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【荒木淳一郎の「体験」のデザイン vol.3】不都合なことが価値を高める


アドボケイト

訪れるたびにワクワクするスーパーマーケット(SPM)。私たちの日常の生活に彩を与えてくれる。あるラジオ番組で、『SPM総選挙』という企画があるのはご存知だろうか。不定期ではあるが5回目を迎える今年の応募総数は約37,000。生活者の関心の高さがうかがえる。
その中でいつも上位ランカーなのが<オーケー>だ。
推しの理由はそれぞれ異なるだろうが、最も大切なのは信頼関係ではないだろうか。<オーケー>は、日本生産性本部サービス産業生産性協議会が発表するJCSI(日本版顧客満足度指数)のSPM業種においても今年を含め14年連続日本一に輝いている。顧客期待・品質・価値・顧客満足・推奨意向・ロイヤルティの6指標の全てで1位評価だ。
その背景にはアドボケイト※1の存在がある。彼らは、生活者の視座でメッセージを届ける<オーケー>の企業姿勢を高く評価している。それがよくわかるのが『オネストカード』と呼ばれる商品情報を表示するPOPだ。一見、店舗にとって不都合な内容を表示している。
例えば「枝豆について:出始めのため値段が高くなっています。最盛期に比べると甘みが少なく、青臭い苦みもあります。5月下旬頃から露地物に切り替わり、粒も大きく甘みものってきます。お急ぎでなければご購入をお待ちください」「レタスについて:9月末の台風の影響でレタスの相場が高騰しています。品質も良くないので、可能ならメニューを変更して他の野菜のご利用をお勧めします。相場が下がり、品質が戻りましたら速やかにお知らせいたします」といった具合だ。そう。店舗にとって明らかにネガティブな情報を敢えて表示する。まさに生活者の味方なのである。

※1.企業やブランドに対して高いロイヤルティを持ち、積極的に他者に推奨する個人

デジタル時代の不都合

かつての商店街では、どんな情報も店主が直接伝えていた。例えば魚屋では「今日は良い鱈が入ったよ。煮つけや酒蒸し、タラチリも良いね」「身が柔らかいから胃腸の弱い人にもお勧めだよ」「今日のアジは脂の乗りが少なくて、ちょっと物足りないから安くするよ」といった具合だ。時代が変わり、大型スーパーが台頭すると、店主との直接的なコミュニケーションは少なくなり、生活者自らが品定めをしなくてはならなくなった。
デジタル時代になると、トレーサビリティ、生産者情報、価格の比較など、デジタルが商売に及ぼす影響が大きくなった。発信が企業から個人に替わると更に透明性が高まり、正直にビジネスを展開する方が最終的には大きな利益が得られることに企業が気付き始めたのだ。B2CからP2Cに替わると、インフルエンサーの影響力は低くなり、アドボケイトの影響力が高まる。そんな時代の店舗価値のキーワードはプリミティブ。「どのような製品やサービスを提供するか」ではなく「どのような顧客体験をデザインできるか」という商売の原点回帰が高い付加価値を生み出すというわけだ。消費環境が厳しくなると、ますます目先の利益に走りがちになるが、長期的な顧客づくりに軸足を置くべきなのだ。

購買プロセスと生活者体験

購買決定プロセスにおける消費行動AIDMA(注意、関心、欲求、記憶、行動)は、AISAS(注意、関心、検索、購買、共有)に変化した。これを、生活者体験で解析すると、注意=感覚、関心=感情、検索=認知、購買=行動、共有=関係性となる。とりわけ関係性こそが生活者とのエンゲージメントを高める。生活者同士がさまざまなコミュニティで関係性を持つようになると、アドボケイトの影響力がさらに高まっていくことは間違いない。商売人が目指す方向は明確だ。



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