欲の海を泳げ
今、何がしたいか。
二十代のころにはそれなりに夢があったし、情熱を注げる所謂"推し"もいたのだけれど。アラサーを経てからのわたしは、そういった熱のすべてが吹き飛んでしまっている。
夢や目標を持つことは正しい。
それに向かって努力もできるし、積み重ねた努力で得たものはスキルになる。
欲しいものがあることもまた良いことだろう。
経済的な努力や節約といった道につながるのだし。
愛しいひとがいることも素敵なことだ。
美への関心や感性を磨く手伝いをしてくれる。
けれど、欲を持つことは本当に本当に、疲れる。
あるとき急に、それらに興味がなくなった。
虚しさは微塵も感じていない。
ただ、「欲」という感情の渦から外れた場所で、沈む夕日を眺めて終える一日のような穏やかさが恋しくなっただけだ。
花瓶の水を変える、
フローリングを磨く、
パン生地をこねる、
ゆっくり湯船に浸かる。
そんな何気ない日常にこそ「美」を感じ、いま、わたしはたまらなくそれらを欲する。
これもまた「欲」なのだろう。
熱のない、きわめて冷涼たる波。
わたしはわたしのためだけに、求めたいのだ。
美、生、知、物、感性。
誰にもどこにも答えを求めず、自分自身こそを心の重石として生きていく。
それがわたしの「今したいこと」である。
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