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『草鞋(わらじ)作りリトリート』① 強者(つわもの)たちとの出逢い

私はマラソンランナーではない。
でも今年に入って裸足ランナーでもあり『マンサンダル』開発者の坂田満(さかたみつる)さん、通称マンさんと知り合い、彼が主催する『草鞋(わらじ)作りリトリートin 富山』に参加することになった。

正直、草鞋自体には興味はなかったのだけれど、自然豊かな富山でのリトリートであることに心惹かれた私。

マンさんは講師としてお迎えする国内最高最強の草鞋ランニングの実践者であり草鞋製作者の大石賢斉(おおいしまさなり)先生のことを熱く語ってくれた。そして、先人と自然の叡智が産み出した藁(わら)文化を復興していきたいという強い思いを。その熱意に触れて、私はとにかく参加してみよう、きっと何か面白いことがあるだろうと感じていた。

私は小学生の時からマラソンが大の苦手。そんな私が最近知り合ったマンさんはご自身が開発した『マンサンダル』でフルマラソン完走、裸足駅伝、裸足で富士登山競争山頂コースを完走された強者(つわもの)だ。

日本山岳耐久レース長谷川恒雄カップ完走の坂田満さん(通称マンさん)
富士登山競争山頂コース完走のマンさん


大石先生もそう。自作の草鞋でウルトラトレイルマラソンを完走されていて、マンさんによると、大石先生はとてつもなく凄い方らしい。160kmにも及ぶとんでもない長距離の山道をシューズでなく草鞋で駆け抜けるなんて、私には全く想像も出来ない世界。大石先生という方は超人で山伏のようなきっと近寄り難くて強面の方だろうな。私は勝手にそう想像していた。

しかし、実際にお会いした先生の第一印象は違った。どこか少年のように素朴で実直、清々しい方だ。穏やかで親しみやすいお人柄で私の質問にも丁寧にやさしく答えて下さった。

私が先生につい言ってしまったこと。
「そんな辛い過酷なレースをされるとは、余程修行好きなんですね。」

先生はゆっくりと力強く答えられた。

「ワクワクして面白いからやれるんですよ。辛いだけ、苦しいだけだったらやってられないですよ。人間ってそういうもんです。」

私は思わずはっとした。言われてしまった、と。
辛い、きつい、嫌なことを只々我慢して走っているんだと実際走ったこともない私が勝手に決めつけていただけだった。自分が恥ずかしく感じた。

実際、耐久レースはそれは過酷で人間の身体と精神の極限を試すようなものだろう。日頃からの弛まないトレーニングと体調管理。鍛錬の積み重ね。自分の身体と精神のとてつも無い底力を実際に体感されているのだろう。それは私が経験したことがない領域だ。目の前に居る大石先生やマンさんがそのような次元に居るということに私はどこか羨ましくも感じた。

後から知って大変驚いたことに、大石先生はウルトラトレイルマラソンだけでなく霊峰も草鞋で登っている。しかも、空海が草鞋三千足を費やしても登頂出来なかったとも云われる伝説の剱岳を先生は草鞋で登頂されているのだ‼︎

草鞋で剱岳に登頂された大石賢斉先生
大石先生が白山に登った時の草鞋。ボロボロになった草鞋はそのまま土に還る。

大石先生はご自身の手で草鞋を製作、試行錯誤を繰り返し改良を重ねて堅牢な草鞋を編み出されている。この5年間で編んだ草鞋は500足以上にもなるそうだ。

「草鞋を編み始めてから、昔の人が何気なくしてきたことが実は心身ともに潜在能力を引き出す知恵に溢れていることを知りました。」

穏やかな口調でゆったりと語る大石先生の言葉はとても奥深い。

どうやら私はもの凄い強者たちに出逢ってしまったようだ。

まるで時空を超えて現れたような草鞋先生こと大石先生

②に続く

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