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(連載89)DTM:ミシンのノイズをポップソングに仕上げる:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2017年

連載85から87まで、3回にわたって、モーリス・ラヴェルの「ボレロ」をサンプリングされたノイズだけで作ったというお話をさせていただきました。

今回は、その続きで、しかも、以前に自分のバンドのソーイング・シスターズについて語った連載72の続きにもなっております。


では、早速、まいりましょう。

「ボレロ」はオリジナルの楽譜をベースに作ったので、17分にもなってしまい、その延々と続く細かい作業と、ノイズで鼓膜が破れたかと思うくらいの事故もあったので、完成した時は、もうその達成感は、ひとしおでした。

なんか、ヘンテコな楽曲になりましたが、機械のノイズに命が吹き込まれて、愛おしい。全員音痴な楽団が一生懸命ベストをつくしているようで、たまに現れるチューニングのズレも、また、かわいいなー。なんて。笑

自分で作ってるんで、自画自賛ですが。笑 


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思えば、私のそれまでの人生は、

ほとんど思いつき。


あれこれといろんなものに手をだして、その時々にやりたい事をやってきたので、一つのプロジェクトをこんなに長く、時間をかけて作った事がなかった。

それで、このサンプリングで、手応えを感じた私は、今までやっていた自分のバンド、ソーイング・シスターズにもそれを反映させようと思ったのです。

思えば、もともとミシンを楽器にしたい!からはじまって、生のミシンのノイズを楽曲に差し込むアイデアや、ライブではミシンのノイズのソロ演奏(ただ、ミシンを踏むだけ。笑)なるものをやっていたのでした。

まあ、ノイズを楽曲の中にいれるのは、よくある。

また、ノイズだけの耳栓がいるような爆音バンドも、たくさんある。

しかし、バックトラックがノイズの打ち込みだけのポップというのは、あまり、聞いた事がなかった。

私は、いまや、ミシンのノイズだけで、ポップソングができるのだという謎の自信に満ち、満ち、溢れていたのであった!


これぞ、まさに

正真正銘の縫製バンド!


ノイズだが、メロディもあり、ヴォーカルもあり、踊れたりもする。

ひとりでも、温泉につかった時、シャワーの時の鼻歌で口ずさめる!
家族全員でカラオケボックスで歌える!
なんなら、職場で、オフィスで、社歌として、みんなで合唱さえできる!!

そんな

ノイズ・ポップソング!!!


しかも、そのノイズはミシンのみ!!!!

その歌詞の内容は、衣服、ファッション、ドレスメーキング、、、

こんなバンドは、自分しかやらんだろう!


そう思ったら、何か目の前がパ〜〜〜と広がったんです。


さて。具体的な作業はと申しますと。

まず、音を全部ミシン(電気ミシンです)の音で作るといっても、ボレロの時もそうでしたが、ミシン自体の音が、ガシャガシャ なので、どの辺の音を基本にするか。。。大きな問題となります。

それをどうやってチューニングするか?

正解はありません。自分の耳次第。。。。「ボレロ」の時はある程度、オーケストラがやっているのを聞いて、比べたりして、それで判断ができましたが、このシスターズの曲は、自分が作っているので、参考にするべきものがなく、すべてが自分の判断次第。(←ここ、好きです)

ガシャガシャっていうノイズの音の最初のの部分だけを切り取ってそれにフィルターをかけたりしてEQをいじったりして、加工します。

いろいろいやってるうちに、一瞬でもベース音みたいにきこえたら、よし!これをベースとしよう。。。と。苦笑 自分で決める。

なぜ?この音がベース?

それは自分がそう思ったから。(←ここ、特に好きです)

また、バイオリンとかテルミンみたいに、連続したスムーズな音の移動ができないので、その切り取ったの部分だけを、極限まで短くして、階段みたいにひとつずつ繋いでゆき3オクターブくらいつないでから、早回しするんです。そしたら、つなぎ目がわからなくなります。

パラパラ漫画とかアニメの初期段階みたいなかんじですかね。

リズムセクションも、いろいろなフィルターを組み合わせて、アタックをいじったり、音の伸ばし方を変えてみたり、いったん伸ばした音をまた切り取ってつないだりとか。

ともかくシーケンサー(この場合、楽譜だと思ってください)の上で、できる事をやってみる、ダメだったらまた次みたいな事の繰り返しでした。

これらは「ボレロ」でもある程度は、やってはいましたが、オーケストラのように20種類以上のトラックを一度に鳴らすのと、ちがって、

このシスターズのポップな楽曲はトラックが少ない分、違う意味でむずかしかった。色数のすくない絵の具で絵を描くようなものですね。

別にトラック数を増やしてもいいのですが、やってみましたが、もう、

ただ、うるさいだけ!!!笑

なんせ、音の出身はノイズの家系ですからね。しょせん。。。笑


ともかく、すべては自分次第。自分がいいと思えばいいのだ!と言いつつも、本心は、「本当に大丈夫かな?」という、不安な心持ちが常にあり、自分でもきいているうちにわからなくなってくる。苦笑

