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アルツハイマー型認知症に朗報!脳の神経細胞の破壊を防ぐ「アデュカヌマブ」登場。

私の父はアルツハイマー型認知症なのですが、大変興味深いニュースが
2021年6月8日に発表されました。

ニュースでは、アルツハイマー病の治療薬としてアメリカの製薬会社と日本のエーザイが共同で開発した新薬について、アメリカのFDA=食品医薬品局は原因と考えられる脳内の異常なタンパク質を減少させる効果を示したとして治療薬として承認したとありました。

これまでのアルツハイマー病の治療薬は、残った神経細胞を活性化させるなどして症状の悪化を数年程度、遅らせるもので、病気によって脳の神経細胞が壊れていくこと自体を止めることはできませんでした。このため病気の進行自体を抑える根本的な治療薬が待ち望まれていました。

この発表を受けて、エーザイの株価があがったそうです。

ところで、

以前の記事、コロナワクチンの予約は大変だ。

にも書いたのですが、私の父はアルツハイマー型認知症のため、家族のことは辛うじてわかる程度で、ほとんどの記憶を失い、毎日使う食器やお箸など靴に至るまで、どれが自分の物なのかさえ分からないのです。

デイサービスに出かける際に、自分の足のサイズとは明らかに違う母の靴を履いて出かけ、デイサービスの職員を驚かせたことがありました。
あれ?変だな?
という違和感さえ、感じなくなっているのです。

父の性格は、真面目で几帳面、温厚で人当たりもよいけれど、それは外面が良いだけの内弁慶で、弁慶のくせに石橋を叩いて叩いて、結局渡らないという極端に失敗を恐れる小心者でありました。

そして、自分の明らかな非を指摘されようものなら、よくもまあそんな屁理屈が思いつくねというほど、ありとあらゆる詭弁(一見正しそうで実は成立しない議論)を使って正当化するのでした。
思春期の頃の私は、こんな父が大嫌いだったのです。

そんな父が、およそ10年前から認知症になってしまいました。

認知症に加え、前立腺癌も患っているため、普段からトイレに行く回数は多いのですが、更に困ったことに、トイレに自分が今行ったことを忘れるので、トイレの水は流れっぱなし、タオルはすぐにビショビショになってしまうのです。

ある日、前立腺癌の治療で入院することになったとき、何十回何百回入院することを説明しても、自分が何故この場所(病院)にいるのか理解できませんでした。午前中はまだいいのですが、午後になるともう落ち着きません。入院先は病院であり、特別養護老人ホームやケア施設のようにエレベーターや非常階段にはロックがされませんので、隙を見つけては、何度も脱走を試みるのです。1回目は、看護師さんにすぐ見つかり、ベッドの周りにセンサーが取り付けられました。

しかし、頻繫にトイレに行く父に油断したんでしょうね。
ついに、看護師さんから父がいなくなった病院から逃げ出したようだ。と連絡が入り、家族を含む関係者が真っ青になる事態が起こりました。

慌てて家を飛び出し病院に向かっていると、その途中の道で、思いつめた様子で、真っ直ぐ前を向き、必死の形相のパジャマ姿の父を発見することができました。父は私に、
「(知っている人や家族が)誰もいないんや!!」と
目に涙をいっぱい溜めて、まるで母犬から離された子犬のように怯えているではありませんか。そこに、私の知っている父は何処にもいませんでした。

可哀想に、怖かったんやね。

記憶がないということは、こんなにも悲しくて怖いものなのかと思い知らされたのでした。父が病院に戻った後、看護師さんたちは一堂にホッとした様子でした。そして、看護師長さんが父の前にひざまづいて、
「心配したのよ。本当に無事でいてくれてよかった。」と
涙ながらに父に声をかけてくれました。

父は自分が何をしたか分からないけれど、皆に大変な迷惑をかけたんだと感じたようで、「スミマセン。」とまた涙するのでした。
その後は、父への警備が強化され、父は周りの人たちが自分の為にいてくれているのだということに気づいたようでありました。

コロナウィルスが蔓延している今も、父はマスクをする意味が分からないため、直ぐにマスクを外そうとします。認知症の患者さんは感染のリスクがあるだけでなく、誰かを感染させるリスクもあるのです。
ニュースで、コロナウィルスの患者さんを受け入れる病院がひっ迫しているとありました。その患者さんの中に認知症の方がいらっしゃる場合は、特に大変だろうとつくづく思います。

父を見ていると、認知症の症状は感情に大きく影響されることが分かりました。不安や怒りなどのネガティブな感情は病状を悪化させるようで、逆に、ポジティブな感情、例えば、父にありがとうをたくさん言った日は、父はとても穏やかに過ごすのです。

これをよく知っているのに、時に父のあの詭弁がでてきて傲慢な態度をとるときは、私はカッ―となって、言わなくてもいいようなことを言ってしまうのです。病人相手に私は何をしているのだろうと居たたまれない気持ちになるのでした。父のあの悲しそうな顔を二度と見たくないというのに。

だから、今回のニュースは大変嬉しいものでした。
脳の神経細胞の破壊を防ぐことができれば、現状維持が可能になります。
人間には不思議な力が備わっていて、例えば、盲目の人の感覚が鋭くなるように、記憶も脳だけでない気がするので、五感を使うなどして、記憶力そのものを強化できるかもしれないと思っているのです。


カレー



突然ですが。私は、金曜日をカレーの日と決めています。
これは、海上自衛隊をまねているのです。年中海にいると、曜日の感覚がなくなるため、カレーを見て今日は金曜日(週末)だと曜日を想起すための工夫なんだそうです。長年、金曜日カレーをしていますが、この効果は今のところゼロです。しかし、新薬のおかげで上手くいくかもしれない。

この新薬開発も、今のコロナ禍でもそうですが、皆の為にと、粉骨砕身、それこそ寝る間も惜しんで、いろんな局面で尽力して闘う名もなき人たちがいるのだと私は確信しています。そして、この方々がいてくれるからこそ、私は幸せでいられるのだと思っています。
せめても、その名もなき人たちに感謝の気持ちを贈りたいのです。
感謝の気持ちには、人を幸せにする力があると信じているからです。

名もなき人たちの皆さまへ
初めまして。
皆さまの勇気と数多のご苦労とご尽力のおかげで、
明日への希望が届けられました。
直接、お礼を申し上げられないことが残念でなりません。
せめても、私の気持ちを贈らせてください。 

本当にありがとうございます。
心から感謝しています。




そして、

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。

ありがとうございました。4


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