温かく豊かに流れる気持ち、映画「夏時間」
緊急事態宣言が明けたので、
福岡アジアフイルムフェスティバルにて韓国映画「夏時間」を見てきました。
配信じゃない映画を見るのは久々で、外で見るというだけですごい非日常感。それだけでも嬉しい。
懐かしい、身に覚えのある気持ち
おじいちゃんの家で過ごす夏休み、それだけ(時間はそれだけ。でも家族にはたくさんの問題や悩みがある)静かなストーリー。でも登場人物の心に流れるあふれ出す豊かな感情。
子ども世代、親世代、高齢の祖父、異世代の思い、相手に対する気持ちがとても丁寧に描かれていて癒されます。
主人公の姉オクジュと弟ドンジュが自然ですごくいい。家出した母へのそれぞれの気持ち、始めはぎくしゃくしていた祖父とのコミニケーション、気持ちが許せるだけに喧嘩をしてしまう姉弟、父への反発。
どれも身に覚えのある懐かしい気持ち。別の国のお話なのに。
それぞれの気持ちを乗せた小道具の使われ方も、なぜか懐かしい。
祖父と食べる冷麺
庭の畑の真っ赤な唐辛子
部屋の中につるす蚊帳
古い足踏みミシン
祖父の古い家のとてつもない存在感
一目で「この家だな、監督のこだわりは!」と分かるのです。映画の中で登場人物の家ってとても大切ですね。
是枝裕和監督が映画「真実」についてのエッセイ「こんな雨の日に」の中で、パリで主人公カトリーヌ・ドヌーヴの住む家を探しまくる話が出てきます。
何日もかけて探すのに、なかなかぴったりの家が見つからない。やっと見つけた家主からは断られる。苦労話を思い出した。
そう言えば印象に残る映画って、登場人物の住む家もとてもしっくりくる
韓国の若手女性監督の層の厚さ
ユン・ダンビ監督は1990年生まれの女性で、この作品が長編デビュー作。
韓国の女性監督、実力もあるけど層が厚い!
「はちどり」のキム・ボラ監督、「わたしたち」のユン・ガウン監督、「82年生まれ、キム・ジヨン」のキム・ドヨン監督、それに「子猫をお願い」(2001年)のチョン・ジェウン監督もまだ若い。
どれも今年見たので、たまたま心に残っているのか?どれもそれぞれ気持ちの通った好きな映画でした。
こんな人たちが年を重ねたら、どんな映画を撮るようになるのでしょうね。ぜひ映画を製作する環境が整って、いい映画をたくさん作ってほしい。
自分が30歳位の頃を思い返すと、自分が今を生きるだけで精一杯で、子ども時代、親世代、祖父母世代の気持ちを考える余裕などひとかけらもなかった。きっと関心も優しさも無かったと思う。
今となれば、いろんな経験からくる人の気持ちがよくわかるけれど、当時の私なら、この映画を観ても気づかないことが多かったと思う。
そんなことを考えながらこの映画を見ましたが、どうしてこんな映画を撮ろうと思ったのか?違う世代の人の気持ちに敏感で細やかになれるのか?映画を作った人に直接会って聞いてみたいです。(笑)
映画を見て教えられることや省みることばかり。
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