WWOOF 6 chez Lafont Ⅱ
87830 les Billanges, Limoges, Haute-Viene
約3か月のWWOOF生活の締めとして、一番居心地がよくて気に入ったこの農家(chez Lafont)をもう一度訪れることにした。
8/15
夕方Ambazacに到着。Jean-matが迎えにきてくれた。
やっぱり話してるときの楽しさ、変な緊張感の無さが心地よい。貧しい語彙の中からひねり出してぽつりぽつりと話す私の言葉をじっくり聞いてくれるし、彼自身の考え方や話し方、話す話題が好き。
農家のメンバーは皆バカンスでそれぞれに出かけたりしていたようで、Lucileも今週はいない。Khalilは週末Limogesの友達に会いに行き、今夜帰ってくる。スタージュのNèleには明日から会える。
家に着いてすぐ、皆で大量のトマト、ズッキーニ、きゅうり、いんげんなどを収穫し、痛んだトマトを煮込んでソースにする。夕食は採りたてのトマトたっぷりサラダ、いんげんとニンニクを蒸したもの、チーズ、パン、赤ワイン、お友達が獲ってつくった自家製鴨のリエット。真っ赤なトマトは信じられないくらい甘く、リエットは豚肉より臭みがなくて食べやすい。フランスに来てから頻繁に食べているいんげんは、鍋で蒸しただけで甘くて柔らかくなり美味しい。前回の滞在先(ferme en paille)でお土産にいただいてきたチーズも皆で食べる。幸せとしか言いようがない時間
フランスに来て初めてここ数日は体調が悪めだったが、ようやく食欲が元に戻ってきた。この農家の野菜で一気に回復しそうだ。
食事の時間は話す時間、議論の時間。野菜の育て方から食文化、環境問題、世界情勢まで様々な話題が上る。今日聞いた小話といえば…フランスではプレゼントにナイフや包丁をあげたら、お返しに一円でも良いから硬貨を渡すのがマナーだそう。そうでないとお互いの関係が断たれるという意味になってしまうのだ。仕事の話では「地球環境に関して将来に悲観的だけど、農業は私たち自身が生きるのに一番大切な”食べること”を支える大事な仕事で、やりがいがある」とJeanmat。今の仕事の前には色々経験していて、最初はコンピュータエンジニア、次に舞台(喜劇役者)で仕事をしていたそう。Fannyと結婚したのは最近で、Khalilを養子に取ると決めたことがきっかけ。(これが後に私の卒論に繋がっていくことはここでは省略)
8/16
朝から曇りでどんよりしている。8月真っ只中なのに肌寒い。
朝ごはんはパンとブラックベリーのジャム、ハーブティー(sauge, framboisier, rose)。
9時のミーティングを終え、Neleと野菜の収穫・選別。昼食は、昨日の残りのトマトソースに今日のトマトを少し加えた貝殻型パスタ、ズッキーニのピーラー剥きサラダとトマトサラダ、パンとチーズ。Fannyのお母さんが会いにきて一晩だけ泊まっていくというので、一緒にごはんを食べた。彼女はパリ北部のアパートに住んでいて、年に何回かFannyに会いに来るそう。背が高く背筋が伸びてしゃきしゃきした人。率先してトマトソース作りを手伝ってくれた。食後にコーヒーと板チョコ(お決まり)。やっぱり山羊のチーズが食感も香りもいちばん美味しい。
午後はNeleとFannyのお母さんと3人でトマトソースの瓶詰めと煮沸消毒し、あまりにトマトがたくさんあるのでもう一回ソースを作る。今度はにんにくと玉ねぎを多めに入れて、バジルとローリエもたっぷり使う。まだまだトマトがあるので、別のトマト保存レシピも皆で調べた。
ソースを作りながら話したこと。Neleは学生時代心理学を勉強していて、修士ではエラスムス(欧州の交換留学制度)でマドリードに6ヶ月いたそう。その時の偶然の出会いをきっかけにボリビアでベルギー人とwwoofのようなことをして(既にスペイン語話せたというのがすごい)、その後ベルギーやフランスでwwoofやスタージュをしているという。今はここchez Lafontとブルターニュのもう一つの農家でスタージュ中。家族は皆ベルギーに住んでいる。
KhalilがJeanmatとFannyの養子だと知り、養子縁組や再編成家族に関心を持ったのでNeleに色々聞いてみた。彼女の家族もfamille recomposée (再編成家族)で、異父異母兄弟・姉妹がいるけど、歳も離れているし皆一緒に育ったわけではないそう。ベルギーやフランスではfamille recomposéeや養子はあまり珍しくない。chez Lafontも、今後の農家の運営方針として移民や国外追放されて居場所に困っている人を農作業する仲間として受け入れていくことを考えている。Lucileが以前移民支援の団体で働いていたことから、その伝手を活用して移民を仲介するという。
夕方のおやつに、買ってきてくれたパン(ヘーゼルナッツ・チョコチップ・オレンジピールという最高の組み合わせ)をつまみ食い
夕食はキヌア(白キヌアと赤茶色のミックス)、ズッキーニ・玉ねぎ・ピーマン炒め、パスタの残り、パンとチーズと赤ワイン。食後はハーブティと板チョコをお供に映画鑑賞。Jeannmatが喜劇の仕事をしていた時、舞台で使っていた背景道具の大きな布をスクリーンにして、パソコンとプロジェクターを繋ぐ。大きなスピーカーで音質も良く部屋も真っ暗だったので、昔ながらのこぢんまりした映画館っぽくて好きだった。
