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クーパーコーチングの考え方は、ビジネスでも大いに活かせる!
本ブログ記事は『ビジネススキル 完全攻略 -基本編-』からの抜粋になります。全部まとめて読みたい方は、是非、電子書籍をご購入ください。
クーパーコーチングに見る3つの環境作り
サッカーの基礎スキルを習得するトレーニング組織
みなさん、クーバーコーチングをご存じでしょうか?クーバーコーチングは、サッカーの技術と戦術の向上を目指す革新的なトレーニング方法を提供している組織です。クーバーコーチングのメソッドは、オランダの名コーチであるウィール・クーバー(Wiel Coerver)さんによって1970年代に開発されました。
クーバーコーチングの主な特徴は次の通りです
個々の技術の向上:
このコーチングメソッドでは、選手一人ひとりの技術を重視します。
ドリブル、パス、シュートなどの基本技術を徹底的に練習し、選手の技術レベルを向上させます。繰り返しと強化:
練習では、基本的な技術を繰り返し行い、これらの技術を自然と身につけられるようにします。選手は反復練習を通じて技術を磨きます。個人プレイの重視:
クーバーコーチングでは、個々の選手の能力向上に焦点を当てます。
特に、選手一人ひとりがボールを持った時の能力向上に重点を置いています。ゲーム理解の促進:
技術練習だけでなく、選手がゲームの戦略や戦術を理解することも重要視されます。全年齢層への適用:
このメソッドは幅広い年齢層の選手に適用できるように設計されており、子供から大人まで幅広い層の選手が参加することができます。
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なぜ、このメソッドが優れているのか
それでは、なぜ、世界中でこのトレーニングメソッドが受け入れられたのでしょうか。
人材を育成する側の視点(人材マネジメントの視点)で見た時に、クーバーコーチングは大きく3つの観点で優れています。
一つ目が、基本から学ぶことができる体系的なトレーニングメソッド(育成プログラム)を有していること。次に、トレーニングメソッドを正しく教えることができる資格を保有するトレーナー(コーチ)がいること。そして、最後に、(3on3などの)実践形式の場を提供していること。
これら3つを有機的に結びつけることで、選手の能力を最大限に引き出す環境を提供しています。人材育成の観点から見ると、クーバーコーチングがスポーツの領域で実践してきたことは、私たちもビジネスの現場で大いに活かすことができます。
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ビジネスにおける3つの環境作り
クーバーコーチングが提供する3つの優れている点を、ビジネスの育成環境に当てはめた場合、どのような仕組みが必要になるでしょうか。
まず、トレーニングメソッド(育成プログラム)の部分から考えてみたいと思います。クーバーコーチングの場合、「プレーヤー育成ピラミッド」と呼ばれる育成プログラムのフレームワーク(前段で記載した図表)があります。
まずは、ボールに慣れるところからスタートし、徐々にレベルを上げていきながら、最終的にグループでプレイできるようにプログラム化されています。基本的な練習からスタートし、少しずつレベルを上げていけるように設計されているのです。
ビジネスの現場に照らし合わせてみると、クーバーコーチングの育成プログラムに相当するメソッドを作っていく必要がありますが、「はじめに」でも少し触れた、「12の基本スキル」が、まさにこの育成プログラムに該当するメソッドになります。
2つ目の「トレーニングメソッドを正しく教えることができる資格を保有するトレーナー(コーチ)」に相当するのが、OJTベースで、12の基本スキルを正しく若手社員に教えることができる人材(先輩上司)になります。
クーバーコーチングでは、トレーニングメソッドを正しく教えるために、資格制度を整備していますが、この「正しく教える」ということは、ビジネスにおいても非常に重要なポイントになると思っています。というのも、色々な人の仕事の仕方を見ていると、「この動き方だとなかなか成果がだせないな」という人が、結構、多かったりするからです。
仕事の仕方で変な癖をつけてしまうと、一生懸命頑張っていても、なかなか成果を出すことができません。
ですので、トレーナーになる人は、正しい仕事の仕方(仕事の型)をきちんと教えられる人でなければなりません。
そういう意味で、仕事が忙しかったとしても、基本スキルをきちんとマスターしている若手のエース級人材がトレーナーを担うべきだと、私は思っています)。
