一言主(ひとことぬし)/詩と朗読 poetry night 第104夜
森羅万象のエネルギーが
私を通り抜け
言の葉として
この世に生まれ出でる
🌿詩と言葉の美しさをお届けするラジオ番組「詩と朗読 poetry night」 、
第104夜は「一言主(ひとことぬし)」。 スキマ時間に聴いていただければ幸いです。
「一言主 」
ことばの意志には逆らえない
このように書かれたがっている
こんな声で読まれたがっている
配置も
イントネーションも
あなたの言いなり
私はことばの僕(しもべ)
私の言葉は私のものではなく
私の声は私のものではない
神は人々の祈りのために
御心の宿ることばをくださったが
私には
悪事(まがごと)も善事(よごと)も
一言で言い離て、という
命題が与えられた
森羅万象のエネルギーが
私を通り抜け
言葉として
この世に生まれ出でる
ああ
私はただの管
抗えぬ力につらぬかれ
歓びに身を震わせながら
傷を負い
身をけずり
あなたに捧げよう
言挙げせぬ国で
混沌の中からすくいあげる
ただひとつ
の
ことば
を
※悪事も~…葛城山で狩りをしていた雄略天皇の前に姿を見せた一言主大神が「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神」と言った。一説には女神とも鬼神とも言われる。
※言挙げせぬ国…万葉集で、柿本人麻呂が「葦原の瑞穂の国は神ながら言挙げせぬ国」とうたっている。