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【荒木淳一郎の「体験」のデザイン vol.6】枯れた技術の水平思考



リユースマーケットの急速な発展

日本経済を20年くらいのタームで捉えると、2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナウイルス感染症の大流行という難局を乗り越え、ようやく安定的なプラス成長にシフトしてきた。この大きな経済の波に加えて、環境問題への配慮という価値観の浸透も重なり、成長気運にあるのがリユースマーケットである。家庭には、景気が良い時に買い求めたモノが溢れている。衣服や雑貨だけでなく、家電製品・ゲーム機など使わなくなった隠れ資産ともいうべきモノが急速に市場にあふれ出した。その規模は、メルカリの推定によると43兆円に上る。これは、国民一人当たり36万円に相当する。内訳は、書籍・CDなどが35%、衣服34%、家具や家電が16%、レジャー用品が11%。景気が良い時には有料粗大ゴミとして処分されていたものが、景気が低調になると「少しでも換金できないか」と考える人や、「もったいないから誰かに使ってもらいたい」と考える人が増えた。そこで登場したのがリユースマーケットだ。

価値観を変えたアレ

このマーケットが成長した理由にはインターネットの存在が大きい。以前は、個人で売買することは難しかったが、今では簡単にネットで販売できる。その方法は、業者に任せるB2Cと個人で行うC2Cがある。B2Cは1兆6000億円、C2Cが1兆3000億円、合計約3兆円の市場規模だ。これを積極的に事業展開しているのがヤマダ電機。持ち込まれた製品を分解・洗浄・補修・塗装まで行い新品同様で廉価販売している。これが大人気で年間20万件の実績を持つ。なぜここまで浸透したのか。その立役者となったビジネスモデルがサブスクリプション。月々あるいは年間一定の料金でモノを売買やレンタルできるサービスモデルである。もともと、このサービスを始めたのは、音楽や書物の分野でAmazonミュージックやAppleミュージックである。月々1,000円程度で数千万曲ある音楽の中から自由に音楽を楽しむことができる。これで、わざわざCDを買う理由がなくなった。書籍も同様だ。Amazonが運営するkindleや楽天マガジンでも、毎月いろんな本や雑誌が楽しめる。この仕組みが人々の価値観を大きく変えた。

原形は江戸時代の暮らし

江戸時代に一般の人が住んでいた長屋には、風呂も押し入れもなく、台所は家の外の井戸端だった。家が狭いので、季節の衣替えや寝具を替えたりするときに置き場所がない。そこで質屋に預けるのが一般的だった。季節が廻り必要な時期が来ると、お金を払って質屋から出す。その繰り返しで暮らしを営んでいた。家にモノを持たないで、質屋を倉庫代わりにしていたのだ。そんな江戸時代の暮らし方が、通信技術の発展によって今の社会に蘇った。江戸時代の生活スタイルがリユースの原形であり、まさに枯れた技術の水平思考によって生まれたビジネスモデルである。これからの私たちの暮らしは、最先端技術に拘らなくても、ありふれた材料や技術で全く新しいものを生み出すことができる。日本の伝統的な生活道具を訪日客が思いもよらぬ使い方や組合せをする姿を見て、新たな視点に出会い、それまでの認識を大きく変えた経験もある。地球に感謝し、これ以上の気候変動を起こさない暮らし方を考え実行していくことこそが、生活の質を向上させ心の満足度の斜め上を行く先進的で斬新な思考・哲学ではないだろうか。そこにはきっとワクワクする新しい発見と体験が待っているはずだ。


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