すぐれて時めきたまふもの
源氏物語の冒頭に登場する桐壺更衣は、さほど身分が高くない故に後宮の端っこに住んでいたが、帝の寵愛を一身に受けた女性であった。野望渦巻く後宮で、桐壺更衣は彼女より身分の高い女御や、同程度あるいはそれより身分の低い女性たちからさんざん妬まれ、病に伏せって死んでしまう。
さて話は変わる。
先日、私の居所の脇に置いてあるキャビネットの片づけをした。その時に整理したものは自分でも驚くほどの量の香水だった。まさしく、女御や更衣がひしめく後宮のごとく、ボトルから小分け・サンプルに至るまで、それはそれは多くの香水がある。
帝のように、その中のひとつでも末永くずっと愛せるものがあれば良いのだが、残念ながら所持していることをすっかり忘れてしまっていたものもあった。手元に来た時から、それらの香水名をすべて覚えていると思っていたのに、なんとも申し訳なく、もったいないことをしていると反省した。
にも関わらず、次は何を買おうかと思案している私。
実際に思ったらすぐに購入するというわけではないが、そばに侍っている姫たちを蔑ろにしては、いつか罰が当たりそうだ。
そう思いつつ、何かを買うとか、予定を立てるといった行動は、未来を向いている証拠でもあると思う。あれを買おう、これを買おうとwebサイトやカタログを見ながら思案しているときが一番楽しい。
散財は良いことではないが、溜め込んだとて、人はいつ死ぬかわからないのだ。未来に困らない程度に楽しむための散財なら許されるだろう。
いやしかし、新しい姫が入内しても、今ここにいる姫たちも愛でてやらねばならぬ。縁あって我が手元に来てくれた姫たちだ。平等に、妬み嫉みを生まぬよう、大切に愛でてやろう。
いつかこの中から、すぐれて時めきたまふものが出てくれるのも楽しみである。
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