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『人生は洗濯の連続』 440字


今日は休日。
久しぶりの秋晴れだ。
ここぞとばかりに洗濯機を回す。

ピーという音が「出来ましたよ」と告げる。

S子は「ご苦労様」と、労わるように洗濯機を軽くポンポンと叩く。
実は洗う前にも「お願いね」と声を掛けるのだ。
Y夫はそれが可笑しくてしょうがない。

「まるで機械にも心があるかのようだね」
鼻歌しながら洗濯物を干すS子を手伝いながらそう揶揄うと、「あら、あるかもよ〜」と応える。
「何でもこうやって労ってあげると長持ちするのよ」

S子は一事が万事、こんな調子だ。

そろそろ乾燥機付きの新しいのを買おうかと言っても、「まだちゃんと使えるし、貴方が手伝ってくれるのが嬉しいのよ」と言う。
その屈託の無い笑顔を見る度、Y夫は何やら心が洗われるようで晴々と心地良い。

その日、夕食を終えてTVを見ていると、マネーロンダリングである政治家が起訴されたと報じていた。

「あらまあ、、、人生は洗濯の連続。どうせ洗うなら、自分の心を洗えば良かったのにねえ」

時折サラッと上手いことも言う。

Y 夫はそんなS子が大好きだ。


<了>440字

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