一つの運動メニューを考える中で②
みなさんこんにちは。
最近シリーズ化することにハマってきました。
大学2年生の大杉です。
シリーズ化している理由は、
自分の思考に一区切りつけられること
長ったらしくならないので読みやすくなる(はず)こと
があります。
さて今回はメニュー考案第二回です。
予告の通り、今回はメニューを作る中でのレベル設定についてお話します。
レベルを考える意義
そもそもここでいうレベルを考えるということは、
・対象の熟達度に合わせたレベルを考えること
・それに応じて適切なレベルアップ、レベルダウンを行うこと
です。
そもそもなぜそれを行わなければならないのか、というところをまずは話していきます。
対象にとっての成長のため
例えば野球の指導の際に、試合でゴロボールを取れるようにするという練習で、遅い球なら簡単に取れる子に1mくらいの距離で弱く転がし続けても、その子にとっては簡単すぎてそれ以上の成長ができず、それは試合で活かせるような練習とは言えません。
逆に野球を始めたての子に対していきなり定位置で強い打球でノックしても、その子の運動能力が余程そこに追いついていない限り、怖がったり良い姿勢で待てなかったりして全く意味のない練習となります。
このように、対象としている人にとって簡単すぎても、難しすぎても効果的な練習とはなりません。
対象のモチベーションのため
これも非常に重要です。
自分のレベルより明らかに高いレベルの課題を提示されてしまうと、燃える人は一定数いると思いますが、逆に自分じゃできないと早々に諦めてしまうこともあります。
提示された課題のレベルが低すぎると、最初は楽しいかもしれませんが、だんだんと作業のようになってつまらなくなってしまいます。
適切なレベル設定をすることは、成長のためであるのはもちろん、高いモチベーションを持って積極的に取り組んでもらうためでもあります。
適切なレベル設定のためには?
とは言っても、適切なレベル設定を行うのはかなり難しいです。
というのも、対象が多い場合は一人ひとりの熟達度を把握しなければならないし、その熟達度も練習の中で変化していきます。
そこで、今回は私が意識していることをお伝えさせていただきます。
まずは、初期段階のレベル設定におけるポイントです。
レベル設定のあまり必要ない設計のメニューを最初に取り入れる
これはあくまで一時的、というかどうしてもレベルの把握が直前まで難しい場合に行います。
例えば全員で一斉ダッシュであったり、サッカーの場合はだるまさんが転んだをボールありで行ったり、的あてを行ったりなど、全員が一度にできて楽しいメニューを実施します。
その中で、この人はここができる、ここはまだ難しいなど、簡単なレベルを把握することができます。
いくつかレベル別のコースを配置する
これはよく行っています。
一番簡単なコース、少し難しいコース、もっと難しいコース、一番難しいコースなど、いくつかのコースを予め作っておき、対象の人たちに挑戦してもらいます。
ここで自分でコースを選んでもらうのか、指導者側が指示するのかは、対象の年齢や指導者の理解度によって変えていく必要があります。
そして当然、途中でのコース変更や配置変更もあり得ます。
ここからは、そのレベルアップ、レベルダウンでのポイントについて話します。
P,C,T,Tを考える
これは、一度体育授業のセミナーで学んだことでもあり、私がいつも意識しているレベル変更の際のポイントです。
P(Person):人数構成や相手を変える
C(Course):距離や道具の配置を変える
T(Time):制限時間を変える
T(Tool):使用する道具を変える
Personは、例えば3vs2の攻防練習で、攻めの3に明らかに余裕ができてきたときに、3vs3にして難易度を上げたり、パス練習で味方とパス交換するのが難しい際に、指導者が交代してパス交換の相手になることで難易度を下げたり、ということです。
Courseでは、コース上をドリブルする練習の際、距離を伸ばしたり障害物を増やしたりして難易度を変更します。
Timeでは、制限時間付きのメニューの際に同じ内容でも時間を変えて焦りや余裕を持たせたり、逆に制限時間のないメニューでもあえて時間をつけることで、緊迫感を持たせたりすることもできます。
最後にToolは、最初は扱うのが難しい大きなボールや重いバットではなく、小さいボール、軽いバットを使ったり、簡単になってきたら基準の大きさや重さに戻したりすることで、難易度を調節することです。
できるだけスモールステップで設定する
これは教育、ビジネス、介護など様々な場面で取り入れられている方法です。
一度に大きな目標に向かって進むのではなく、その中でゴールに進むためのステップを細かく分け、少しずつ習得していく、という方法です。
例えば、初心者がいきなりバレーのジャンプサーブを打つことを目標としたとき、最初からただひたすらジャンプサーブの型に合わせて打とうとしても、正直難しいところがありますし、ずっと同じだと飽きてしまいます。
そこで、スモールステップとして、まずは打ちやすいトス(最初の投げ上げ)をできるように練習します。
その後、最後にジャンプを加えて、最高地点でボールをキャッチできるようにします。
そして、まずはネットなしでも良いので、腕をしっかり振り抜いて強い回転をかけて打てるようにします。
最後に、ネットをつけてネットの白帯スレスレに強く打てるようにします。
というように、細かく要素を分け、その1要素ごとに達成感を持たせるのがスモールステップでの練習です。
さらにいうと、上のジャンプサーブももっと細分化できますが、長くなるので割愛します。
スモールステップで行うメリットは、
達成感を毎回味わえるため、飽きやモチベーションの低下につながりにくい
大きな最終目標でも取り掛かる際の心理的な負担が減る
毎回の課題がはっきりする
などが挙げられます。ただ細かすぎても達成感が薄れるため、その調節は必要です。
さいごに
今回はレベル設定のみで書きましたが、それでもこれだけの要素がありました。
誰かのためのメニューを考えるということは、そこに一定の効果や意味が持たされるものが求められている、ということです。
そうでないと、そのメニューを実施する意味がありません。
当然、理屈だけが全てではありません。
関わり方、寄り添い方、伝え方など、感情のような非認知面でも大きく結果は変化していきます。
ただ、より適切に、より良く実施できるようにするために、理論、理屈を知っておくことも必要だと思っています。
今日は長くなりました。それではまたお会いしましょう。