映画の題は”l’âge de glace”(氷の時代?)。CGアニメのコメディなので、字幕なしのフランス語でも理解できた。ありえなさすぎる展開とオーバーな演技、ちょっと感動要素もあって楽しかった。
8/17
Fannyは毎週水曜から金曜にかけて、自分の金属アートのお仕事のため別の街に行く。今朝も犬のzarと一緒に出発した。
午前中は、トマトソースの最後の作業を終え、新しい畑の準備をした。2週間前にいた時の畑の状態から大きく進展していてびっくり。これから耕す土の上にしっかり干草をかぶせておくことで、雑草を防いだり良い微生物を育てたり乾燥を防いだりする効果がある。
お昼はKhalilが作ってくれたレンズ豆煮込み(豆料理の中でも特に大好物)、トマトソースとズッキーニの煮込み(野菜の食感が絶妙)、サフランライス、パンとチーズ。
今日の食事中の話題はオリンピックやスポーツのこと。オリンピックのためだけに大金とエネルギーと人を使って施設作ってもそれっきり、スポーツがお金目的のゲームになりすぎている、勝ち負けの追求は無意味、他の人より優れている・早く走れることが何になるのか、芸術作品に優劣などないのと同様に、他と違うというだけ云々(すべてJeanmatの考え)、、、 Neleはテニスやバスケなどやったけど、幼いころサッカーが楽しくてやりたかったのに、女の子だからという理由だけでクラブが入会させてくれなかったと話していた。Jeanmatは、合気道は勝負がないから唯一やっているスポーツだという。
午後。注文が入っているトマトの準備、地下食料保存庫の整頓、種植え。天気予報と変わって日中雨は降らず、時々太陽も出ていた。
夕方になって大雨が降った。Jeannmatはトマトの配達へ。台所にあるおやつボックスが、ビスケット板チョコ蜂蜜チョココーティングナッツなどなど魅力的すぎて食べるのがやめられない。
残ったキヌアとトマト、ズッキーニ、辛いラディッシュと残りのドレッシングを活用してサラダを作る。トマトの配達先はかつてJeanmatがstageでお世話になっていた農家だそう。
20時半過ぎに帰ってきたJeanmatと皆で美味しい残りものごはん。サラダ、レンズ豆煮込み、(冷めて固くなり始めたけどそれはそれで美味しい)パスタ、チーズ、メロン。コンポストになるとはいえ、目の前にある食べ物を微妙な量だけ残すことができないせいで自分の家以外の場所で食事するとどうしても食べ過ぎてしまう。残してもゴミじゃなくてコンポストになって循環するから良いんだよと言われて、そういえば無理してまで食べ切らなくていいんだと思い出すけど、やっぱり一度料理したらそれをちゃんと食べ切りたいと思っちゃう。
今晩の話題は、ジェントリフィケーションや田舎と都会の暮らし人とのコミュニケーションの機会、物価など暮らしの違いについて。興味を持ったこと聞くと全部丁寧に説明して色々なことを教えてくれるので、とても楽しく勉強になる。レンズ豆ひよこ豆に少し水を加えて瓶に入れ、専用の水切り蓋をして水を変えながら4日ほど置いておくともやしの赤ちゃんが出来上がる。サラダで食べると美味しいし体積増えるので経済的。あとは野菜の多様性の話。トマトはずーっと昔からトマトだけど、その種類は人間が長い年月をかけて取捨選択してきたことで現在の多様なトマトがあるんだとか。でも数十年前に比べて植物の種類は減っている。環境のことを考えると肉を食べるのを減らした方がいいけど、完全に肉食を止めるのは違う。農業には家畜の糞が必要などなど
8/18
Lucileと再開。午前は藁敷きを続ける。天気は変わりやすいけど日差しは強くないので過ごしやすい。藁敷きがかなり重労働なのでその後のご飯が最高に美味しい。お昼はLucileによるトマトズッキーニピーマンとエメンタールのラザニア、サラダと豆もやし、パンとチーズ。
午後は藁作業を少しやって、トマトの茎結び(伸びてきた茎が実の重みで折れないように支柱に結びつける)と雑草抜き。17時から2時間ほどかけて明日のマルシェに向けて大量に収穫。トマト5種類、いんげん、にんじん、ズッキーニ、茄子、ビーツ、蕪… Jeanmatお墨付きの盆栽用ハサミの切れ味はやっぱりすごい。
夕食はNeleも一緒に4人で。ラザニア、もやしとトマトサラダ、パンとチーズ。今日の話題は生活困窮者や滞在許可証なしで生活しているなど色々な人が集まって一緒に野菜栽培や料理をする場所やコミュニティの話。
8/19
7:30から野菜をトラックに荷積にしてAmbazacのマルシェへ。気温の変化が大きいので相変わらず朝の靄がすごい。マルシェでも若干雨模様。茄子が全部立派な大きさでつやつやで美しい。
人通りは少ないけど、お友達や近所に住んでる人、バカンスで来ている人、常連さん、地元の農家支援団体で仕事している人などが立ち寄ってお話ししてくれてコミュニケーションが楽しい時間。マルシェの朝はいつもJeanmatが近くのパン屋さんでコーヒーとクロワッサンとパンオショコラを買ってくれる。隣で出店しているお友達(牛の農家さん)が売っているアーモンドのフィナンシェをつまみながら、12:30までのんびり滞在。
