WWOOF 4 chez Lafont
87340 les Billanges, Limoges, Haute-Vienne
7/25
Blablacarで前回と同じく中南部にあるLimogesという町へ。
農家で経営のサポートとWWOOferの受け入れを担当しているLucileがLimoges Bénédictin駅まで迎えに来てくれた。車の中でお互いのこれまでの人生、趣味、やりたいことについて色々話す。高校卒業後哲学を2年、舞台芸術を2年勉強し哲学で修士を出たそう。(フランス(に限らないのかもしれない)、修士や博士に進んだ人が多い印象がある。日本が少ないのか?) 最初の仕事はフランスの移民支援団体の職員で、今は私たちがこれから行く野菜栽培の農家のサポートをしている。これからは協力者という形で正式メンバーになるのだそう。移民支援団体のスタッフの他に、WWOOF Franceの運営組織で仕事をしていたこともあるらしい。薬膳、ヨガ、マクロビオティック、パーマカルチャーなどの関心も近かった。ひとつ前のwwoof先で私が抱えていた問題についても話した。
これからお世話になる農家の名前はchez Lafont (水源 la fontaine がたくさんある地域だったことに由来する地名)。家族3人+Lucile、と犬1匹、猫2匹、山羊2頭、鶏何羽がいて、大きいビニールハウス2棟とその横に広がる畑で有機野菜栽培を行っている。今年の1月に土地を買って農業を始めたばかりで、これから野菜の種類や畑を増やしていくという。作った野菜は農家で直接売るほか、毎週金曜に地元Ambazacの朝市に出店する。
メンバー構成
・Jean-Matthieu 青い丸眼鏡と髭がお洒落なおじさん (父)
・Fanny チリチリふんわりの金髪と笑顔が素敵なすらっとした人 (母)
・Khalil 息子さん モーリタニア生まれ 目が綺麗 (息子)
・Lucile 農家のasociée(協力者・共同経営者)、wwoofer受け入れ対応など
・Néle ブリュッセルからstage(独立して働く前の研修)として数ヶ月滞在しているお姉さん
・雑種犬Zar、猫の親子ColetteとGléta、ヤギのKebab(ともう一匹の名前忘れた)
荷ほどきしたら早速作業。16時から18時過ぎまで畑で藁敷きや雑草とりをする。雨が少し降る。涼しい。庭のmûre(ブラックベリー)で今日作ったという焼き菓子をおやつに食べる、美味しい。sauge(あきぎり)というハーブのシロップ(作って4日後から飲める)も自然の甘味で疲れに沁みる。
皆もの静かで穏やかな話し方。居心地が良い。生活の衛生レベルどこも微妙だが、何より一緒に生活するうえで人柄や考え方の相性が大事だとつくづく実感するから、ここを選んで良かった。
暗くなったら仕事は終わり。Lucileのお友達で今日と明日だけいるという2人と、地ビールを飲みながら日本の文字などのお話。名前をカタカナや当て字の漢字でかくとすごく面白がってくれる。漢字ひらがなカタカナの使い分けを説明するのがいつも難しい。小津安二郎を知っていて盛り上がった。
夕食は発芽玄米っぽい少し硬めの米、ズッキーニじゃがいも茄子をよく煮込んでとろとろになったもの。マレー島の胡椒や唐辛子ペースト少量をかけて。野菜の甘味も米の味付けもすごく美味しい。売り物にはならない痛んだ野菜が地下の食糧庫にたくさん保存してあって、常に食べ放題なのが農家ならではの贅沢な幸せ。デザートに食べた山羊のチーズが美味しい。当たり前にお代わり。
日本の療法としてやたらと指圧が有名なのが不思議。shiatsuって言われても最初何のことだか分からない。それにしても皆煙草吸うなぁ 毎回ちゃんと紙で巻いてる
7/26
6時過ぎに起きる。淹れたての熱々エスプレッソが最高に美味しい。外が気持ち良いのでヨガ。7月下旬だが朝晩は長袖に上着がないと寒い。
