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あとで読む・第58回・ハン・ガン『菜食主義者』(きむ ふな訳 CUON、2011年)

韓国文学翻訳家の斎藤真理子さんのトークイベントを聞きに行ったのは、2年ほど前の2022年のことだった。私はトークイベントを対面で参加することはほとんどないのだが、たまに行く近所の独立系書店のトークイベントにはしばしば参加している。そのときのトークイベントも、その独立系書店で行われたのである。
斎藤真理子さんのお話はとても面白く、お話の中で次から次へと出てくる韓国文学作品は、どれも読んでみたくなるものばかりだった。ちょうどそのとき、『韓国文学の中心にあるもの』(イーストプレス、2022年)を刊行されたばかりの時だったが、紹介された作品の多くは、そこに書かれている以外のものも含まれており、私はトークイベント終了後、斎藤真理子さんが紹介していた韓国文学作品をその書店で何冊か買った。もちろん『韓国文学の中心にあるもの』にはサインをもらった。その独立系書店にとっては、私は理想の客であろう。
そのときたしか3冊買ったと記憶しているが、そのうちの2冊は、ハン・ガンさんの作品だった。『菜食主義者』と、『すべての、白いものたちの』(河出書房新社、2018年)である。とくに『すべての、白いものたちの』のほうは、斎藤真理子さんが訳しておられるので、買わないわけにはいかない。
なぜ、ハン・ガンという作家の本が気になったかというと、トークイベントの中で、齋藤さんがことさらこのハン・ガンさんの作品について熱を込めて語っていたからだと記憶する。そうでなければ、書店の本棚に並んでいる数ある韓国文学作品の中から手に取ろうとはしなかったかもしれない。
しかし毎度のことながら、積ん読の状態になってしまった。いつか読まなければと思いながら2年も経ってしまった。

今朝(2024年10月11日)、テレビのニュースを見て驚いた。今年のノーベル文学賞に韓国の作家、ハン・ガンさんが選ばれたというではないか!おいおい、ハン・ガンさんの作品なら、2冊持ってるぞ!とテレビに向かって言いそうになった。この感覚は何だろう?持っていた宝くじが高額当選した気分?…ちょっと世俗的にすぎる喩えか。
こうなると俄然読みたくなるから、現金なものである。しかしいまのこの仕事の忙しさで、作品に沈潜して没頭する余裕があるだろうか。しかも三連休ならぬ、三連勤が待っている。そのあともしばらく休みがとれない。こんな文章を書いている暇があったら、読書の時間を確保しなければならない。

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