マルシェを片付けた後、Jeanmatの従兄弟とそのお友達が改装中のお家で皆でお昼を食べる。そこら中にお店がありすぎて意外と食べていなかったので、フランスに来て初めてのケバブ。pitaというタコスの皮にケバブ(羊肉)、トマト玉ねぎにモロッカンソース(しょっぱい)。一番シンプルなkebab というやつはサンドイッチ型のパンで割と美味しそう。肉とソースの種類が選べるシステム。フリットなしで普通のもので7€、セット系のプレートやベジタリアンだとかになると10€前後。バーガーは5-6€。従兄のおじさんはbrocant(古物商人)。直火エスプレッソとおしゃべりを楽しんで15時過ぎくらいに帰宅。Lucileが次期新作商品となるピーマンペーストを作っていた。
17時から車で20分くらいのLucileが住んでいる街で、地元の農家さんやパン屋さん、飲食店が集まるイベントがあるというので皆で向かう。途中からザーザーの大雨が降り出し、びっくりするほど寒かったけど、お祭りはとても楽しかった。農家直売のチーズや地ビール、パン、ケバブ、手作り雑貨や作品の展示、ちょっとしたコンサート(ギター弾き語りなど)。地元の人たちの団欒、久しぶりの再会などで賑やかな夜。お隣でお店を開いていたヤギ農家さんのお店でチーズ(crottin entre frais et sec2€)を買い、お店番をしながらパンとビールとつまむ。幸せとはこのことよ。チーズを買ったヤギ農家さんは、両親が始めた農家で80頭もヤギがいるそう。自分たちが売っている蕪やラディッシュやトマトをつまみ食いしたり、家から持ってきたトルティーヤの皮にスパイスとピーナッツ入りフムスを塗って食べたり。
Neleは9月頭にここを出発し、もう一つのスタージュ先のブルターニュに向かう。そこでスタージュを始める前に、自転車旅人が集まる無料の宿泊所に行くそう。バックパッカー向けの安宿よりは安全だし、色々な旅人に出会えるので楽しそうだ。Neleは何でも聞くといつも丁寧に教えてくれるし、私が何か話すときもすごく真剣に興味津々で聞いてくれるところが好き。こういう風に人の話を聞いたり自分のことを話したりするように真似したいといつも思う。誰かが作ったものやアイディアに対して心の底からすごい!素敵!ととにかく褒めるし、何でも真剣に向き合っていることが伝わってくる。
22時近くに家に着き、野菜や道具を倉庫やお店に片付けてから、静かなリビングに座って赤ワインで乾杯。Fannyの金属アート創作のお話を聞く。静止像ではなく動きが感じられる、今にも動き出しそうなものを作りたいそうで、草刈機の刃に使われて余った金属パーツ(再利用するために売られている)を使って歩き出しそうな人のオブジェの写真を見せてくれた。まず三分の一の大きさの紙模型を作り、平衡や補助をどこにつけるか、強度などを確認してから実際につくり始めるんだって。
週末はしっかりそれぞれの時間を過ごす予定。LucileもNeleもchez lafontには来ない、Khalilは毎週末Limogesで友達と過ごす。Jeannmat曰く「平日とは別の人と交流したり新しい人と出会ったりする環境も大切」。各自が自立していてそれぞれの人生があるけどちゃんと家族としての一体感や配慮や愛情がある、とても素敵な人間関係だ。KhalilとはLucileが以前働いていた移民支援団体を通して知り合ったそう。
(このあたりで卒論のテーマ養子縁組にしようかな~と思うなど)
8/20
土曜日 朝は8時に起きた。車で20分くらいの所でやっている蚤の市へ。食器洋服おもちゃ本車レコード古い電話アイロンアクセサリー飾り家具家電日曜大工道具…などありとあらゆるガラクタが集まっていて、見ているだけで面白すぎる。タンタンのポストカード1€を購入。教会ではちょうど歌のレッスンをしていて綺麗だった、ディジョンでの教会や歌の集まりの思い出が蘇って懐かしくなった。Jeanmatたちはできる限り中古で物を買うようにしているそうで、今日も照明や圧力鍋、ナイフ、箱、ボールペン、軍手など買っていた。
14時過ぎ 家に帰ってお昼ごはん。昨日Lucileたちが作ってくれたひよこ豆ズッキーニにんじんのスパイス煮込み(美味しすぎ)、米、トマトとパンとチーズ。食後はいつものコーヒーとビター板チョコ。明日行く予定のハイキングの道を教えてもらう。
夕方 トマト消費レシピとして調べてあった、タルトタタンのトマト版を作る。小麦粉と書いてある瓶が二つあって、一個目の方がどうやら米粉だったらしく、何だか白すぎ&サラサラで変だと思ったのもそのはず、もう一方の瓶が小麦粉だったみたい。固まらないし伸びは悪いしで生地が上手くいかなかったけど何とか形にした。オーブンで焼いた後冷まして軽く冷やす。トマト、にんにく、タイム、オリーブオイルの組み合わせは間違いないだろう。オーブンも完璧には動かないせいで生地はサクッと焼けないしトマトから汁が出るから無理があるけど、美味しい材料しか使ってないから当然美味しいはず。
夕飯前まで、Fannyがお友達の家からもらってきた大量の土埃まみれの保存瓶をひたすら洗う。20時すぎにやっと夕食。冷蔵庫の残り物もあわせておつまみ祭り。トマトタルトタタン、いんげん茹でたの、ピクルス、メロン、蕪、自家製鴨肉熟成ハム(塩に一晩漬けたあとハーブたっぷりで包んで2週間冷蔵庫)、赤ワインとパンとチーズ。今日はパン屋さんでパンを仕入れたのでたくさんある幸せ。
食後、スペイン映画をフランス語字幕で見る。Pedro Almodovar監督のVolver。この監督の映画が2人のお気に入りだそう。字幕読むのに必死になると映像が観られないし、何よりスペイン語もフランス語も早口なので何となくしか理解できなかったが、始めて観るジャンルの映画で面白かった。画面に常に赤がある印象的な演出。
