「私の少女」ペ・ドゥナ映画にハズレ無しって本当?
ペ・ドゥナのターニングポイントとなる一作
この1週間で「ペ・ドゥナ」と書いた回数が、おそらく日本一な私(笑)。今日はいよいよ特別な作品「私の少女」(2014年製作)を取り上げます。なにが特別か?と言うと、ペ・ドゥナのフィルモグラフィーの中でターニングポイントとなる一作だと勝手に思っているからです。
普通に考えたらハリウッド映画出演(「クラウドアトラス」「ジュピター」「センス8」)がターニングポイントなんでしょうけれど、海外で映画を撮っている最中に、新人の女性監督チョン・ジュリからメールでオリジナル脚本が送られてきて、読んで5分で出演を決めたそうです。きっとぺ・ドゥナは「この役は、今の私が演らなければ」と思ったはずです(たぶん)。低予算でも決めたからには良いものを作ろうと他のスタッフと一緒に努力したと思われます(メイキング見たからね)。映画の内容にも、映像の美しさにも、女優の心意気にも泣ける。もはや、当たり外れなんかではなく!
誰にでもきっとある「孤独」
都会から追われるようにやってきた閉塞的な村で、主人公ヨンナム(ペ・ドゥナ)が感じた痛み、悲しみ、そして孤独。そこで出会ったやはり孤独な少女ドヒ(キム・セロン)。二人の感情の動きが細やかに描かれています。
児童虐待、閉塞的な村社会、女性蔑視、LGBTへの偏見、外国人の不法労働、アルコール依存症など、社会問題がいくつも重なり合って出てきますが、チョン・ジュリ監督は、純粋に生きづらさのなかにある女性への共感と次のステップに踏み出していこうとする姿を描こうとしているのではないでしょうか。だから細かい感情描写を丁寧に描けているんだ、と思いました。
ヨンナムの孤独と、(これは想像ですけど)ペ・ドゥナの孤独(・・・外国でハードなチャレンジを続け世界を見たあと、韓国に戻ったときの居場所とか心の置き様、自分の理想を追求しようとするほどに感じてしまう孤独感?みたいなもの)が重なって、またそれを演じることで立ち向かおうとする姿、を感じてしまいました。この映画で、ペ・ドゥナ自身も大きなステップを超え踏み出したのではないでしょうか。ヨンナムと一緒に。
美しい二人の女優
ヨンナムとドヒ。二人で一緒に外の世界と戦うのですが、映画としてみたら全編、女優ペ・ドゥナとキム・セロンの真剣勝負。ペ・ドゥナの涙の美しさと、最後の子ども時代から大人になる一瞬の(大きな悲しみの中、大人にならざるを得ない)少女の美しさ。特に田舎の自然の中で際立って見えました。
虐待する父親役のソン・セビョク、韓国の田舎の男の人の典型のようなのか?粗野に描かれているけど、別の生きづらさを抱えている感じがとても魅力的な俳優さんでした。
イ・チャンドン監督がプロデューサー、だったのね
最近見たイ・チャンドン監督の「シークレット サンシャイン」。これも素晴らしかったのですが、女性が車に乗って逃げるようにたどり着いた場所で、新しい世界で傷つき、また次のステップに踏み出していく、という点が「私の少女」とよく似ていました。
誰でも次のステップに踏み出す時があり、今の私もそうかもしれない。渦中にいると自分では気づかないけれど、映画見て客観的に自分を見たら、抱えた問題の大きさや質は違っても、実は同じだと気づく。「私もたくましく生きよう」と思える2つの映画でした。
そしてこの映画を見てチャミスルを飲んでみよう、と初めて買ってきました。甘くておいしいけど強い!ペットボトルに詰め替えて、あんなにガバガバ飲めるもんじゃありません(笑)