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ユゴー著『レ・ミゼラブル 第五部 ジャン・ヴァルジャン』読書感想文
『ジ・エンド・オブ・ケイオス・フランス・レボリューション』
とかくこの世はややこしい。
全ての人間は、あらゆる時代の潮流に飲み込まれ、幾度となく絶望と希望を繰り返してきた。それでも人は生きていく。
彼らを迎える数奇な運命は、決しておとぎ話の世界に限られたものではないだろう。人間が一生を全うするということは、それだけで業が深く、罪深い。
全ての人間は、あらゆる思惑に苛まれ、幾度となく誤解を繰り返し、幾度となく真実に翻弄されてきた。歳を重ねては、手に入れ続け、そして歳を重ねるほどに、失い続ける。
それでも人は生きていく。
哀れな恋、哀れな革命、哀れな若者、哀れな老人、全ての地下、全ての曙、全ての逸脱、全ての従属、その全てが、確かに我々と共にある。
二人の結婚が、仮面を被った群衆と、それに紛れ込む物語きっての悪党、テナルディエと共に描かれている。これまで描かれ続けてきた、血生臭い革命、愚かな死を、この奇怪な"祭り"は、まるでその全てを浄化しているようだった。
悪故に、下水道から二人を助け、悪故に、二人の間を渦巻く誤解を解いたテナルディエ。それだけではなく、マリユスとコゼットの運命の出会いでさえも、かつてこのテナルディエが、悪故に、マリユスの父を助けなければ成立しなかっただろう。レ・ミゼラブルという物語は、この稀代の悪党テナルディエによって動き出し、終わりを迎えた。この数奇な運命、まるで人生の様だ。
改心することもなく悪のまま、やがて奴隷商人となったテナルディエは、恐らく死ぬまで自らの悪を貫くだろう。
死ぬまで、己の罪に翻弄され続けたジャン・ヴァルジャン、死ぬまで、罪の意識を微塵も抱くことはなかったテナルディエ。この決して相容れる事のない二人の善悪と共に、我々のこの世界は、今も回り続けている。
とかくこの世はややこしい。