8/21
今週末は年に一度のBillangeのお祭りで、日曜日の午前中にはハイキングの集まりがあるそうなので参加する。家から20分ほど歩いた所にBillangeの中心街(小さい家が何軒かと教会、墓地、レストランのみ)に9時集合、割ときっかりに出発。参加者は犬や家族連れ、お友達同士など15-6人。10kmの程よい山道で、お天気も良く暑すぎず気持ちが良い。森の土が湿った匂いと鳥の囀り、足音と話し声だけが聞こえる静かな時間。11時すぎに最初の集合場所に戻ってきた。そのあとアペロがあるようだったけど、連日飲みすぎ食べすぎなのでここでお暇。
お昼は玉ねぎとピーマンのオムレツ、トマトにんにくタイムのサラダ、パンとチーズと鴨肉ハム。Jeanmatは地元の小規模農家支援団体に入っているというので、そのお話をする。フランスの大規模農業組合の方針は、雑草だけでなく生態系全てを殺すような強力な農薬を使ったり、持続的でない方法で利益を最優先したやり方らしい(雑な和訳)。
15時頃、近所のお友達ダニエルさんと一緒にアトリエの展示を見にいく。ダニエルさん、スカーフとズボンと車がくすみグリーンで統一された、グレーのチリチリヘアが素敵なご婦人。以前はfamille d’accueil※(特に滞在許可証なしでフランスのいる移民や難民を受け入れて一緒に暮らす)だったそうで、Lucileが以前住んでいたお家のオーナーさん。アトリエはもう亡くなった作家さんの作品がたくさん展示してある庭で、現在はここを1人で管理している彼(作家さん)の奥さんが案内してくれた。フォークやスプーン、馬の蹄につける金具、鍵、自転車や船の部品、古道具のパーツなど様々な廃品を独特に再活用した面白い作品で溢れていて面白かった。かのシャルリエブド氏も何度も訪れたそう。
※famille d’accueil の目的 フランスに来るsans papierや移民難民たちは、行政手続きなどの事情からパリなど都会で生活することが多いが、彼らに地方で暮らす選択肢を提供すること。たぶん
帰りにカフェに寄ってひと休み。色々な事情で母国を離れフランスで生活する人たち(モーリタニア、マリ、ギニア等の出身)の受け入れや彼らの境遇のこと、養子縁組の手続きの大変さ、地域のヨガや太極拳やqi gong(気功)やアフリカンダンスの教室のこと。Khalilは未だに滞在許可証はないそうだけど、出会った時はもっと故郷を恐れていて殻に閉じこもった人柄だったそう。タクシー運転手や調理など色々な仕事をしてきたけど、もともと野菜栽培が好きで仕事のようにしていたんだって。
19時近くに家に戻り、トマトソースを瓶に詰めたあと夕食の準備。とうもろこしの粉でできたパスタのトマトソース和え、パンとチーズ、赤ワイン、デザートに羊のfromage blancとconfiture de mûre(ブラックベリージャム)。まだまだmûre が収穫できる。今日はFannyが収穫したそれでタルトを焼いてくれた。タルト生地は小麦粉(ライ麦や全粒粉や米粉混ぜたりその時による)と卵一個、バニラビーンズを入れておいた砂糖、生地が焼けたら刻んだアーモンドと溶き卵を混ぜたものをタルトに塗り、mureをぱらぱら乗せる。再びオーブンへ。
ワインとデザートとチョコレートをつまみながらいつものお話時間。食事の時に話す話題がいつもとても深くて社会学的で面白く、大学で勉強してること自分が興味あること留学を通してより考えるようになったことなどとどんぴしゃのテーマばかり。言葉の壁がなかったらもっともっと深く議論できるだろうと考えるととても歯痒い。結婚離婚再婚、子供を持つこと、家族、養子、就職や年金、少子化対策、制服、同性結婚、避妊、代理出産、pma、インターネットやメディアや広告、大量生産大量消費、気候変動、世代間の認識の違い、都心と郊外、地方の衣食住の違い長所短所、路上生活者、孤独、健康とは…
JeannmatとFannyとKhalilの、お互いを信頼し一個人として尊重し、かつそれぞれが自分の価値観や好み、社会的テーマや問題に対する意見をしっかり持っている芯の強さにいつも心打たれる。こんな素敵な家庭で育ちたいし、もし自分が家族をつくる立場になったら大切にしたいと思うことを体現している。私が思う理想的な人間関係はこんな感じかもしれない、と他では感じたことのない感想が自然と出てくる。そして皆とても働き者で真面目かつユーモアもある。
8/21
月曜日 午前は9時から12時までひたすら収穫。
今日の昼飯担当シェフはJeannmat。蕎麦の実蒸し、ズッキーニと玉ねぎ炒め。唐辛子・大蒜・生姜のペーストを味見する。山羊チーズとよく合うピリッとした辛さが美味しい。
おやつまでしっかりフルコースを堪能した後、chez lafontの看板を作る話し合い。農家の住所、作っている野菜や保存食、農家の原点や理念、wwoof. wwoof solidaire(働き手の受け入れ)などを紹介する立て看板を作る予定。
