼすべてがわかるのでは、と思うぐらい詳しい。著者「五来重」曰く、 このように著者の考えによれば、神道や仏教よりもずっと古い庶民の信仰がまず土着的なベースにあって、そこに神道(神祇信仰)だ