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〜heldioガイド〜【W】和田忍先生

heldioとは?
・慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生が「英語史をお茶の間に」をモットーにVoicyで毎朝6時に配信されているラジオ

・このガイドは、heldioを楽しむための道案内となることを願い、お茶の間の住人が作成しているものです。
・アルファベットのAから順にheldioにまつわるキーパーソンやキーワードを紹介します。
\今日からあなたもheldioリスナーに/


和田忍先生(駿河台大学)

heldioのゲスト出演者は堀田先生と親交が深い先生方が多く、穏やかな雰囲気で話が進むが、取り分け和田先生との対談からはお二人が気心の知れた仲であることが窺える。実際に和田先生回は「乾杯!」の掛け声で始まる割合が高く、プレミアムリスナー限定配信チャンネルhelwaにはなんと、【英語史の輪 #41】和田忍さん(駿河台大学)というタイトルの放送回が存在するのだ。ということで、和田先生(と堀田先生の関係)を知りたかったから英語史の輪#41をご視聴あれ!と申し上げたいが、それだけでは味気ないので簡単に述べると、同年代である両先生は大学院生時代に出会って以来四半世紀以上の付き合いがあり、和田先生は堀田先生のゼミ合宿やゼミ飲み会にたびたび参加されているという。ちなみに#41にはビール缶を持った2ショット写真が掲載されているので、やはり必聴(必見)である。
仲良しのお二人という話の流れから思い出したのだが、和田先生と言えばちょっぴり台本の棒読み?にも聞こえる掛け合いが名物のように思う。
またこの記事を書くために過去回を聞き直していたところ、「英語史をお茶の間に」というフレーズが初めて登場したのは2022年12月18日であったことがわかった。それから約2年が経った現在では、堀田先生のみならずリスナーによる英語史活動=hel活が大変活発化しており、英語史は着実にお茶の間に広まっていると言って良いだろう。何とも感慨深い。

「英語史をお茶の間に」に対する和田先生の反応が聞けます↓
#577. 和田忍先生との対談 英語史とヨーロッパ

ヴァイキング

さて場が和んだところで本題に移り、ここからは和田先生のご専門に関する話をしよう。キーワードとしては古英語イングランドにおけるゲルマン文化中世ヨーロッパ文学等が挙げられるが、heldioご出演回をもとに概ね放送回の時系列順に紹介する。まずは英語史上におけるヴァイキング活動の意義・役割について解説した回から。

#179. 和田忍先生との対談:ヴァイキングの活動と英語文献作成の関係

ヴァイキングのイングランドへの侵入という出来事には馴染みがある人も多いだろうが、時期により様相が異なることはご存じだろうか。#179.では900年〜1050年に焦点を当て3段階に分けて説明している。
 
900年〜950年:ヴァイキングの活動が活発化・定住化したことにより、アングロサクソン人との同化が進む→修道院の活動はイングランド南部のウェセックスを除き停滞
950年〜980年:アングロサクソン人が土地を取り返すなどの抵抗を示し、ヴァイキングの活動は停滞→修道院の活動は活発化し、多くの文献が英語で書かれる
980年〜1050年:再びヴァイキングの活動が活発化し、アングロサクソン王朝を乗っ取る→修道院の活動は鈍るが、数は少なくなっても英語は書き続けられたため、この時代のテキストが残る

上記のとおり、ヴァイキングと修道院の活動の繁栄・衰退は表裏一体の関係となっているが、この古英語後期時代の文献が残されているから、現在研究ができるのだ。ヴァイキング活動と英語文献量の相関という視点で眺めてみると面白そうだ。

もう1回分ヴァイキングの話が続く。
#180. 和田忍先生との対談2:ヴァイキングと英語史

ヴァイキングというと巷では海賊のイメージが定着しているかもしれない。しかし実際は必ずしも常に略奪行為を行っていたわけではなく、貿易や交渉をとおして自分たちの利益を得ており、これらが実現しない時や戦った方が早い時に武力を行使していたようだ。そもそもなぜ他地域へ侵入をしたかというと、スカンジナビアには居住に適した土地が少なかったからだ。いずれにせよ、両民族の接触をとおして2言語の融合が進んだ。

アルフリッチ

皆さんは古英語時代に活躍した人物というと、誰のことを思い浮かべるだろうか。ウルフスタン!という声が聞こえてきそうだが、同じく聖職者であり古英語最大の散文作家と言われるアルフリッチ(950〜1010年頃)も覚えておきたい。

#781. 和田忍先生との対談 --- 古英語随一の散文作家 AElfric

アルフリッチはヴァイキングの勢力が強かった時代にたくさんの説教を書き記した。説教というと韻文でなく散文であるが、アルフリッチの説教はリズミカルなことが特徴だという。#781.は基礎知識の導入となっているため、今後は説教の音読や内容をご解説くださる回があると嬉しい。