午後 大蒜を吊るして乾燥させるためにひたすら茎を結びながら、いろんな話をする。Fannyはブルターニュで生まれ、舞台美術の仕事をパリ郊外のSaint Donisでしていて、そこでJeannmatに出会った。仕事始めるまでずっと田舎で育ってきてそれが性に合っていたから、パリから離れたいと思い続けていたけど、行く先も仕事も定まっていなかった。そんな時、パリで一度彫刻の展示をしたら割とよく売れて、現在持っているもう一つの家もちょうどその時に見つけたので、よし!これからは彫刻だけやって生きていこうと決めてパリを離れたそうだ。格好良いな、言葉で聞くよりずっと大変だし勇気がいる決断だ。
15歳の時を最後に美容院に行っていないらしい。今の素敵なチリチリヘア、当時はもっと珍しくて美容師さんが面白がったり希望した長さで切ってくれなかったり、しかもお金もかかるしで嫌になったそうだ。
Zar(犬)は前の飼い主がお年寄りで病気になってもう世話ができなくなり、近所の人がパン屋さんに置いていたところをJeannmatが 見つけて、Fannyの誕生日サプライズに飼い始めたらしい。
20時頃、夕食を食べてからLa Jonchèreという町にある小さな公民館みたいな場所(salle de la fête)で行われる映画鑑賞会へ。じゃがいも、昼の残りの蕎麦の実、トマトと初物ブロッコリーのサラダ、鴨、チーズ、唐辛子ペースト。じゃがいもほくほくで美味しい。
映画の題はLa Brigade(チーム)。児童養護施設のレストランで働くシェフとその青年たちの実話をもとにしたヒューマンドラマ/コメディ。主人公のシェフが勤めていたレストランをやめ次の職場を探していて、辿り着いたのは移民たちが生活している施設の食堂。分かりやすく笑える要素があり、でも安っぽい感動話でもなく面白かった。※最近日本でも上映されたっぽい
8/22
午前は紫蘇とにんにくのむかご(花の中の小さいにんにく)、stevia(砂糖になる)の種植え、雑草抜き
お昼はトマト・玉ねぎ・マスタードのタルト(生地は蕎麦粉と小麦粉)、採れたて葉っぱ2種のサラダ、パンとチーズ。味噌の話、jardin partagé(地域の人が共同で野菜やハーブを育てる場所やコミュニティ)について話をする。Neleはこの家で2ヶ月、ブルターニュで2ヶ月の計4ヶ月スタージュをしたら、jardin partagé のような農家や団体で活動していきたいそう。自分で一から農家を始めるのはお金も必要だし働く時間も長くなるし、リスクや責任が大きいのでハードルが高い。それよりも、まずは人と交流しながら農業を通じて一緒に活動することを目指すという
午後 私が作ったトマトタルトのレシピを農家のFacebookに載せるために仏語訳したり、新しい畑に水撒き装置を準備したり、注文が入っている100kgものトマトやズッキーニの箱詰めをしたり。その後、トラックで周遊販売をしている美味しいパン屋さんにいつもの買い出しに行くというのでついていく。ワゴン車の小さな窓から穀物とパン酵母のものすごく良い香りが漂う。パンを焼いているのは、声が綺麗で優しい表情のおじさん(Ruc)。ライ麦カンパーニュ、オレンジピールとチョコレートとナッツのパン、その他穀物のパン、ドライトマトとエメンタールのパンなどどれもセンス良くて美味しそう。Fannyは牛乳のチーズやトマトのたね、胡椒など消化の負担になる食べ物がいくつかあるらしいので、カンパーニュとオレンジピールのパンを買った。
Jeannmatは21時過ぎから、街にコンサートホールを作ろうと計画している団体と市長との会議へ出かけた。施設を作ろうと計画しているお友達が、そこで食べ物を振る舞う時にchez Lafontの野菜を使いたいそうだ。ナイスアイディア
夕食はトマトにんにくブロッコリーの花のサラダ、レンズ豆とにんにくとローズマリーを煮込んだもの、辛めラディッシュ、チーズとパンと赤ワイン。
8/24
のんびり穏やかな週末が終わり、今日からまた働く一週間が始まる。よく食べよく動きよくしゃべろう
朝は収穫、10:30に会議。何を種植えしたか、新しい畑の列に何を植えるか、何を優先して収穫するか、transfo(バジルペーストなど加工品の商品化計画)、ウーファーなど受け入れのスケジュールチェック、仕事の役割分担、などなど。野菜の値段は、自分達の労働対価というより他の農家や市場価格を見て決めている。バジルペーストなどの保存食は材料費や瓶代、人件費などが関わってくるのでこまめな話し合いが必要。
Lucileと、種が出始めて販売するには成長しすぎなバジルを摘んでバジルペーストを試作する。Lucileは高校生の時、交換留学でマリにいたことがあるそう(なぜマリを選んだのかとかもっと聞きたかった)。明るめの栗色の髪の毛をお洒落なツーブロックにしていて、長いところはくりくりカールでとっても素敵な髪型。他のフランス人にも共通しているけど、みんな自分に似合う髪型やコーディネートを理解しつくしているから、本当によく似合っているし自身に溢れている。それが好き
Lucileは仕事をする時、深緑色の綿の美しいスカーフを頭に巻いているんだけど、その巻き方がすごく素敵!と言ったら巻き方を教えてくれた。おまけにもう一つ持ってるから、と綺麗な柄のスカーフまでくれた。Lucileの深緑のスカーフはバングラデシュ製の布らしい
本日のお昼ごはんシェフはNele。採りたてブロッコリーとにんじん玉ねぎじゃがいも炒め(romarin、ローズマリー、しょうがで味付け)、インディカ米を唐辛子ペーストで味変しながら一緒に食べる。美味しくて3杯は軽い
