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2月読書感想文:ビューティフルからビューティフルへ/日比野コレコ先生

この本はすごく衝撃的な本だった。
パンチラインがばんばん出てきて、脳みそを直接揺さぶられているようだ。

分かりづらいや、内容が入ってこなかった等の感想も見かけたが、当然だろうと思った。
それは、この本は、今を生きる高校生3人の思考回路を覗く話だからだと思う。
高校生をテーマにした本はあるが、この本はそれらとは一切違う。
クラス内でイケてる立ち位置にいる高校生を主人公にした小説で、何も考えていないように見える子が実はこんなに悩んでいてそれを解決して成長するような話はあるが、そのときの心情って、文章くさい(小説なので当たり前だが)

だけどこの本はリアルだ。
本当に感情が剥き出しになって置いてある。
それぞれの若者の、まだドクドク動いている心臓を取り出して、まな板に置いて包丁を手に観察してるような感覚。

だから掴みどころがないし分かりづらい。
だけどそれがいい。

私は教室の隅っこの方にいたので、陽キャといわれるクラスの一軍の人の気持ちがわからない。
もし私がその人をテーマにした小説を書くとしたら、作り物になるだろう。

この『ビューティフルからビューティフルへ』は、その陽キャの人達の心情が本物だ。
この本も小説なのでおかしなことをいうが、この本を読むと今までの高校生をテーマにした小説って、やっぱり小説なんだなぁという感想を抱いた。

キラキラしてる子の日常を、ストーリーで切り取られたとこを見るのではなくて、まるで自分もその場にいて見ているかのような。
そんなリアルがこの本にはあった。

物語の構成や、言葉の比喩表現は先鋭的ですごく衝撃的だったけど、ストーリーは、生きることに絶望する高校生たちの話だ。
生きること、それに悩むことは昔から今までずっと人間の普遍的な悩みなんだなぁと思った。
そしてそれは共感しやすい悩みだ。
死があるから生きることに絶望するのか、生きることに絶望しているから死は希望なのか。
もし人間に寿命がなければ、こういうテーマの物語はなくなってしまうのだろうか?
そういうことを考えていた。

私にとって、本とは「自分の中の心の扉をノックして、自分の世界に没入させてくれる」存在だ。
この本は、私の心の扉を、玄関ドアだけではなく、雨戸から風呂場の窓から、ばんばんと開けていった存在だ。
パンチラインの効いた言葉の機関銃が打ち放され、それでいて緻密さが散りばめられた文章表現。
読む人が読めば、この文章はあれのオマージュだなぁと分かるものも多々ある。

この本がなぜこれだけ、リアルなのかは最後まで読めば納得できる。

そして作者の日比野コレコ先生は、この本が出版された2022年時点で18歳だった。
これからの日比野先生の作品が楽しみだ。

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