本をつくることこそが”非効率”な行動なのかもしれない
本を出すことになりました。
本のテーマは「非効率」です。
そして、著者になるうえで、「非効率家」と名乗ることを決めました。
これは、僕が本をつくるうえでお手本にしているブックデザイナーの井上新八さんが、「習慣家」と名乗っていらっしゃるのをヒントにしました(井上新八さんの著書『続ける思考』については、前回の記事で詳しくご紹介しています)。
非効率家ってなんですか?
ぼくは新八さんのPodcastもよく聴いています。ある回で、新八さんがラジオ出演した際、「習慣家ってなんですか?」と聞かれたときのことを話されていました。
事前に答えは考えてなかったそうなのですが、とっさに「建築家は建築をつくる人だから、習慣家は習慣をつくる人じゃないですかね」と答えられたそうなんです。さすが新八さんです。簡潔で見事な回答です!
ぼくも本を出したら、いつかラジオ出演するかもしれません。そのときに「非効率家ってなんですか?」という質問に答えられるように準備しておきたいと思います。
そこで今日は、「非効率家とは」について考えてみます。
「効率悪いことが、結局、一番効率がいいんですね」
新八さんのマネをして、「建築家は建築をつくる人だから、非効率家は非効率をつくる人じゃないですかね」では、意味がわかりません。
まずは「非効率」というテーマについて改めて考えてみます。
「非効率」という本のテーマは、編集者の下井さんが書いた、このnoteの記事から生まれました。
この記事の感想で一番多かったのが、「効率悪いことが、結局、一番効率がいいんですね」という言葉でした。ぼく自身はけっして非効率にやっているつもりはないのに、周りからはそう見えるようです。
編集者の下井さんも、「そこが面白いんですよ!非効率な方法こそが黒田さんのPRメソッドなんですよ!」と言います。
「非効率なこと」とは一般に、よくないこと、仕事から排除されるべきこと、と捉えられているのではないでしょうか。たいていの人や会社は、いかに効率的に作業をして生産性を上げるか、ということを重視していると思います。
ただ、どうやらぼくの仕事のやり方は、その一般的なタイムパフォーマンス、コストパフォーマンスを重視した「効率のよい仕事のやり方」とは違うようなのです。
一人一人の人間とのコミュニケーションにものすごく手間ひまをかける。この非効率さが、結果として高確率で仕事の成功につながっている。それが「効率悪いことが、結局、一番効率がいいんですね」という感想を生んだのだと思います。
本をつくることこそが”非効率”な行動なのかもしれない
本の出版が決まってからぼくは、「1日1非効率PR」と題して、ぼくが本を出すことを毎日誰か一人に伝えるようにしています。
本業の書籍PRの仕事では日頃、「1日10PR」を行っています。それとはまた別に、自分の本の発売に向けて「1日1非効率PR」をしているのです(ぼくが、村上春樹さんの小説の書き方を参考にした「1日10PRメソッド」こちらのnoteに詳しくあります)。
1日1非効率PRをしていると、いろいろな方々から、さまざまな感想をいただきます。
そんななかで、意外なほど面白がってもらえたのが、「非効率」というテーマと「非効率家」という肩書きでした。
「黒田くん、非効率家って面白いねー!」「非効率、すごく良いテーマだと思うよ」「うん、わかるよ。効率より情熱ってことだよね!」など。
そのうちぼくは、面白がってくれる人たちには、ひとつの共通点があることに気づきました。
”非効率”を面白がってくれる人の多くは、編集者の方々。「伝える」人たちというより、「つくる」人たちなんです。
よく考えてみると、本をつくることこそが”非効率”な作業なんです。
ほとんどの本は、企画の段階から世に出るまで、1年以上かかります。長いと何年もかけてつくられる場合もあります。
幾度もの打ち合わせ、取材を経て、どうしたら著者のよいところを最大限に引き出せるかを考え抜いて、書き上がった原稿をさらに何度も校正していくのが編集の仕事。編集する本によってテーマも著者も異なり、細やかなコミュニケーションと、どんなにAIが進化してもなかなか省けない地道な作業の積み重ねが必要です。こんなに効率の悪い仕事はありません。
だからこそ編集者の方々は、ぼくの「非効率家」という肩書きに、多くの人が省こうとしている作業を率先してやっている者同士として共感して、「面白い!」と言ってくれたのではと想像しました。
非効率な仕事のやり方ってどんなやり方?
では、非効率な仕事って、具体的にどんなやり方でしょうか。
1日1非効率PRをしている中で、テレビのディレクターさんにメールしたときに、そのヒントとなる返信をいただきました。
以下がそのメールの一部です。
テレビを作っている方にも、「非効率」が届いている!
驚きました!!!
ぼくの本はどんな人たちに読んでもらえるだろうか? 担当編集の下井さんと、読者像について話し合っていたときのことでした。
ぼくのように「伝える」仕事をしている人だけでなく、「つくる」仕事をしている人にこそ、響く本になるのでは。そうイメージが湧いてきました。
編集部でのPR経験がぼくの人生を変えた
ぼくの書籍PRとしての経験には、一つ特殊な点があります。
それは、PRの仕事を、営業部や宣伝部ではなく、編集部に所属しながらスタートさせたことです。
出版社は、営業(販売、宣伝)と編集部は、どうしても分断されてしまうところがあり、営業と編集でコミュニケーションをとることが難しいことが多いんです。
でも、僕は偶然にも編集部に所属することができました。
編集部にいると「黒田くん、こんな本を作ろうとしてるのだけど、どう思う?」「今度、著者に会いに行くけど、一緒にこない?」など、本をつくる過程の中の編集部で、編集者の方々と会話しながら、PRをしてきました。
この経験はぼくにとって、かけがえのないものとなりました。多くの編集者の本づくりの現場に立ち会ってきた経験が、ぼくの仕事のやり方を形づくってきたのです。その結果、いまの非効率なPRスタイルに辿り着いたのだと思い至りました。
そんな話をしていると下井さんが口にしたのは、「黒田さんの本は、出版業界にとどまらず、『つくる』と『伝える』をつなぐ本になるのかもしれないですね」という言葉でした。
非効率家とは、「つくる」と「伝える」をつなぐ仕事
最後に、「非効率家」についてまとめてみたいと思います。
非効率家とは、「つくる」人が情熱を込めて生み出したものを、「伝える」人たちにしっかりと届ける役割を担う仕事です。
情熱を受け取った「伝える」人達は、その思いを最大限に活かし、あらゆる手段を尽くして広めていく。
こうして、「つくる」と「伝える」を結びつけ、両者の架け橋となるのが非効率家の役割と考えます。
「つくる」と「伝える」をつなぐ
これが今回の本のもう一つのテーマになるかもしれません。
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