Jeanmat は去年から太極拳をやっているそう。ひざを故障していてもできるゆっくりした動きと、勝敗がない所が好きだそうで、合気道も長くやっていた。お隣さんの胡桃の木から毎年いただく胡桃、庭のプルーン、あんずをつまむ。
朝はコーヒーとミーティングで始まる。9時頃、各自がコーヒーを手に居間に集まったら、今日の予定や野菜の注文確認をする。最初の仕事は大体収穫。特にレストランから大きな注文が入っている時や、マルシェの前日は皆総出で3時間ほどかけて収穫し続ける。毎日こんなに取れるなんて信じられないくらいのズッキーニ・いんげん・トマト・唐辛子・ピーマン、茄子、ビーツ、、、全部立派な大きさて艶々で美味しそう。いんげんは高さ2m以上あるものと30cmくらいの2種類。小さいのはharicot nain(小人)可愛い名前
収穫が終わり、Jeanmatに水肥Purimの作り方や効能を教えてもらった。日本の農学者・哲学思想家の福岡正信氏(フランスに来るまで知らなかった)が説く農法の代表例らしい。福岡氏の名前はフランスで他の農家の人と話した時にも出てきたので、界隈の人には有名なのだろう。代表作の「わら一本の革命」は仏語訳もある。「引き算」の考え方が軸にあり、無駄な手を加えない、いかに「何もしないか」を追究する農法が彼の哲学。
水肥とは、植物から作る肥料で、使う植物によって防げる虫や病気が異なる。今回教えてくれたのはtanaisieという植物を使うもの。葉と茎を水と混ぜて毎日かき混ぜる。泡と独特の臭いが出てきたら発酵している証拠で、そのあと布で越して液体を肥料として使う。スプレーで植物に吹きつけることで、茄子を食べる蝶の芋虫を寄せ付けない効果がある。水肥で重要なのは、殺虫剤や通常の農薬と違って虫を殺すのではなく寄せ付けないだけ。
お昼の前にもう一仕事。売り物にできない、傷んだり熟しすぎたりした野菜を使って大量のラタトゥイユをつくる。瓶で長期保存して、野菜の種類が少ない冬に食べる。
食事の準備を皆でするのがこれまた楽しい。12時から始めて13時頃食べ始め、のんびりおしゃべりしながら1時間ぐらいかけて食べる。食後は必ずパンとチーズで〆て、コーヒーと板チョコをつまみながら午前の振り返りと午後の予定を話し、14時すぎから各々作業を始める。
今日も収穫したての野菜をふんだんに使った栄養満点料理。いんげん炒め(茹でてから鉄フライパン)、レンズ豆キヌア卵小麦粉を混ぜてハンバーグ型にして両目焼いたもの、きゅうり千切り水切ってバジルフロマージュブランと混ぜたサラダ、パン、葉っぱ、食後にチーズ。近所の農家さんが作ったという山羊の円柱チーズが絶品すぎる。
午後は保存瓶10瓶分にラタトゥイユを詰め、煮沸消毒してラベルを手書き。にんにくズッキーニ茄子をそれぞれ鍋3つ同時並行で加熱し、最後に大鍋にまとめてトマトとバジルを加えて混ぜ、ぐつぐつしたら瓶に入れてオリーブオイルで蓋をする。
ブラックベリーのジャムも作る。1.2kgに対し砂糖300g、種の食感が苦手な人のため、煮詰めた後に濾し器で濾す。残りの種じゃりじゃりで美味しい。鍋のこびりつきを落としたジュースもとる。
今晩はJeanmatの家族(両親、姉夫婦と兄夫婦)が去年のクリスマス以来に集まって皆で夕食パーティ。ご両親夫婦はパリに住んでいて、この2週間は親戚やお友達に会うためにここchez Lafontの近くに家を借りている。
皆のシェフKhalilに指示を仰ぎながら皆で夕食の準備をする。
・ピーマンまるごとオーブンで焼き、皮を剥いて一晩袋に入れて置いたものに、オリーブオイルにんにくバジルのソースをかけたマリネ
・chou-rave (大根の一種。生でも食べられるし辛くない・蕪の形)で、fromage blanc crème fraîche 山羊チーズ胡桃バジルを混ぜたものを挟んだ完全野菜バーガー(オーブンで焼く)
・ビーツとにんじんのタルト(蕎麦粉と小麦粉の生地)
・肉オーブン焼き
・サラダ
・チーズ(tomme Limousin, chèvre,etc)とカンパーニュ
・ケーキ
・庭のハーブを使ったハーブティー レモンとベルガモット
