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「無人島に生きる十六人」無人島で楽しく、誇り高く生きる男たち。

 無人島に流されてしまいサバイバル生活をする。小説の世界では昔からよくある設定で「ロビンソン漂流記」や「十五少年漂流記」等が有名です。僕は、こういう「サバイバルや漂流記」というジャンルの本が大好きで、よく読んでいました。

 大人になってからは、「サバイバルや漂流記」などのジャンルの本は読まなくなりましたが、最近素晴らしい作品に出会いました。それが今回紹介する「無人島に生きる十六人」です。日本の漂流記のジャンルでは、間違いなくトップ3に入る名作ですので紹介していきたいと思います。

「無人島に生きる十六人」の概要

 「無人島に生きる十六人」は1943年に発行された作品です。作者は須川邦彦という方で、彼が実際に無人島に漂着し、生還した経験をもとに書かれました。僕はこの作品を読み終わった後に、実話であることを知ったので「えっ、こんな凄い冒険が実話なの?」ってかなり驚きました。

「無人島に生きる十六人」のあらすじ

 大嵐で船が難破し、16人は無人島に流れ着いた。その島には、真水も薪もない。それでも彼らは、助け合い、日々工夫しながら、無人島を生き抜いていく。彼らは再び祖国の土を踏むことができるのだろうか…


事実をもとにしたリアルな冒険

 十六人が漂着した無人島は、人が生きていくには厳しい環境でした。彼らがたどり着いた島はサンゴ礁で形成されており、真水を得ることが難しく、木が生えないので火を起こすための薪も得られません。生きていくために必要な、水と火が無い状態で彼らは生きていくことを強いられるわけです。

 しかし、彼らは絶望することなく、工夫を重ねて、生きていくための努力をします。具体的には、食糧不足を防ぐためにウミガメを育てる。魚を確保するために網を作る。食べられる植物を探し出すなど。読んでいて感心させられる工夫がたくさん登場します。更に、手に汗握る冒険という意味では、他の島を探しに数人でボートを漕ぐシーンが印象的です。他の島を発見できなければ、仲間たちはガッカリしてしまう、しかし、遠くに行き過ぎれば自分たちの命も無事では済まない。命を懸けて冒険に出かける姿は、手に汗握るものがありました。

 十六人は、最終的に無事救出されて祖国の土を踏むことになります。しかし、冷静に考えて飲み水もまともにない無人島で全員が五体満足で助かったというのは、ほとんど奇跡です。この奇跡の根底にあるのは、彼らが立てた誓いにあると僕は考えています。

無人島で生き残るための四つの約束

 無人島で過ごす初めての朝、船長である中村は島で暮らすために四つの約束を決めます。

 一つ、島で手にはいるもので、くらして行く。
 二つ、できない相談をいわないこと。
 三つ、規律正しい生活をすること。
 四つ、愉快な生活を心がけること。

ただ生き残るだけでなく、愉快な生活を目指すというのがなんともカッコいいではありませんか。更に、この約束を強固にする考え方が十六人の間で共有されました。それは、

「十六人が、一つのかたまりとなって、いつでも強い心で、しかも愉快に、ほんとうに男らしく、毎日毎日をはずかしくなく、くらしていかなければならない。そして、りっぱな塾か、道場にいるような気もちで、生活しなければならない」

という考えでした。彼らは海の男として、日本人として、無人島にいる間も自分たちを高めるという意志をもって生きることを決意したのです。仮定の話にはなりますが、もし生き残ることだけを念頭に生きていれば彼らは、亡くなっていたかもしれません。ただ生き残ることよりも、さらに高尚な「自分を高めながら生き残る」という目標を立てたことが、無人島からの生還を果たせた理由だと僕は思っています。

 また、これだけしっかりした誓いを漂流した初日に思いついて、皆に伝えた船長の手腕も素晴らしいものがあります。読むと分かるのですが、船長のリーダーとしての働きはとても優秀で、彼の存在無くして生還はありえなかったといっても過言ではありません。

 優れたルールにリーダー、そして仲間同士の絆。それらがあれば、人間はどんな状況でも生きれるのかもしれません。僕も誇り高く、毎日を過ごしたいものです。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。


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