しかし、最低でもデモを作って、誰かに聞いてもらって、意見を聞こう。
まず、これが、第一段階であった。

そうこうしてるうちに、だんだん輪郭がができて、「これでいいような気がする」程度のレベルになった。(ような気がした)

そして、何曲かできた段階で、タイミングよくライブの話がきた。

やりた〜〜〜〜〜〜い!!


ところが、実はこの時点で、最初のバンド、「ザ・ソーイング・シスターズ」の立ち上げから3年くらい立っており、連載72の時のメンバーは、それぞれの道を歩みはじめてて、いなくなってしまってたのだった。涙 

3年も!なので、無理もない話です。とほほ。


初代シスターズ

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3年の間に、みんなそれぞれの道にすすんでいった。


ただ、後で参加したさおりちゃん(Saori Mitome)だけは、だけは、「まだ続けたいですぅー。」と言ってくれ、涙

それで、結局、二人だけやる事になった。


新しいユニフォームを作り、頭にピンクッションをのせた。笑

アーティスト写真は、家の庭で、自撮り。笑

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せっかくノイズポップに進化したので、名前もちょっとフランス風にして、

Les Sewing Sisters

レ ソーイング シスターズにした。


それから、ふたりで、リハを何回かやってみた。

とにかく、バックトラックさえ、しっかり作っておけば、あとはボーカルだけなので、カラオケと同じだ!!

と、

いつものぶっつけ本番姿勢!

で臨んだ、、、、、。



結果からいうと、そのライブは散々だった、、、、。


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普通のライブハウスではなく、天井の高いロフトで、音響機材もイベントのサウンド担当の人が持ち込んだものだった。
しかし、ステージで、自分らの声が聞けるモニターもなく、私もはじめてだったので、音の出し方がよくわからなくて、ボーカルとのバランスもミックスもぐちゃぐちゃになった。機材同士の相性が悪く、ハウリングしたり、原因不明のいらないノイズが発生し、全ての調子が悪かった。

終わってから、コンセプトだけはウケて、面白い!といわれたものの、親しい友人からは「音のバランスが悪かった」はっきりと言われた。

それで、今後のライブは絶対に信頼できるサウンドエンジニアが必要だと思った。特に普通のライブ会場ではない場所で音響機材をもちこまないといけないところは尚更だ。

これは大きな学びであった。

まだまだ自分は音に未熟だと気がついた。(今さら!)

アップルでこのもともとのサンプリングを教えてくれた「DJブラックラビット」のレイに

「どうやったら、いい音響かどうかわかるようになるの?」と、悩みを打ち明けたら、

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「それは、もう場数を踏むしかない。」

と言われた。

色々な機材をどうつなぐのか?だけでなく、音が空間で、どう反響するかなどはもう総合的に判断するしかないのであった。

それには教科書はない、、、、。人から教えられるものではなかった。Youtube では、学べないのだ、、、。


場数かあ、、、、この人生の後半の真っ只中の自分に、場数が増やせるかどうか?

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時間もないが、チョイスもない自分であった。


そうこうしているうちに、時間がすぎ、次のお話が舞い込んだ。

ロングビーチ美術館のキュレーターの人がプロデュースするから、美術館の近くのアートスペースで、何かやらないか?という話。

彼女はそこで、私の「汚れたシャツのファッションショー」をやるのをイメージしてるらしく、「モデルの控室もあるよ」と言ってくれた。

私はファッションショーというものを、アートパフォーマンスの一形態としてやっていて、詳しくは、こちらにありますが。
汚れたシャツを集め、襟だけ切り取ってリメイクして、ドレスなどを作っておったのです。

話がズレないうちに、元の話の続き、、、、先を急ぎましょう。

この新しく舞い込んでいきた、お話の会場です。
それはロフトで、古い煉瓦でできた素敵なスペースであった。

何をやってもいいんだったら、壁もあるので、

今まで描いた「汚れの襟」の絵をディスプレイして、

ランウェイを作って、ファッションショーもやって、

そして。。。。。。

シスターズのライブの2回目もやろうと決めた。

前回で学んだ事も生かせる!!

この時は美術館が出してくれる予算もあったので、以前から私のイベントを手伝ってくれてるサウンド・デザイナーもお願いできるし、彼に任せておけば安心だ!

受け皿はパーフェクトであった!!

次回はこのイベントお話をいたします。

L*












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