ゆるり信州渋温泉(長野県山ノ内町)@歴史の宿 金具屋 1年前の思い出
秋の恵みを楽しむために、毎年9月になると小布施へ赴く。
そして近隣の温泉地でのんびり過ごすのがここ10年ほどの恒例となっている。
今年は高山村にある蕨温泉で過ごした。
ちょうど1年前は信州渋温泉にある金具屋へ宿泊したことを思い出した。
あんな素敵な時間を過ごしたことを記しておかないのは惜しいと思い、今回書き留めておくことにする。
渋温泉には何度も足を運んでいた。
泉質がいい。
浴衣を着ながら外湯巡りをするのいい。
温泉街ながらのんびりしているのがいい。
とにかく気に入っている。
この渋温泉の中で異彩を放つ建物がある。
それが歴史の宿金具屋だ。
昭和11年に完成した宮大工技術を集結させた木造建築のお宿。
いつかいつかと願って、ようやく宿泊することができた。
金具屋の温泉は全て源泉かけ流し。
館内の蛇口、シャワーから出るお湯もすべて温泉。贅沢すぎるなー。
金具屋館内だけでも、大浴場2湯、露天風呂、貸切風呂5湯と8湯の温泉が楽しめる。幸せすぎるなー。
また訪れるためにも今回はあえて5湯を楽しんだ。
●浪漫風呂
戦後の洋風文化の流行を取り入れたローマの噴水を模した洋風の浴堂で、昭和25年に造られたという。
お湯はこの浴槽の脇地下3mほどから湧く源泉を使用しており金具屋で最も古い源泉。
ボーリングではなく、岩盤からしみだしている温泉であることに驚かされる。
クラシカルなステンドグラスが、このお風呂のよさをさらに引き出してくれる。
とはいえ、このステンドグラスの窓になったのはなんと平成4年‼︎
新しいものもうまくとけ込める素敵な空間ってことね。
・源泉名 金具屋別荘
・泉質 ナトリウム・カルシウム
-塩化物・硫酸塩温泉
(低張性・中性・高温泉)
・泉温 49.9℃
・pH値 6.5pH
・湧出量 10.3l/分
・メタけい酸 101.8mg
・知覚的試験
白色沈澱を生じ、微白色混濁、微塩味のち微渋味、微硫化水素臭を有する
・泉質別適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿性
●龍瑞露天風呂
金具屋は5つの棟にわかれており、そのうちのひとつ神明の館の屋上に露天風呂がある。
正直…無色透明のお湯だなー熱めのお湯だなーという記憶しかない。記憶というものはそんなものだから、きちんと記すことがのちの自分への糧になるなーと改めて思わされる。
・源泉名 金具屋第1ボーリング
・泉質 含硫黄-ナトリウム・カルシウム
-塩化物・硫酸塩温泉
(低張性・弱アルカリ性・高温泉)
・泉温 97.0℃
・pH値 8.1pH
・湧出量 51.9l/分
・メタけい酸 219.6mg
・知覚的試験
ほとんど無色澄明、硫黄味・微塩味・微苦味・微硫化水素臭を有す
・泉質別適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿性
●岩窟の湯
金具屋には5つの貸切風呂がある。
予約制ではないので、入口に鍵がかかっていなければ自由にはいることができる。
まずは部屋から近い潜龍荘にある岩窟の湯へ。
山の斜面を掘り、天然の岩を積み上げてつくられたお風呂だという。
この薄暗さがいい。じっくりお湯を味わうことができる。そして小窓からもれる光が美しい。
●斎月の湯
斎月の湯は非常に情緒深いつくりになっている。
湯船は舟のかたちをしており、そこから眺めるタイル画の富士山が言いようもなく美しい。空気孔を月にみたてているのも風情がある。
斎月の湯というだけあって、心身を清めてくれる空間になっているなー。
露天風呂と5つある貸切風呂は、金具屋第1ボーリングが源泉となっている。
浪漫風呂は黄色よりのにごり湯で鉄分がふくまれていたが、金具屋第1ボーリングからは無色透明で硫化水素臭が漂う。
