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『グリーフケアの知恵袋』

大切な人を亡くして、悲しみや辛さを感じる日々が続く時に、自分でできるケアのヒントをお伝えします。少しでも心が軽くなり、癒されるための
「これならちょっとできるかも」と思えるグリーフケアの知恵袋です。

#003 「雨音も味方に」

●大切な人を亡くしたときに感じること

大切な人を亡くしたとき、時間の流れが止まったように感じることがあるかもしれません。逆に、時間の流れが止まった中にいると思ったのにふと気が付くと、ずいぶん時間が経ってしまっている時もあるでしょう。
 
苦しみや悲しみ、その他言葉で言い表せないような複雑な感情が心の中でうごめいている感じや、全くやる気も起きず、何のために毎日朝起きなければならないのか、意味が見いだせない感じがする人もいるかもしれません。
 
一人でいるのは良くないかもしれないと思うけど、外に出たり、誰かに会ったりするためのエネルギーは残っていない。自分はいったいなぜ生きているのか、生きることに何の意味があるのか見いだせない……。
 
そんな毎日がいつまで続くのかと思うと、深い森の中をさまよっているように思えてきます。

●過去や未来ではなく「今、ここ」にいるためには

大切な人を亡くして、過去に引っ張られたり、また未来に不安を感じたりする時。過去でも未来でもなく、”今” を感じることが、時には自分自身を癒してくれます。それは、「今、ここ」にいること、つまり、目の前で起きていることに意識を向けて集中できている状態のことです。
 
では、「今、ここ」にいるためにはどうしたらよいでしょうか?
例えば、喪失体験がある時に限らず、雨音や、草木の揺れる音、波の音や川のせせらぎの音に耳を傾けたり、海の白波、青い空を流れていく白い雲を見つめたりしていると、心地よく感じたことはありませんか?
 
ぼんやりと聞こえてくる雨音に耳を傾けたり、窓から見える雲や木の葉っぱなどを眺めたりすることも一つの方法です。今、目の前にあるものに集中することで、繰り返し、頭の中で動いている思考を止めることができるのです。
 
”瞑想”などという難しく感じる行為ではなく、ただ “今” 聞こえてくる音に耳をかたむけたり、“今”目の前にあるものをぼんやりと見たりするだけでよいのです。

気が付いたら、頭の中でぐるぐる回っていた思いや考えも消えて、なんとなくスッキリした感覚になるのではないかと思います。
 

●「1/fゆらぎ」が自分を癒してくれる

皆さんは、「ピンクノイズ」という言葉をご存じでしょうか?
自然界の音に近いバランスの良い音のことで、具体的には、「ザー」という低めの音で、強めの雨や滝、波の音のように聞こえる、いわゆる「1/f(エフぶんのいち)ゆらぎ」を持った音のことです。
 
「1/fゆらぎ」という言葉は、ご存じの方も多いかもしれません。
これは、自然界にある、いずれも一定のようでいて、実は予測できない不規則なゆらぎです。「1/fゆらぎ」が含まれているものは、心地よく快適な気分になります。
 
ザーっという雨音や川のせせらぎ、波の音、私たちの心臓の音、小鳥のさえずり。モーツァルトの音楽にも「1/fゆらぎ」があるそうです。
こうしたピンクノイズを始めとする「1/fゆらぎ」がある音にはリラックス効果があるという研究結果があります。また、寝つきが良くなって、深い眠りにつく時間が長くなるという研究結果もあり、今とても注目されています。
 
音だけでなく、目で見えるものにも「ゆらぎ」があります。
風で葉っぱが揺れている様子、木目、寄せては返す波、ろうそくの炎や焚火などにも「1/fゆらぎ」があるのです。
 
最近では、YouTubeで検索すると、雨音や川の音や音楽、滝や渓流の景色や海の波、焚火の動画などが出てきますし、Spotifyでも「雨の音」と検索すると沢山のチャンネルがあるほどです。これなら外に出るエネルギーがないな、という時でも利用できますね。
 

●雨音さえも味方にして、自分をいたわる

理由もなく不安が湧き上がってきて眠れない時、頭の中でいろんな考えが浮かんできて疲れてしまっている時など、このピンクノイズや「1/fゆらぎ」が含まれた音や音楽を流したり、「1/fゆらぎ」のある動画をぼんやりと眺めてみましょう。
 
一時的にでも、苦しみや悲しみに囚われて緊張している自分を、休ませてあげて下さい。
 
その時にもし、涙が流れてきたとしたら、我慢することなく、泣きたいだけ涙を流してください。それは、緊張が解けて心のフタが開いて、感情を表に出すことができた証なのですから。
 
梅雨や蒸し暑い季節は憂鬱で不快ですが、雨音も味方にして、少しずつ、凍っていた氷が溶けていくように、心の緊張が解けていく感じを味わっていただけたら嬉しいです。
 


【大切な人を亡くして、どうしたらいいかわからない方へ】

(株)ジーエスアイでは、死別や喪失体験をして苦しいけれど、誰に相談していいかわからない、という方に対するご相談をお受けしております。

カウンセリングや分かち合いの会などに参加する前に、どのような状況なのかをお聞きした上で、グリーフサポートの専門家が最適なサポートメニューをご紹介させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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