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【読書録】【校正】宮部みゆき『火車』、こいしゆうか『くらべてけみして 2』、本と生成AIの話を少し

テレホンカード・年賀状・新聞・公衆電話・ワープロ・フロッピーディスク・アベック ・コレクトコール……。

平成2年生まれの自分にとって、物心はついていないが実感の伴った想像力がギリギリ届く時代の物語。同僚にお薦めされて読んだ。ミステリィは久しぶり。

宮部みゆき『火車』(新潮文庫;1998)

初めて読む宮部みゆきさんの作品、約700頁と大部だったけどすらすら読めた。「ネタバレ」に厳しい昨今だけど、今作は仮令たとえあらすじが分かっていたとしても読ませるだけの情感を湛えていて、最後の一文で思わず唸ってしまった。余韻。

あとがきには取材協力者として今も各業界で活躍している顔ぶれが並んでおり、「さすが宮部みゆき……!」という気持ち。

92刷……92刷!?

92刷もされている本に、今さらあれこれと修飾を重ねたり語り足す隙はない。名作でした。

頼むから死んでいてくれ。

p538 宮部みゆき『火車』(新潮文庫)

業界外でどれくらい読まれているのか知らないけれど、密かに楽しみにしている『くらべて、けみして』の最新刊。

こいしゆうか『くらべて、けみして 校閲部の九重さん 2』(新潮社;2025)

今のところ辞書の推し(というか職場での指定)は『明鏡』なんだけど、新潮社校閲部という業界内のエリート集団の意見も色々わかって面白い。いつか『三国サンコク』や『新明解』を使う日も来るのだろうか。


思想的な偏りが顕著なGrok3がリリースされたり、有名作家の名を騙って生成AIで製作した電子書籍が流通したり、はたまた星新一賞の最終選考にほぼ生成AIに書かせた短編が(評価はまちまちとはいえ)残ったりと、今月は対照的なニュースが飛び込んできた月だった。

根拠のない空想だけど、今の生成AIブーム、トリックスター的なハッカー(ないしクラッカー)がデータポイズニングであっさり内破させて終わるんじゃないかとふと思った。それかハルシネーションした情報を食い合って勝手に自滅するとか……。そんなことが起きても生き延びられるよう頑張ります。

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