人間の正体は何か?100年前に記されたSFのような結論とは。
背景(イントロ)
人間の正体(本質)について記された本書は発刊当時、匿名で発表された。
匿名の作者の正体は「マーク・トウェイン」
「トム・ソーヤーの冒険」などで知られた著名な小説家である。
なぜ彼ほどの著名人が名前を伏せてこの本を書いたのか?
それはこの本の内容があまりにセンセーショナルであったから。
アメリカ文学の巨匠すら、その影響を称えたマークトウェインが匿名で発表するほどの主張とは何なのか?
「人間とは何か」の主題
この本の主題は「人間とは機械である」という主張である。
この主張は発刊されてから100年近く経過した現代においても受け入れられる人は一部であろう。そりゃそうだ。人間が機械って何を言ってるんだ?という感じである。
ただ、個人的にはこの主張が的外れだとは思わない。
なぜなら、科学が進むことによって人間の脳がどのように動作しているかは解明されつつあり、脳は電気信号を発する無数の神経細胞で作られたネットワークである。ということが明らかになりつつあるからだ。
人間を動かしている脳が電気信号で動いているということが、
すなわち「人間=機械」と主張するつもりはない。
ただ、医学やAI分野の発展を見るに、人間が非常に高度なAIを搭載した機械である可能性もあるのでは?と思ってしまう。
改めて本書「人間とは何か」について
作者:Mark Twain , 中野 好夫 (訳)
出版社 : 岩波書店 改版 (1973/6/18)
発売日 : 1973/6/18 (原著:1906年)
本書の主張の要点
人間は自己満足のために動く機械に過ぎない
人間も鉄道などと同じく、設計通り作用するものに過ぎない
人間は一種の機械であり自由意思はなく、生まれ持った気質と環境からの影響によって自動的に反応しているだけである
どんな人間もオリジナルな想像をしているわけではなく、与えられた情報をつなぎ合わせているだけに過ぎない
以上が本書の主な主張である。
一貫して何度も主張されていることは、人間は自己満足のために自動的に動く機械であるということである。
自己犠牲のような一見すれば自分が損をしてしまう、自己満足とは関係のないような行動も、自己犠牲をすることで得られる周囲からの評価が、自身の損を上回っているからに過ぎない。とマークトウェインは主張している。
個人的な感想
個人的にこの本の主張が全て正しいとは思っていない。
特に、本書の中でマーク・トウェインは環境が人間に与える影響が大きいと記している。しかし、最近の研究では、環境が人に与える影響よりも遺伝子の影響の方が大きいことが分かりつつある。
約100年前に、遺伝子(変えられない要因)について触れているのはすごい!としか言いようがないが、人に与える影響の大きさについては流石のマークトウェインも見誤っているようである。
本書は絶望の書なのか?
本書の内容は受け取り方によっては、絶望の書になりえてしまう。
なぜかというと「人が機械」であり「自由意志」がないのであれば、人生における努力など無駄であるという結論になりかねない。
特に、人生を自分の力で切り開いたという意識の強い人にとっては、本書の内容は受け入れられるものではないだろう。なんせ「お前の努力なんて何の意味もない」と言われているのとほぼ同じだからである。
ただ逆に言うと、人生に対して絶望している人にとっては、本書は希望の書なのかもしれない。
本書の主張が正しいのであれば、人生が成功するかどうかはほぼ自動的に決まる。ほぼ自動的に決まるのであれば、自ら辛い方向に進む必要はないはずである。
現代に生きる人は、様々な要因で人生に絶望し自殺を選ぶことは珍しくない。そのような考えに追い込まれるくらいなら「人生はほとんど決まっているのだから」と軽く考える方が、気は楽である。
自由に生きることや、ありのまま生きることが難しくなった時にはマークトウェインの考え方は一つの救いになるのかもしれない。
人生はなるようにしかならない。それなら楽しく生きたいものである。
原書は若干読みづらいので、漫画版もおすすめ☝
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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