午後もペースト作りの続き。スピーカーでフランスのちょい古ポップスを流しながら作業する
バジル3kgで180g×30瓶。バジル500gに対しひまわりの種100g、オリーブオイル200ml、にんにく2株、レモン汁大3、お酢大5くらい。蚤の市で買ったミキサーでひたすら攪拌し、ph値4.5以下であることを確認したら瓶に詰め、蓋としてオリーブオイルを垂らし、stérilisateur (煮沸消毒専用のでっかい鍋)で除菌密閉する。bioマークをつけて販売するために、材料のうち市販の物は原材料表示を取っておく。
Khalilは疲れたみたいで寝たまま起きてこず、Jeanmatと2人で夕食にする。レンズ豆煮込みの残りと水多めで炊いた米を混ぜたコシャリ、トマトとブロッコリー、チーズ、赤ワイン。”平日はアルコール控えるけど、水曜日と金曜日はok”らしい。ほとんどokじゃん
Jeanmatの旅話を聞く。エジプト、セネガル、マダガスカル、シリア、中国、アメリカ、イギリスなどいろんな国で仕事や旅をしたことがあるそう。当時一緒に旅をしていた画家の女性はいつも旅先で景色や人の絵を描いていて、真似して描くようになったという。対象を自分の目でじっくり観察して絵を描くという一定の時間を経ることで、ぱっと写真だけ撮って去るのとは全く違う、人との出会いや会話の機会になる。旅先では目の前の風景や瞬間を記録に残したくて写真を撮るけど、同時にちゃんと自分の目と心に焼き付けなきゃ、と焦る自分を思い出した。写真を後で見返すのが好きだから悪いとは思わないし、むしろ写真はこれから極めたい趣味の一つではあるけど、五感で観察して自分の手を動かして記録するくらいのゆったりとした心構えも忘れないようにしたい
今日やった仕事の振り返りも。Jeanmatは複数の植物で水肥を作っていた。枝を切ったり布で漉したりする作業を、今は何の機械も使わず全て手作業でやっているけど、今後規模が大きくなったらより大変になるので効率化のために道具を検討中だという。でも常に理念にあるのは(彼はいつも自分の信念を言葉で伝えてくれる)、電化製品、化学製品をできる限り使わないこと、生物や自然を犠牲にする時は最低限に押さえること、シンプル第一、自然本来の状態をできる限り残すこと。
夕食の時、毎晩じっくり気候変動や社会問題や野菜栽培や私たちの暮らし、未来などに対する考えをじっくり話す時間がとてもよい。こういう環境で幼い時から育ったら、自分の頭でよく考え体を動かしよく学ぶ人になれそうだ
8/25
朝からバジル収穫、ペースト作りの繰り返し
お昼はバジルペーストで和えたねじりパスタ、トマトサラダ、メロンに砂糖とシナモンをかけて混ぜたデザート。
16:30からは皆で明日のマルシェに備えて収穫。雨が降る。
夕食はLucileが作って冷凍しておいてくれた野菜のケーキ(cake salé)とコシャリの残り、トマトにんにくサラダ。いつもの如く、トマトが真っ赤で甘味が濃くて美味しすぎる。採りたて人参の丸かじりも素材の甘みが美味しい。食べ終わった後、夕暮れの美しい庭をぐるっと散歩しながらりんごの木を植える壮大な計画の話をする。
8/26
土曜の朝マルシェ。先週より暖かく天気が良いからか、人通りが多い。ラディッシュ、ビーツ、葉っぱ類、 人参、トマトが良く売れる。お隣の卵屋さんのヘーゼルナッツと胡桃のマドレーヌ、いつものパン屋さんのパンオショコラとエスプレッソで朝ごはん。
田舎だからか、自分の庭でも野菜を育ててるとか、色んな種類の野菜を知っていて栽培について質問してくるお客さんが多いことに感心する。purin(Jeanmatが昨日つくっていた水肥)の話や、今年のメロンはどう?から始まる果物野菜の甘さ、天候、気候変動、ビニールハウス栽培の将来性…などいろんな話。Jeanmatは、これから紫蘇を栽培するにあたって市場の反応を把握するために、その場でちぎって味見してもらったりバジルを買ってくれた人におまけでつけたり、と抜かりない。劇団で仕事していたこともあって、人との対話、印象が重要になるマルシェは”演劇の場”だと言っていた。
家に帰ってみんなでお昼ごはん。ブロッコリー人参にんにくを茹でたものと米、色々ペーストにレンズ豆のスパイス煮込み、パンとチーズ。 午後は週末なのもあって皆それぞれのは場所へ。Lucileはお母さんの誕生日を祝ったりお友達に会ったりするためにリヨンへ。Khalilはいつものように友達がいるla jonchèreへ。NeleはLucileの家へ自転車で帰る。
私とJeanmat、Fannyは、蚤の市やLimogeへの日用品買い出し、(そろそろ出発なので)荷造りを始めたり、のんびりしたり。ワゴン車周遊の上品なパン屋さんから、”よかったら日曜の午後車で地元の街を案内してあげるけど、どう?”というお誘いを受ける。もちろん喜んで
LucileとNeleが、週末に素敵なLinotype(耳で聞いただけなので言葉が見つけられていないけど、版画の一種)のmerciカードとSalto(農家のロゴ)カードを作っていた。
※Jeanmatにきいた水肥のつくりかた:
葉っぱと枝1kg と水10ℓ 植物によってそれぞれ効能がある。Tanesie. Fusier ortie など
葉っぱを水に漬け、翌日泡が出始めたらかき混ぜる。発酵している証拠。これを1-2週間続けたら布で漉して完成。
