水がなくなる時代-イラク ハバニア湖から学ぶ気候変動と世界の様子
地球温暖化はウソだ! 地球のある特定の国や地域では
記録的な豪雪や寒波に見舞われてるじゃないか!
とおっしゃる方もある一定数いらっしゃいます。
けれども私はそれもちょっと違うんじゃないか?
と思っている派です。
これはあくまでも個人的な見解ですが、
温暖化に関して理解を深めようとすると
「天気」と「気候」の違いをそれぞれ理解する必要があって、
この天気、天候、気候を混合してしまうと、
どうしても科学の不確実性の部分ばかりを責めたくなる
のだと思います。
温暖化に関して懐疑論者にならないように
実際に世界で起こっている現象をまずは”自分事”として
見ていく姿勢はとても尊い環境活動の一つでもあり、
また人間活動に関する基礎的な知識として見聞を広める意識は
間接的ではあるけれど、
結果的に「誰かや何かを思う優しさ」に繋がって行くのでは
ないでしょうか。
さて今日はそんな世界で起きている様々な気候変動の問題点から、
遠いイラクのハバニア湖について触れてみたいと思います。
アメリカとサダム・フセイン
1980年代イラクのハバニア湖は、
富裕層を中心にとても人気の高い観光スポットでした。
そのエリアにはかつての独裁者サダム・フセインとその側近達の溜まり場にもなっていたようで、
華やかなリゾートムードとは裏腹に水面下ではイラクとアメリカのきな臭い
動きがずっと続いていたのです。
アメリカの占領下、
2006年と2007年に武装過激派グループが広大な複合施設の
人気のないホテルとバンガローに作戦室を設置し、
2008年にはアメリカ主導の軍事連合がサダムを打倒して以来、
ハバニア湖とその周辺リゾート地は荒廃してしまったのです。
かつての賑わいと経済的な潤いは今となっては何の面影もありません。
ユーフラテス川の流量減少
ハバニア湖の衰退化は軍事的な理由が根底にあるとは言え、
昨今の気候変動による影響がさらに湖の萎縮を加速化させています。
ハバニヤ湖の規模が縮小する主な原因は、
そこに水を供給するユーフラテス川の流量減少です。
降雨量の減少と川の流れに沿った大規模な堰き止めにより、
湖への水の流れに大きな影響があり、湖は徐々に縮小しています。
そして湖の周辺に暮らす住民はハバニア湖の淡水が枯渇する事で
水難民となり、
チャリティーの水タンカーが配給しきれない分は、
他の街まで水を買いに行くわけですが
それも一日わずか80リットルしか使用できない水に対して
最低2,000イラクディナール(約1.40ドル)を支払っています。
ちなみに80リットルがどのくらいの量かと言うと
5分間水を止めずに食器洗いをした時の量が
だいたい60リットルなので、
”一家で1日に使える水の量が80リットル”は相当少ない
水の量である事が想像できますよね。
日本の家庭の浴槽に70%の深さまでのお湯をたくと
なんと150〜200リットルの水の使用量になりますから、
日本人に欠かせないお風呂一杯の量よりもはるかに少ない水で
一家の命を繋いでいるわけです。
私の住むバーレーンもしかり、
日本でも水に困る事は今の所ありませんが
蛇口をひねれば水が出てくる状態が本来は贅沢で
奇跡的な事なのかもしれませんね。
この点についての気づきは節水の意識を高める良い
きっかけになるのではと思っています。
水の枯渇はエコシステムと経済の崩壊
以前のブログでもご紹介させて頂きましたが
中央アジアに流れるアラル海も同様に、
モノカルチャーや軍事的、政治的な理由で犠牲になった湖は
残念ながら世界中にいくつか存在しています。
「水」という存在があまりにも当たり前すぎて、
有限の資源である事を私達はすっかり忘れているのですが
まさかその水がいつの日か手に入らなくなるなんて…
ハバニア湖周辺の住人にとっては、
想像すらしなかった世界が今現実のものとして
目の前に繰り広げられているのです。
地球上に存在する水の総量は?
ここで一旦、地球上に存在する水の総量を
改めて見直してみたいと思います。
世界中に存在する水の97.5%は海水で、
そのままでは飲み水や生活用水として利用する事はできません。
よって海水淡水化処理の為に多くの
エネルギーとCO2が排出される事になります。
一方で人間が利用できる水資源(淡水)は、
地球上の水の総量のわずか2.5%ほど。
このスケール感を知ると、
水は非常にプレシャスな世界の宝物であると断言できます。
美容は水の無駄使い
こんな例えで申し訳ないのですが、
世界で起こっている水不足の問題や深刻化する水質汚染に
実は美容やファッション業界が大きく関わっている
事をご存知でしょうか。
特に水ありきの美容製品は抜本的な意識改革が
”見た目の美”から”内側の美”にシフトしない限り
どんなに企業が努力をしても、
環境面での改善は見込めません。
美しくなりたい思いがエコではなくエゴにならないように
私自身も美容に関しては日々気をつけています。
これは余談ですが今朝近くのオーガニックスーパーで
水を使わない固形シャンプーを見つけました。
こう言うブランドも出て来ているので、
美容業界全体もそろそろ刷新と開拓が急がれますね。
買わせたいだけのビューティーブランドには
誰もコミットしなくなる時代がじきにやってきますから。
水と命と歴史
水を世界中でシェアしなければいけない今、
幅広く色々な国の様子や事情を知りながら
「水の源泉」や「歴史」を辿ってみると
そこには人と自然が共に歩んできた文明や経済の発展が
色濃く生活の中に刻み込まれています。
たかが水ではなくて
「そこに水があるから私が在る」
そんな自然に対する感謝の思いを込めて
遠いイラクのハバニア湖に思いを馳せたいと思います。
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資料参照
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