300メートルほど離れた駐車場に水蒸気が勢いよくでている様子が見られたら、それが金具屋第1ボーリング。深度70メートルで沸点を超えるお湯が吹き出してくることにも驚きだが、ボーリングから宿までお湯を運ぶ様子も驚かされる。
●鎌倉風呂
湯の花が舞うお風呂は斉月楼脇にある鎌倉風呂。瓢箪型の浴槽に気持ちがいい日差しが入り込んでくる。
登録文化財に指定されている木造4階建て斉月楼や大広間と同じ昭和11年に完成されたという。
・源泉名 荒井河原比良の湯と寺の湯の混合泉
・泉質 ナトリウム・カルシウム
-硫酸塩・塩化物温泉
(低張性・弱酸性・高温泉)
・泉温 56.4℃
・pH値 4.9pH
・湧出量 17.4l/分
・メタけい酸 150.5mg
・知覚的試験
ほとんど無色澄明、微苦味・微鉄味を有す
・泉質別適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿性
ここの源泉は自館源泉ではなく渋温泉の共同源泉より引かれている。
荒井河原比良の湯は、地獄谷野猿公苑近くの河原にある。200mほどの巨大な源泉の洞窟があり、21カ所のお湯の湧き口から毎分1400lのお湯が渋温泉に流れる。
温泉寺寺の湯は渋温泉の温泉寺の本堂の裏から湧くお湯。この2つが混ざると白い湯花が発生するお湯になるという。この偶然の産物がいいよねー。
宿泊者限定で「金具屋源泉見学ツアー」を毎朝行っているが、時間が合わず今回は断念。
そのかわり、毎夕行われている「金具屋文化財巡り」に参加してきた。
金具屋といえば、登録有形文化財に認定されている木造4階建ての金具屋斉月楼が有名。
この木造4階建を消防が正式に営業の許可を出しているため、現在の建築基準法において既存不適格となるところを当時のままの姿で宿泊がきる貴重な宿になっている。
大正から昭和にかけて渋温泉への鉄道網が完成すると、療養宿ではなく絢爛豪華な観光旅館を目指すためにこの建物を昭和11年に完成させた。
内の客室はそれぞれを独立した家屋に見立てられ、玄関、土間、框、次の間、本間、縁側がつくられている。
宮大工による斬新なデザインもすばらしい。
もうひとつ登録有形文化財に認定されているのが金具屋大広間。
座敷130畳、舞台30畳、廊下、床の間を入れると200畳を超える木造の大広間だ。
天井は折り上げ格天井。天井の中央部分を周りよりも一段高く中央を凹ませる仕上がりにし、そこに格子、その内側に井桁を組み入れるという変わった仕様になっているという。
この大広間で夕食朝食をいただく。
夕食。
朝食。
いい時間だった。
温泉街を散策するのも楽しいが、宿に籠ってひたすら温泉と向き合うのはなんとも言えない贅沢さだなーと思う。
どこかの城の姫君になったようなあの空間や時間もよかったしね。
おまけ。
金具屋の向かいには、渋温泉九湯めぐりの九番湯 渋大湯がある。
・源泉名 渋大湯
(大湯と渋温泉総合源泉の混合泉)
・泉質 ナトリウム・カルシウム
-硫酸塩・塩化物温泉
(低張性・弱酸性・高温泉)
・泉温 60.2℃
・pH値 5.7pH
・湧出量 54.1l/分
・メタけい酸 158.7mg
・知覚的試験
ほとんど無色澄明、鉄味・微塩味を有す
・泉質別適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
大湯には、地下にある源泉の湯気を利用した蒸し風呂もある。
蒸し風呂は湯気を体の中に取り込めるので、がっつり体全体に温泉効能を行き届かせられるような気がして好き。
もちろん湯上がりはビールを。渋大湯の隣にある渋温泉BARかどやでいただく。
楽しかったなー。
また行きたくなってきちゃった。
雪降る寒い季節もいいよね。
あー。計画立てちゃおうかな。