皆それぞれ地元の赤ワイン(絶品)やチーズ(絶品)やケーキを手土産に持ってきてくれて、豪華な食卓に。
お母さんは昔ロシア研究の教授をしていて、心理学やコミュニケーションや発話?の研究もしていたそう。青を基調とした統一感ある装いがお洒落で、頭と首に鮮やかな青のスカーフを巻いているのがとても似合う。真っ先に私に話しかけてくれて嬉しい。日本人にありがちな鼻にかかった発生方法?の特徴があなたには無いと言われた。
お兄さんもJeanmatと同様に丸眼鏡がよく似合っている。お兄さんは日本に仕事がきっかけの知り合いがいて、とても親切にしてくれるそうで、来年東京と北海道に行くという話を嬉しそうにしてくれた。北海道で葡萄畑をはじめたお友達の話も。
フランスで色々なチーズを色々な場面で食べてきて、自分の中でのチーズのポジションが変わった。今までは乳製品の一つでおつまみの一種という感覚だったが、今はしっかりした一つの料理で、大きく切ってじっくり単体で味わいたい。特に山羊チーズは牛より油っぽくなくてほろほろしているものが多く、しっかりした食感と香りが好み。ライ麦系の酸味があるパンと赤ワインにいちばん合う。
食事中も食後も野菜栽培や植物の話が多くて面白い。この家族は、おしゃべりをすごく楽しむけど全くうるさく無いし、下品な言動が無いから安心して楽しい時間が過ごせる。遠方から久しぶりに家族が集まる楽しさを具現化したようなひと時だった。
あと皆本当に働き者で、特にKhalilが準備から片付けまでいつも率先してやっている。最後、皆が帰って片付けが終わった後にJeanmatが今日は準備もしてくれたし一緒に家族と楽しんでくれてありがとうと声をかけてくれて、まず嬉しかったし、面と向かってこういう感謝をきちんと伝えられる人を尊敬する。
7/27
朝はいつものミーティング。カレンダーや予定表、役割分担票、栽培スケジュールなどを駆使して、デジタルも活用しながら管理しているのがすごい。
午前は4人でBRF(bois raméal fragmenté 大鋸屑)をつくる。作業トラクターの動力で大きな刃を回し、そこに伐採した木の枝を突っ込んでいく。できた屑は畑の通路に敷く。クッション性があって靴も汚れない。
お昼にLucileのお友達2人が来て一緒にごはん。ラタトゥイユとベシャメル(小麦粉・オーツミルク・バターをクリーミーにしたホワイトソース)のラザニア、サラダ、チーズ、パン、お友達の手づくりチョコバナナケーキ、コーヒー。もう一人のWWOOFerのRomanが、お母さんのレシピでズッキーニの焼き菓子を焼いてくれた(小麦・バター・たまご・牛乳・ズッキーニをミキサーで混ぜてオーブン焼き)。
午後は畑の雑草抜きと、通路にbrfを敷く作業。作業しながらこの農家chez lafontのことや皆の家族、今の仕事、好きな音楽など色々な話をするのが楽しい。
chez Lafontは今年の1月に土地を買って始めた農家で、たくさんのウーファーやスタージュ(研修生)と共にここまで多種多様な野菜を育てるまでになったそう。息子のkhalilはモーリタニアにいた小さい頃、両親が人参や穀物(詳細忘れた)を育てていたが2005年頃から雨がほとんど降らなくなり野菜など育たなくなったそう。でも昔から農業が好き。この農家に今の二人(Jeanmat とFanny)と住む前は、隣くらいにある別の街に友達と住んでいた。Jeanmatはシステムエンジニアやコメディアンなど今とは全く違う仕事をしていたが、1年間野菜栽培の学校で勉強して今の農家を始めたそう。パリで働いていた頃にFannyに出会い、二人とも大都会パリに疲れていたこともあって今の街に来て、Lucileを通してKhalilと出会い、養子として新しい家族になった。
Romanのズッキーニケーキを食べて休憩。アーモンドエッセンスの香りが杏仁にそっくりで美味しい。フランスのお菓子でこの風味がするものが良くある。
