『IT業務未経験でも学べるITベンダー交渉力アップの教科書 プロジェクトの失敗を減らしITコストを削減』第1章・無料全文公開
9月5日発売の書籍『IT業務未経験でも学べるITベンダー交渉力アップの教科書 プロジェクトの失敗を減らしITコストを削減』から、第1章「本書におけるITベンダー交渉の業務範囲」を全文公開!
1-1 本書に登場するステークホルダー(利害関係者)
本書に登場するステークホルダーは「ユーザー企業」と「ITベンダー」です。「ユーザー企業」は、読者の皆さんがいらっしゃる企業や行政、大学、病院などの組織のこと。もう1つがパッケージやITソリューション、保守サービスを提供してくれる「ITベンダー」です。
「ユーザー企業」のステークホルダーは経営とプロジェクトメンバーに限定しました。実際のプロジェクトでは、研究開発、製造部門やコーポレート系など他部門が関係することが多いと思いますが、わかりやすくするためにシンプルな設定にしています。
経営側には社長と営業担当常務が登場します。プロジェクトメンバー側にはプロジェクトオーナー(役員クラス)、プロジェクトリーダー(現場の管理職)、現場、IT部門、という前提の【図1-1-1】にしました。
「ITベンダー」のステークホルダーは、営業部と開発部。こちらもシンプルな設定にしています。
ITベンダーの「営業部」には、営業担当と上長(課長職を想定)、決済権をもっている部長を設定しました。「開発部」には、ユーザー企業から依頼された見積金額の算出を依頼する社内開発メンバーと社外の開発パートナー。案件を受注したときに開発全体を統率するプロジェクトマネージャーとその上司(上長と部長)がいる前提の図にしています。
1-2 ITベンダー交渉の業務シーン
皆さんの組織で案件が発生し、その後プロジェクトの発足からシステムが無事にリリースされ、運用保守・維持管理までをITベンダー交渉の業務範囲として整理しました。
その業務のなかでユーザー企業のIT部門の人が中心となり、ITベンダーと接する業務シーンを【図1-2-1】のように5段階・12工程に分類しています。詳しくは第2章から5章で解説していきます。
1-3 ITベンダー交渉の業務プロセス
先程の業務シーンに沿って各プロセスを簡単に説明していきます。
Ⅰ.実現したいことをITベンダーに伝える
ユーザー企業として、自分たちが実現したいことを整理してITベンダーに伝えることが最初のステップです。
①プロジェクト計画書の作成
②RFI(情報提供依頼)の作成 ※RFI:Request for informationの略
③RFP(提案依頼書)の作成 ※RFP:Request for proposalの略
以上3つの工程に分けます。
Ⅱ.ベンダー評価・選定・決定
ユーザー企業は、ITベンダーが提示してきたRFPの提案内容を以下の手順で評価します。
④-1:ベンダー評価表を作成。ベンダー評価表の作成が完了したら、プロジェクトメンバー全員でITベンダーが提示してきたRFPの提案書を読み込み採点。あらかじめ作成しておいたITベンダー評価表に点数を書き込んでいきます。
④-2:ITベンダーの提案・プレゼンテーションを聞き、ITベンダー評価表に点数を書き加えていきます。各々のプロジェクトメンバーがRFP提案書やプレゼンテーションを採点。
④-3:プロジェクトメンバー全員でITベンダーを評価・選定していきます。ITベンダーを最終決定する前に、見積金額(初期開発費用、ランニング費用)と契約書の内容を精査。ここが非常に大切な点です。
【図1-2-1】の見積交渉①の契約範囲には2パターンあります。1つ目は、⑥要件定義に限定して契約するパターンです。2つ目は、⑥要件定義と⑦基本設計から⑪検収までの開発全体を含んだ2段階で契約するパターンです。それぞれ長短があります。
第3章で詳しくお伝えしていますので、ぜひともお読みください。
Ⅲ.契約、要件定義
ユーザー企業として、ITベンダーが提示してきた見積金額(初期開発費用、ランニング費用)と契約書内容に納得し合意できた時点で⑤契約を締結します。
