『からたちの花』(北原白秋の若い頃、柳川時代を描いた作品。1954年10月26日公開)個人の感想です
北原白秋、有名な詩人、でも、詩も人となりについても良く知らない。遠い昔、柳川に行って、北原白秋の生家に行ったことがあったが、行ったということ以外、記憶に残っていない。柳川と言えば、うなぎ、本吉屋という有名なうなぎ屋があってセイロ蒸しを食べたことがある。このセイロ蒸しというのは、この筑後地方の料理法で他にはないということらしい。とてもおいしいので訪れた際には、ぜひ、お勧めです。
さて、この映画であるが、白秋と白秋の友人の中学時代の淡い恋物語と別れ、家の没落、不登校から退学、東京への旅立ちのお話だ。白秋は、1885年生まれで、この映画の時代としては、1899年~1904年ごろのお話なので、日ロ戦争に向かっていく頃ですね。
ストーリーであるが、始まってすぐは登場人物の顔を含めて分かりづらい、なぜなら、白黒な上に出てくる男の子は坊主頭で、女の子は、日本髪で顔の区別が出来ないのだ、誰が誰だかという感じで。そして、男の子と女の子の三角関係が2つあって、誰と誰がどういう関係なのかを把握できるまでは、話の波に乗れない。
関係を整理すると、
①白秋・北原隆吉(りゅうきち)→好き→住職の娘・時子←好き←英語の先生・長部
②時子→好き→北原隆吉(お互いに好き)
③北原隆吉→好きじゃない→親が決めた許婚・雪枝(寺の住職の娘)
④北原隆吉の親友⇔清介(せいすけ)
⑤清介→好き→雪枝
⑥雪枝は最初→好き→北原隆吉、でも好まれていないことを知り、清介に乗り換える、が、しかし。。。この先は、後ほど
また、清介の死後、隆吉は。。。この先は、後ほど
ここで映画は終わる。
ストーリーとしては、隆吉が学校で数学の時間に与謝野晶子の本を読んでいるところを先生に見つかり、本を投げ捨てられてしまう。そして隆吉は、そのまま、外に出て、家に帰ってしまうのだが、これをきっかけに数学の成績が悪いこと含めて停学になってしまう。
その後、隆吉と時子、清介と雪枝の恋の物語が繰り広げられる。ここは、昭和時代に皆さんが経験した中学、高校生レベルのいろいろなやり取りがなされる。(詳細は割愛)
終盤に大きく動くのは、隆吉の家(大きな油屋と言っていたが、酒屋)が父親が不貞を働いた女に恨まれ、酒蔵に火をつけられ全焼し、没落する。それを知った住職が娘の雪枝を熊本の寺に行かせ、そこで、行った先の寺の息子と婚約する、それを知らずに清介は何度も手紙を雪枝に送るも、返事は来ない、清介は直接雪枝に会いに行く、そこで清介は返事が来ない理由を知り、柳川に戻って自殺する。
隆吉は、酒蔵の火事で没落した家の立て直しを父親に頼まれるが、断り、時子には、自分は詩人になるので幸せに出来ないと告げ、父親に無断で学校を辞めて、東京に旅立つ。
そして、この物語は終わる。
北原白秋の東京に出るまでの少年時代の映画ということで、どこまで実話か分からないが、ストーリーに深い意図はないのであろうが、北原白秋がどういう少年であったのかは感じ取れた。ひとことで言うなら、理性ではなく、感情で動く少年であり、夢追い人であったということかと思う。映画のセリフに「僕は綺麗なものが好きだ」というところがある、中学生でそんなことを言うのだから、見えているものが人と違っていたのか、また、「詩人になりたい」、「詩人は貧乏だから」と時子にいい、柳川の田舎からひとり、東京に出て行ったのであるから、お金よりも自分がやりたいこと、自分の気持ちにまっすぐに進む人だったのだろう。東京に出て早稲田大学の予科に入学し、いち早く新進詩人として注目されたようで、天才型の人間だったのかもしれない。
東京に出てからは、多くの文筆家や歌人と活動するも、人妻と恋に落ち姦通罪で告訴されたり、その女性と結婚し、離婚する。その後、詩人の女性と結婚し、また、離婚する。さらに3度目の結婚を行う。(とても少年時代の綺麗なものが好きだと言っていた少年とは思えない、が、これも感情のままに取った行動だろう)結婚、離婚を繰り返しながらも多くの作品を残したり、多くの旅もされたようだ。
このような流れをみていても感情の赴くままに生きていき、その豊かな感情から素晴らしい詩が生まれてきたのだろうと思った。人間は、そもそも、感情を持つ動物であり、法律やら、常識やら、正義やらは、個々人の感情をひとつの枠にはめるためにあるのだろうと思うのだが、本当は、穏やかに気ままに生きていきたいと思っている人達も多いのではないかと思う。そんな人たちには、白秋の生き方はうらやましいのかも知れない。一方で今の世の中では白秋のような生き方はやりにくいので、同じような天才は出てこないのかも知れない。白秋は今の時代に生まれてこなくて良かった、きっと生きづらくて明治時代のような作品は出来なかったに違いない。
私も異道見聞というペンネームなので、気ままに遠回りをしながら生きていきたい一人である。今一度、北原白秋の生家を訪れ、白秋の人生を感じ取りに行こう、そして、うなぎのセイロ蒸しを食べてこようかな。
では、また。
余談:映画の途中に「船小屋に行っとうよ」というセリフが出てくるところがあるが、実際には「船小屋」ではなく、「船小屋温泉」という場所があり、そこに行っているということで温泉場の名前である。うなぎのあとは温泉も行っとこうかな。
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