最後の、「(3on3などの)実践形式の場を提供していること」に関しては、ビジネスの現場においては、プロジェクト(実務)にアサインされて、そのプロジェクトの中で、基本スキルを実際に試してみるチャンスを得ることができるかどうかです。
トレーニングばかりしていても、実際の仕事でスキルを試してみなければ、成長することができないからです。プロジェクトで揉まれ、お客さまや上司から厳しい助言(フィードバック)をいただき、人は成長していくことができるのです。
先ほどのクーバーコーチングのフレームワークにビジネスの要素を加えると、次のように整理できます。
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ビジネスの現場では、社員が成長する環境を作るために、ビジネスの基本を段階的・体系的に基本スキルをマスターできるトレーニングメソッド(育成プログラム)を整備する必要があります。
さらに、そのスキルを正しく教えられるトレーナー(優れた先輩上司)がいて、プロジェクトへの参加など成長の機会を提供することが大切です。これら3つが有機的に連携した時に、社員は大きく成長できるのです。
マネジメント側が取り組むべきこと
基本スキルをマスターしていく社員の立場ではなく、人材を育成するマネジメント側の立場から育成環境をどのように整えていくべきか、少し触れておきます(基本スキルをマスターする立場にある方は、読み飛ばしてもらって大丈夫です)。
「ビジネスにおける3つの環境作り」に対してマネジメント側が具体的に取り組むべきことは、一つ目が「スキル定義と育成プログラムの整備」、二つ目が「トレーナー・トレーニー(OJT)制度の構築・運用」、三つ目が「プロジェクトを通じた成長機会の提供(案件創出)」になります。
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スキル定義に関してですが、本書では12の基本スキルをピックアップし、5段階の評価基準でそれぞれのスキルを定義しています。日本企業でも、ジョブ型雇用(職能ではなく職務ベースの人事制度設計のこと)が一般的になってくる中で、職務ごとに求められるスキルを細かく定義しています。
ですので、若手社員向けの人材育成を本格的に導入していく場合は、社内で定義した職務ごとのスキルと、本書で定義している12の基本スキル(もしくはそれに類するポータブルスキル)との紐づけが必要になってきます。
また、育成プログラムに関しては、本書で提供する育成プログラム以外にも、研修会社が提供する育成プログラムと紐づけていくことも効果的です。
図表で整理すると、各基本スキルの評価基準に合わせて、育成プログラム(外部研修など)を紐づけていきます。
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OJT制度の構築に関しては、新入社員に対して、最低でも2年間のフォローアップが必要になります。1年目はインプット中心になりますが、2年目で、習得できたスキルがどのように業務の中で活かせたのかフィードバックしてあげると効果的です。
フィードバックに関しては、半期や通期で、事業部全体でイベント的に実施すると盛り上がりますので、是非、トライしてみてください。本書で提示する12の基本スキルは、5段階で評価基準を作っているので、トレーニー間での達成度合いの違いを比較できたり、年度ごとでの達成度合いの違いを比較できたりするので、社員の能力のバラツキ度合いを把握することができます。
プロジェクトを通じた成長機会の提供は、現場主導で、上司が部下(トレーニー)に対して仕事を作ってあげられるかどうかです。
人材育成の業務に直接関わっていない事業部のメンバーも、若手社員の成長環境を作っていくためには、頑張って案件を受注していく(業務を割り当てていく)という動き方が求められます。
最後に、誰がどう進めていくかですが、スキル定義とプログラムの整備は人事部が主導して進めていく必要があります。
残りの2つは現場主導(部署単位)で進めていくことになるため、人事部と各事業部門は、しっかりと協力して取り組んでいく必要があります。
最後にもう一点。最近、「人的資本経営」を本格的に導入する企業が増えていますが、人材育成は、長い目で見て投資であり、組織の力を高めるには「人への投資」を積極的に進めていく必要があります。
また、社員から見ても、中長期的な視点で人への投資を惜しまず、キャリアアップできる企業が好まれる傾向にあります。
お金と時間を惜しまず、人が育つ環境作りを進めていくことが、今後、ますます重要になっていきます(社員から選ばれる会社になるためには、色々、大変な世の中になってきましたよね!笑)。