ITベンダーとの正式契約後、いよいよITベンダーを巻き込んだプロジェクトの最初の工程である⑥要件定義がスタートします。要件定義をもう少しわかりやすく言い換えると、今回のプロジェクトにおけるユーザー要件を業務面とシステム面の双方から整理することです。
要件定義の目的は、業務要件を整理することと、システム化要件をかためることです。業務要件を整理する前工程のプロジェクト計画書作成段階で、システム化の範囲が決まっていたとしても、具体的にどのような業務要件が必要かは決まっておりません。
ユーザー企業のあるべき業務について、ヒアリングなどを実施しながら細分化し、業務フローや業務一覧などの業務要件として整理し、システム要件を明確化します。
業務フロー作成時のポイントについて触れておきます。業務フローは変更が多く発生する成果物ですので、修正のしやすさを考慮し、なるべくシンプルに作成することがオススメです。
具体的な業務フロー作成の3つのステップを解説します。
STEP1:関係者、関連システム、作業内容を洗い出す
STEP2:STEP1をもとに縦軸と横軸を決定し、全体の枠組みをつくる
縦軸には、プロジェクトに登場する人物や部署を記載
横軸には、業務のはじめからおわりまでのプロセスを記載
STEP3:それぞれの相関性と作業の流れを明確にし、フローをつくる
業務フローが完成したら業務一覧を抽出し、整理します。プロジェクト予算やプロジェクト体制を考慮しながら、システム化の範囲を再度見定め、必要とするシステム要件、システム機能一覧を確定します。
Ⅳ.ユーザー企業主導でプロジェクトをマネジメント
要件定義で業務要件の整理とシステム化要件がかたまったら、次は⑦基本設計です。ITベンダーによっては、基本設計を外部設計と内部設計の2つに分けて設計します。
外部設計では、ユーザー企業が実際の業務で利用する画面や帳票などの表示部分を設計。内部設計では、計算ロジックやデータ処理、データベースなどの仕様を決めます。
一般的には、⑦基本設計(外部設計)→基本設計(内部設計)→ ⑧‐1詳細設計 → ⑧‐2開発・移行 → ⑧‐3ベンダーテストの順番で設計・開発・テストを進めます。基本設計(内部設計)以降の工程は、ユーザー企業が関与することは難しいため、ITベンダーに一任するケースが多いです。
しかし、ITベンダー主導で進めていくこの工程で、プロジェクトのスケジュール遅延や品質低下が発生することも事実です。ユーザー企業として、企業の大切なプロジェクト全体の品質(Q:Quality)、コスト(C:Cost)、納期(D:Delivery)を守るためにも、ユーザー企業主導でのプロジェクトマネジメントは重要となります。
第4章でユーザー企業が主体的にプロジェクトマネジメントを実施するときの注意点などをお伝えします。
Ⅴ.運用保守
システムリリース後は⑫運用保守フェーズに入ります。ユーザー企業にとっては、業務改善や顧客満足度向上施策などを具体的に着手していきます。ここからが本格的なシステム活用のスタートです。
リリース後はいろいろな局面でITベンダーとの交渉シーンが出てきます。たとえばシステムのバグ(誤り、欠陥)対応。ITベンダーの立場は検収後のシステム修正は有償対応とする一方で、ユーザー企業の立場は、ITベンダーのプログラムミスが原因の場合は無償対応が当然、という食い違いが発生します。
システム上の不具合はユーザー企業の起因で発生するケースもあります。ユーザー企業のデータ入力ミスやマスタ登録ミスによるコンピュータ処理のやり直し(ITベンダーは「再ラン」と呼びます)が必要になる場合が出てくるでしょう。
ITベンダーはユーザー企業のミスで自分たちの再処理工数が発生するので、有償対応が基本というスタンスです。一方、ユーザー企業としては、リリース直後のユーザーのシステム操作が不慣れな状況やユーザー操作マニュアルの不備、ユーザー教育不足、などの理由から無償対応を主張し、これまた平行線の議論が続きます。
ユーザー企業とITベンダーの最大の交渉事は、年度更新の運用保守費用の交渉です。具体的にはハードウェア保守費用やソフトウェア保守費用になります。