Baugh and Cable読書会

heldioには毎朝6時の通常放送とは異なる「英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む」というシリーズが存在する。英語史概説書の中で堀田先生がイチ推しの以下テキストから1セクションずつ順番に取り上げ精読する、いわば読書会である。おすすめ理由としては、良質な英文で書かれていることや内面史と外面史の記述バランスが取られていることなどが挙げられている。
Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 6th ed. London: Routledge, 2013.
シリーズは1回200円の有料放送であるが、英語の読解力を高めたい、英語史についてより詳しく学んでみたいという志を持ったリスナーから支持を得て参加者が増えているようだ。

いくらおすすめ本とはいえ、どんなものかわからないとなかなか手を出しにくい…という方はこちらをどうぞ↓
#315. 和田忍先生との対談 Baugh and Cable の英語史概説書を語る

ロングセラーとなっている同書の特長や最新の第6版で追加されたセクション等について解説されている。
興味が湧いてきたけど、有料放送はちょっと…と思った方に朗報です!読書会シリーズは通常は堀田先生が一人語りされているが、ゲスト研究者をお迎えして対談形式で読み進める回も存在する。しかも裾野を広げたいとの思いから、ゲスト回はheldioで通常放送として配信&テキストも公開という大サービスだ。和田先生ももちろんゲストとして登場されている。

#893. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (24) Celtic --- 和田忍先生との実況中継(前半)
同書には英語が属するインドヨーロッパ語族の中の各語派が順番に取り上げられている箇所があり、#893.で扱っているのはその中の「ケルト語派」についてのセクション。9語派あるうち、ケルト語派はゲルマン語派(英語はここに含まれる)に続き一番最後に登場するのだが、なぜこの並び順なのか?著者の意図は?という考察にまで話が及んでいる。

#1110. 英語史の古典的名著 Baugh and Cable を読む (52) Old English Literature --- 和田忍さんとの実況中継(前半)
ゲルマンに伝わる口承文学の伝統が残りつつも、大陸から伝わったキリスト教の影響が随所に行き渡る古英語文学についてのセクション

2回ともタイトルに(前半)と入っているのは、約60分間という長尺だったにもかかわらず、1セクションの最後までたどり着かなかったからである。文章の細部にまで目を向け英文を読み解き、あらゆる角度からの解説が加わる贅沢な「超」精読が実践されているのである。
ちなみに、後半についてはプレミアムリスナー限定配信チャンネルhelwaにて配信された。より深く英語史を楽しみたい方、また英語史を広めるための活動=hel活を応援してくださる方はぜひ加入をご検討ください!

世界英語

heldioでは「本紹介対談」もよく行われている。取り分け注目を集めているのは、2023年に昭和堂から出版された『World Englishes 入門』だ。イギリスやアメリカから離れて世界中に広まった英語は、現在各地で変化を遂げている。共著の同書ではアジア、アフリカ、ヨーロッパ、カリブ海など世界のあらゆる地域で見られる多様な英語の姿が描かれているが、何とも豪華なことに執筆者のほとんどがheldioにご登場されている。

執筆者のお一人である和田先生とは、実は出版前に同書を念頭に置きながら、「世界英語」について対談されていた。
#576.和田忍先生との対談 世界英語の通時的・共時的目線

世界英語はさまざまなアプローチで研究されているが、ここでは共時的・通時的という2つの大きな見方が紹介されている。
前者は「今」の視点から、世界で使われている英語の多様性を捉える。一方、現在世界中に英語が広まっているとして、では果たしていつの時代のどのような英語が広まったのだろうかと問うのが通時的な視点である。研究により立場は異なるが、両面から見たり、さらには目的によって視点を切り替えることが大切である。

出版後の対談回はこちら。
#869. 著者と語る『World Englishes 入門』(昭和堂,2023年) --- 和田忍さんとの対談

和田先生がご担当された1章のタイトルは「イギリスとケルトの英語」である。さて、イギリスは英語が興った土地であるが、ケルトの英語とは一体何のことであろうか。この章は英語史的な視点を重視して執筆されたというが、歴史を遡ると見えてくるものとは。
ブリテン諸島内には元々ケルト人が住んでいた地域があり、それらの場所では英語ではなくケルト語が話されていた。近代以降はイングランドの圧力により次第に英語に乗り換えられたが、その英語にはベースであるケルト語の影響が残っている…
最新の英語の状況を知りたくて同書を手に取った人にとっては、このような話から始まることに面食らうかもしれない。しかし、現在だけを射程に入れていては見えてこないものがある。そう、世界英語を理解するためには英語史的な視点は役に立つだけでなく、不可欠なのだ。簡単には手に入れられないかもしれないが、鍛錬して身に付けたい。

さらに英語史ライヴ2024では、著者のお一人である今村先生も加わってトークがなされた。こちらも必聴だ。
#1254. 今村洋美先生・和田忍先生との『World Englishes 入門』対談 --- 「英語史ライヴ2024」より

どこかの回にて堀田先生から和田先生に対して、「いろいろなスタイルの放送に付き合ってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えられた際、
「いえいえ、極力どんなリクエストにも応えますよ」というような返しをされていた。これからもお二人が織り成す名コンビぶりを堪能させていただきたい。

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