20時頃 ヤギたちをぐるっと一周散歩させる。兄kebabと妹saba(聖書に出てくる女王の名前由来) Jeanmatがパリのサンドニ県にいた時、お友達のお姉さんから買ったヤギだそう。当時彼はベジタリアンになろうとしていて、完全に肉をやめるのではなく、工場製の肉加工品を食べない代わりに自分で山羊を飼って屠畜して食べようと思って買ったんだって。でも結局殺さず今に至る。1998年に撮られた屠殺所を記録した映画を見たのがきっかけで関心を持つようになり、気候変動のこともあって肉食を控えようと思ったそう。今もベジタリアンやヴィ―ガンではないけど、いつも話してくれる食や環境に対する彼自身の信念とやり方に基づいた生活を送っていることは確かだ。
夜、うちの野菜を使ってくれている山の上のレストランLa Lanterneへ。Jeanmatによると、お店の名前はランタンという意味の単語だけど lanterne de morts(墓地に近い、死者にお祈りする場所)から来ているそう。標高700mのところにあるそのレストランからはLimogesの街が一望でき、のびのびしたテラス席では周り一面に広がる森の静けさと綺麗な空気が最高だ。近所のひとたちが集まる憩いの場所という感じ。いろんな種類のパンやキッシュ、ピザ、サモサをその場で温めてくれて食べられるほか、地ビールやワイン、クッキーもあり、近所の農家さん自家製のパテや蜂蜜、チーズ、野菜、小麦粉、穀物の量り売りなどを売っている。お店のピザは、オープン前からもともと建物についていたという石窯で焼いている。パテのサンド、ベーコンとコンテチーズのキッシュ、ズッキーニと山羊チーズのキッシュ、野菜とスパイスの味付けが美味しいサモサ、ごまが香ばしい渦巻きパン、赤ワインで乾杯。ワインがグラスに並々入って一杯1.5€なのはさすがフランス。
帰る途中に車を降りて、降ってきそうな星空を眺める。虫の声と風に揺れる木の音しか聞こえない森の静寂が、モロッコの砂漠の夜を思い出させる。でもまた違った静けさだ
Fannyは義理のお母さん(お父さんの第二の妻)とレストランでディナー。そのお義母さんは、世代のせいもあるけど農業や環境問題には全く無関心で、bioを馬鹿にしているような感じの人らしく、中々難しいけど縁を切らない程度に年に数回会っているそう。みんな色々抱えながら生きているんだなぁ
8/27
今日もなかなか刺激的な一日だった。
2-3年前に住人が亡くなった空き家から、大型冷凍庫や納戸、カゴやナイフやタオルやその他得体のしれないものまで、ガラクタを漁っては欲しいものをいただいていく。Jeannmatの従兄弟がこういう仕事(brocant)をしているので、彼と一緒に見て回った。
その後、例のFannyのお義母さんとAmbazacで合流し天然石の博物館を観る。石の展示はいまひとつだったけど、最上階でやっていたリトアニア生まれの写真家の展示が面白かった。パリに住みパリで亡くなったらしい。リトアニア旅行を思い出して懐かしくなった
14時過ぎにやっとお昼。お義母さんがここchez Lafontに来るのは初めてらしい。米の炊いたの残りとトマトバジル紫蘇のサラダ、栗の粉で作られたsemoule(見た目は普通のクスクスより茶色く、ほんのり甘味があって美味しい)、ブロッコリー蒸したの、パンとチーズ。ブルターニュに住んでいるお義母さんはガレット(バタークッキー)を持ってきてくれた。庭で採れたてのメロンが甘くて美味しい。お義母さんはlions club internationalという人道支援団体のメンバーだそうで、その関係で日本に旅行に来たことがあるそうだ。福岡、京都、東京がとても楽しかったとお話ししてくれた。話している限り、農業や環境問題に理解がないという無神経さは特に感じなかったなぁ
17時近くにいつものパン屋さんへ。週に2回、車でいくつかの街を30分ずつ回って販売している。絵に描いたような素敵な黒いベレー帽と青いボタンダウンのシャツ、ごつめのベルトに白いズボンが決まっている。フランス語が大好きで誇りを持っているそうで、雰囲気だけでなく声や視線や喋り方、言葉遣いにとても品がある。
味見にと丸ごとくれた、ひまわりの種とレーズンと穀物がゴロゴロざくざく入ったパンがとても美味しかった。昨日ドライブに誘ってくれた後もメッセージのやりとりが続き、何と夕食にまで招待してくれた。ブルゴーニュの赤ワインをあけるとの素敵な提案まで 明日が楽しみだ。
19時過ぎ、ヤギのチーズ農家の40周年記念のイベントへ。ケバブにlanterne(山の上のレストラン)のお惣菜、野菜のプレートやクレープ、地元のワイン、その他たくさんの屋台が並ぶ。地元農家の昔なつかしい写真の展示、バンドのライブなど、お友達や近所の人たちが集まって楽しいお祭り。フライドポテトと肉の塊とコッテリしたソースのプレート、こういう屋台では定番の人気メニューらしく、どのイベントでもみんな食べている。赤ワインのボトルとヤギチーズ(buche de cendre)を買って皆でシェアした。ヤギのチーズ最高だ
すっかり暗くなるまで楽しんで、22時前に家に到着。
8/28
朝 マルシェでAmbazacに行く途中にある、りんごと洋梨の農家からいただいたりんごを食べる。信じられないくらいシャキシャキで甘くて果汁たっぷりで、あまりの美味しさに声が出た。パンに蜂蜜、ピーナッツペースト、ブラックベリージャムを塗ってエスプレッソと共に朝ごはん。