ユーザー企業としては、初年度と同額の場合はすでに予算化してあるため、比較的スムーズに契約締結する場合が多いのです。しかし、大抵のシステム(ハード、ソフトともに)はリリース後1年も経過すればトラブル発生頻度も下がり、安定運用期を迎えます。
2年目以降は1年目よりも保守契約金額の値下げ交渉余地は十分あるはずです。第5章で詳しくお伝えします。
以上が本書のなかで読者の皆さんにお伝えしたい内容です。では、さっそく第2章から業務シーンに沿って順番に説明していきます。
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第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて9月5日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『IT業務未経験でも学べるITベンダー交渉力アップの教科書 プロジェクトの失敗を減らしITコストを削減』
■ペーパーバック版(紙)
■Kindle版(電子書籍)
■書籍情報
ITの知識が少ない人でも交渉ノウハウが身につく
見積金額の精査・コストダウンの方法まで網羅
本書は、日常的にITベンダーとシステム打ち合わせや見積交渉する機会が多い方に、実務で役立つ「ITベンダーとの交渉力をアップする方法」を書いた本です。
以下のような悩みを抱えている読者も多いのではないでしょうか。
「自分はIT素人なので専門家のITベンダーとの交渉は難しい」
「ITベンダーに何を指摘すればいいのかわからない」
「ITベンダーと交渉し、納得感のある金額で契約&発注したい」
「ITベンダーとの交渉ノウハウを身につけたい」
「ITベンダーと見積金額を交渉する力を強化したい」
「自分はこのプロジェクトリーダーができるだろうか」
「このプロジェクトをぜひとも成功させたい」
このような課題感をもっている方向けに、ITの知識が少ない人でも理解しやすいように工夫をしてお伝えしています。
本書では、ITベンダーの接点や交渉シーンを5つに分類し、それぞれの業務シーンにおいて、ユーザー企業としてITベンダーに伝えなければならないこと、伝えるタイミングや伝え方などについて、実務に役立つ具体的事例を盛り込みながらお伝えしています。
ITベンダー交渉における業務範囲の網羅性と実務での有効性という点は、類書にはない特長です。
まずは、「これはすぐにできそうだ」と思ったり、「これはやってみたい」と思ったりした内容から取り組んでみてください。
この本を手に取ってくださった皆さんが少しでもITベンダーとの交渉に自信をもって臨めるようになったら、本当にうれしく思います。
【目次】
第1章 本書におけるITベンダー交渉の業務範囲
第2章 実現したいことをITベンダーに伝えよう
第3章 ベンダーを評価、選定、内定、決定する
第4章 ユーザー主導でプロジェクトをマネジメントする
第5章 運用保守費用交渉
第6章 ITベンダーとの見積金額交渉術
■著者プロフィール
三宅幸次郎
IT一筋40年 ITベンダー交渉請負人
大手SI企業に文系出身で入社。IT知識がほとんどなかった私がお客さんの信頼を勝ち取ることで同期の出世頭となり、競争の激しいIT業界で40年もの長きにわたって信用を得る。現在は、「ITベンダー交渉請負人」として、企業・自治体・大学・病院などの多くの組織を支援。「ITベンダーとの交渉力強化」というテーマの企業研修は日本でも稀で人気となり、1,000名以上が受講。研修講師やIT顧問として活動中。IT知識がない受講生からも「ITベンダーに徹底的に質問することの重要性を学んだ」「明日からITベンダーと交渉する自信がついた」など声をもらっている。また、某社のIT保守費を2.5億円削減した実績を含めて、お客様のITコストを削減してきました。ITコストの平均削減率は17%の実績を誇る。
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