今日の夕食はJeanmat, Khalil, Romanと4人で。pois cassé (緑豆。緑色の半球の豆)の煮込み、クスクスとレーズン蒸したの、にんにく人参茄子ズッキーニトマトを油醤油で炒めたもの。素材が全部大好きな食べ物なうえ、野菜がものすごく美味しいので絶品。食後にチーズとパン、ズッキーニケーキ。
食事の時に野菜栽培の知恵を教わるのがとても面白い。野菜栽培に始まり植物の話、農業、自然環境、社会問題、環境のことなどテーマが広がっていく。もっとフランス語の語彙力があれば…と歯がゆい思いをするのはいつもこの時。
鶏の糞は牛のそれに匹敵するほど土を養分豊かにするそうで、それだけでなく鶏が地面を歩くことで引っ掻かれるのも土にとって良い。今は卵だけのための鶏が数羽いるが、将来的にはもっと増やして鶏を活用した野菜栽培を計画中なんだとか。
フランスのAB認証(Agriculture Biologique)のこと。たとえbio製品じゃなくても、地元の食材を買うこと・地元で採れたものをその場で消費することの方が大事などの話。jeanmatが見せてくれた、あらゆる野菜の種類と種植えや収穫の時期などが説明されている本(大辞典のような大きさ)が面白い。Atsuko やNoriko という白菜やmizuna daïkon, 何とかOsaka, 何とかhökkaidoというかぼちゃなど日本の名前がたくさんある。
先日詰めたラタトゥイユの瓶に手書きで日付のラベルを貼る。
7/28
午前中:野菜収穫と地下保存庫の整頓、お友達への野菜詰め合わせボックス20€の箱詰め、レストランからの注文の準備。
Lucileがお土産にとバジルと人参の葉のジェノベーゼをくれた。
お昼はキヌア・いんげん・人参・茄子・ズッキーニの煮込み、ムングダール、サラダ、デザートにチョコレート。
午後は車で川沿いまでドライブし、ハイキング。Lucileのお家にお邪魔したり、大きな木の下でカードジェスチャーゲームで遊んだり、湖で水浴びしたり。
夕食前、明日金曜日のマルシェに向けて皆総出で収穫作業。
夕食は、レンズ豆煮込み、パスタ、chou-rave の葉っぱ・トマト・エシャロットを炒めたソース、メロン(皮が割れるほど良く熟してて甘い)。野菜や豆がたくさんあるから肉食べなくても十分に満足感がある。昔より肉を食べる量が減った、食文化や体の作りや環境が変わった、健康寿命、野菜の種類、昔の野菜より今のそれは栄養素が減ってる、などの話をする。
7/29
いよいよマルシェの金曜日。と同時に私は今日でここを出発し、次の農家に行く。あまりにも毎日楽しいし皆良い人だったからもっと長くいたいが、もう次のところと連絡とっているしバスも買ってしまったので融通は利かない。これがWWOOFの難しいところだ
全ての野菜を車に詰め、8時前に出発しAmbazacに向けて出発。平日なのもあってマルシェに来る人は多くないそう。マルシェをやる曜日を変えようにも、出店者は大体別の日には別の場所でマルシェの予定があるので難しいらしい。
最初のWWOOF先(ピレネーの山羊チーズ)でマルシェを出した時もそうだけど、お店やりながらお隣のお店の人とおしゃべりしたり、近くのパン屋さんでコーヒーとパンを買ってつまんだりするのが楽しい。パンもぐもぐしながらお会計するのも普通。働き方はこのくらい緩い方がお互い気楽で良いと思う。マルシェに限らずスーパーでもこれは感じる。
マルシェでもおしゃべり。ビニールハウスや農具のいくつかだけは新しいものだが、できるだけ中古や修理を意識しているそう。現代の技術も活用しつつ、できることはやる。車も野菜かごも家の家具も中古。蚤の市で探すのも楽しそう。
マルシェは午前中いっぱいでおしまい。そのまま駅まで送ってもらい、次の農家へ。最後にくれた野菜チップスをつまみながら(薄く切って乾燥機に並べて数時間放置するだけ、味付けゼロでも止まらない美味しさ)。
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