1時間ほどぐるっと散歩。やっぱり朝は一日で一番好きな時間だ
週末の街はとても静かで、人通りも車もほとんどない。あるお家の大きく空いた窓からバッハの無伴奏チェロ組曲の最後のクライマックス部分が聴こえてきて、心震えた。
14時 教会の横でパン屋さんLucと待ち合わせ。美しい山々と丘陵を眺めながら2時間ほどドライブする。5年前に今の家があるCreuseに住み始め、3年前に自分のパン屋さんを立ち上げた。週に3日パンを焼き、5つほどの街を車で回って販売している。ブルターニュで生まれ育ち、ボジョレーで複数のパン屋さんで修行、今に至る。もうすぐ7歳になる娘さんは奥さんと一緒にブルターニュに住んでいる。ご両親は葬儀屋さん。元々パティシエになろうとしていたけど、やり方や界隈が好きになれずパン作りに転向した。でも、フランスでは”伝統的な製法を守る手づくりのパン屋”はどんどん減っているそうで、それを嘆いていた。工場製の方が効率よく簡単で楽だし、世界的に見ても、伝統や古いものから離れていく流れがある。でもそれは悲しいことだと繰り返していた。
パン屋の仕事はハードで、売るのは週に3日でも、家で準備や片付けの他に家事や書類作業があって休む暇はない。パンを売る日は、午前1時にまず生地の発酵を確認し、再び寝て5時半にまた起きるそう。大変だ
レストランlanterneの隣の教会の横で一休み。vin de pailléという白ワインの一種をいただく。黄金色で蜂蜜のような甘さと香りがあって美味しい。普段はアルコールやチーズ、肉をほとんど食べず、誰か一緒にいる時に食べるのが好きだそう。その感覚ちょっと分かるな
パン屋さんの名前は”Panis Angelicus ラテン語で「天使の糧」”。同名の歌は、トマス・アクィナスが聖体の祝日のために書いた讃美歌『Sacris solemniis』の最後の2節。『天使のパン』という呼び名も一般的。(wikipedia引用) 素敵な由来だ パン屋さんはよく言葉遊びでお店の名前をつけるけど、それはあまり好きじゃなくて違う名付け方をしたかったそうだ。
人口が減っていること、農業従事者がとても少ないこと、食習慣がどんどん伝統から離れていること(フランスの人気グルメのトップ3はケバブ・ピザ・ハンバーガーという笑い話/事実もある)、などのおはなし。日本が戦後アメリカによって一斉に改革されたのがすごく悲しいことだと言っていたり、フランスは昔の古き良きイメージから全く変わってしまって将来への希望がないなど、伝統や古き良き時代をとても愛する人であることがよく伝わってくる。最近のフランス人が使う略語や外来語やスラングが嫌いで、自分は出来るだけ正しく美しいフランス語を使うようにしているそう。確かに、主語にはonではなくnous を使ったり、否定のneを略さず発音したり、putin merdeではなくmince、bahではなくeh bienなど、他のフランス人と話している時と比べて明らかにフランス語を丁寧に使っていた。ケルト人であることに誇りを持っていて、北欧の国々やケルトの文化が好きだそう。
古本が好きで、良く蚤の市で本を見るという。古いレシピ本や植物図鑑、フランスの地方の昔の写真と説明がある本などを見せてもらう。クラシック音楽や絵画も好きで、フォーレやサティやラヴェル、バッハ、ウィーンワルツが好み。外大オケのyoutubeを一緒に見た。絵は印象派・フェルメールが好き、ピカソやシャガールやゴッホは嫌い。パソコンにたくさんの音楽や絵を保存していて(特に天使や少女、田舎の美しい風景、農民の暮らしの絵が多かった)、それを見ながらいろんな話をした。
今の家は、住み始めた頃はただの納戸で何もなく、新しいパン焼き窯を設置したり工房のテーブルを整えたりする工事の過程の写真を見せてくれた。
納戸や工房や広~い庭(桜の木を植えてある)をぐるっと案内してもらったあと、甘口のスパークリングとドライ無花果、デーツ、貝殻の形のチョコレート、オリーブをつまむ。ジブリも好きで娘さんも好きだというので、しばらく盛り上がった。
夕食には蕪とじゃがいもとズッキーニのポタージュ(冬を思い出す蕪の甘み)、ブルゴーニュの赤ワイン(特別な時のために寝かせておいた)、じゃがいものピュレ、鴨肉(柔らかくておいしい)、ハーブティーとフルーツ。静かで穏やかな時間が流れる
夜中の12時近くにchez lafontまで車で送ってくれた。
8/29
最終日。朝、NeleとJeanmatと3人で野菜を収穫し、早めに切り上げてお昼を食べる。米とラタトゥイユと牛肉の煮込み。トマトのフレッシュな酸味が美味しすぎる。この農家での日々を経て、将来野菜栽培や農業従事者になろうかなと真剣に考え始めた話をしたら、始める前によく考えること・一緒にやる仲間を見つけること・お金を稼ごうとしないこと、とアドバイスをくれた。LucileとNeleが、手作りのmerciカードにメッセージを書いてくれた。ズッキーニのピクルスをお土産にもらい、Ambazacまで車で送ってもらう。
約3か月のwwoof旅の最後を、この素敵な人たちとの日々で締めくくれて本当に幸せだった。次にフランスに来るときは絶対に再会しよう。その時までに色んな経験を積んで成長して、フランス語でもっと皆と議論できるように鍛えるぞ
2022.08.29
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