見出し画像

【ザ・会社改造編3:事業モデルを描く】

本マガジンのこれまでの投稿は上記リンクに入っています。

本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しです。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。

本投稿では、第一章の前半を解説します。

・・・・・・・

◆状況探る

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。今日は第一章の前半を解説しよう。1章のタイトルは、“「謎解き」で会社の強み・弱みを見抜く”だ。

🧒‍;自社の強み、弱みですか。SWOT分析のようなものでしょうか。

👨‍🦳;最終的にはそうなるかもしれないけど、ちょっとイメージが違うかな。三枝さんがミスミの社長になってほしいと創業者の田口さんに言われて、引き受けるかどうかを決断するときにミスミの強みと弱みを理解し、面白い事業かどうかを考えているんだ。初めての会社に乗り込んでいくときは、しばらく巨大迷路の中をうろうろしている感じで判断の切り口は見えないそうだ。ちなみに、会社が用意してくれた社内資料はほとんどの場合役に立たなかったというよ。

経営者の謎解き   3  死の谷
 どんな会社であれ、新しいことをリードしようとする者には必ず、何らかのかたちの「死の谷」が待ち受けている。それは宿命であり、避けることはできない。しかし、あらかじめそれが待ち受けていることを認識し、事前に十分な準備をすれば、谷をうまく渡り切る確率を上げることができる。改革者の「高い経営リテラシー」と「熱いリーダーシップ」の組み合わせがカギである。」

🧒‍;ですよね。いくら三枝さんだといったって、最初はよそ者で社員たちは警戒しますよね。何をするのか。何を否定されるのか。

👨‍🦳;でも、三枝さんはそこを気にせずズンズンと入り込んでいくそうだ。

🧒‍;ものすごいメンタルですが、それが当たり前なのでしょうね。

👨‍🦳;ああ、そりゃそうだろうな。そして、そうやって動き回っていると、幹部や社員の何気ない言葉や冗談、ちょっとした表情の陰に問題の兆候が見える瞬間があるそうだ。

🧒‍;なるほど、でもそれは瞬間で、少し見えるだけなのでしょうね。そして、それが大きな問題なのか、小さなものなのか見逃さないことが重要なのでしょう。

👨‍🦳;ああ、その通りだ。これすごくわかるんだよな。規模は圧倒的に小さいが、私が過去海外派遣でタイにいたころ同じことを感じたよ。核心に入っていこうとすると、最初は同じ会社でも “なんだ、この日本人は?土足で入ってくるのか?” という警戒をするんだ。でも、少しづつ関係性を築いていく間に彼らの問題の構造が見え隠れしてきたのを覚えているよ。引っかかったことがあれば、そこから周囲のメンバーや外部の人に意見を聞く、問題がなかったらすっと引く。そうやって核心に近づいていくという作業を繰り返していくんだ。

◆ミスミの強さの秘訣

🧒‍;なるほど。そうして、強み弱みも確認していくのですね。

👨‍🦳;ああ、まずは強みだね。三枝さんが社長になったのは2002年なんだけども、ミスミはその8年前に東証二部に上場していて、その後一部に昇格して、4年がたっていた。ミスミのことは知っているよね?

🧒‍;はい。機械工業部品を販売するBtoB商社ですね。工場うの自動機械やロボット、金型など生産ラインに並んでいる機会のための部品を販売していると思います。

👨‍🦳;そう。三枝さんが社長になる前のミスミも業績は優れていた。営業利益率は10%前後あった。そんなミスミの強みは、カタログ商品での部品の「標準化」であったんだ。

🧒‍;標準化?

👨‍🦳;ああ、その背景にはミスミのすさまじい事業革新の歴史が隠されているんだ。ミスミのメインの注文は金型部品であったんだけども、昔は金型メーカーの設計者が新しい金型を作るときはその部品一つ一つについて詳細な「図面」を書いていた。その時の納期は2週間や三週間スして、生産ミスが起きたりすると寸法の違う金型部品が届く。要するにすべての作業を綿密に一つ一つチェックしながら進めていかなければならなかったんだ。

🧒‍;それは手間がかかる。大変だ。

👨‍🦳;こうしたやり方が当たり前だった業界に、ミスミは金型部品の「カタログ」を発刊して、そこには、ミクロン単位の寸法違いを含む膨大な部品表が載っているようにしたんだ。それこそが、金型設計者の「図面を描く」という面倒な作業を不要にする画期的なものであったんだ。

🧒‍;細かいことはわからないですが、モジュール化して、細かく分けられた既存品の組み合わせですべて対応できるようにしたということでしょうか。

👨‍🦳;ああ、簡単に言えば、そう解釈している。ミスミがこの事業を始めるまで、顧客は図面を描くたびに一つ一つが「特注品」だと思っていたそれがカタログで選べるようになったので、標準部品と同じにんなったんだ。これを「標準化」といったんだ。

🧒‍;つまり、設計者にとっての大きな手間と長納期のリスクの削減、つまり利便性を提供する仕組みを創ったということですね。

👨‍🦳;ああ、そしてさらに品質にもこだわり、その面でも信頼を勝ち取っていった。

🧒‍:すばらしい。「標準化」ですね。

◆新たな事業モデルを描く

👨‍🦳:だけども、三枝さんは一つの疑問を覚える。社員は皆「標準化」という言葉を口にするが、事業の特徴を語りだせばもっといろいろ複雑だというんだ。それをすべて一括して解説する人はいなかったという。本当にミスミの「強さの源泉」は「標準化」だけなのか疑問を持つんだ。ここで謎解き4だ。

経営者の謎解き   4  
事業モデルの認識と社内共有  自社の事業モデルが優れているのに、その「構造」が整理されていない会社は、「事業モデル」という切り口で議論することを忘れ、事業モデルを強化するための総合戦略を放置している可能性が高い。競合企業が価値を見抜いて真似をすれば、こちらの優位性はいつの間にか消えていく。


🧒‍;なるほど。構造を整理ですか。

👨‍🦳:そう。まあ社員が事業モデルを考えていないという現象は良く起きるんだ。だけどもミスミは弱者ではない、社員が語っている断片的な強みを総合化、体系化、構図化した「ミスミの事業モデルが必要になるという。そして、事業モデルの理解が足りないまま社長に就任すればうち手を間違える可能性があるから、「事業モデル」を自分で描いてみることにしたんだ。

🧒‍:自分で?でも事業モデルってどうやって書くんですかね。。なんというか、あてもないというか。

👨‍🦳:そうだな。事業モデルの説明は、簡単ではない。社内の仕組みや社外の競争要素が複雑に絡みあう中から、重要な要素を温田氏、できるだけ単純な構図にまとめなければならない。

🧒‍:サンドウィッチマン富沢がでてきました。。

👨‍🦳:は?

🧒‍:ちょっと何言ってるかわかんないっす。

👨‍🦳:よくわからんが、まあ、大変な作業だ。何日もかけて、何枚ものチャートを下記ようやく一つの「絵」に行きついたそうだ。これを、三枝さんは「自論フレームワーク」だという。そしてそのチャートを「ミスミQCTチャート」と名付けた。それは下記だ。

画像1


🧒‍:なるほど。シンプルですね。Q:品質、C:コスト、T:時間の3つというわけですか。うーむ。まさにその通りだ。

👨‍🦳;三枝さんは3つのポイントを解説している。


1, どこの企業でもこのQCTが競合より優れていれば、他に特別な要素がない限り、多くの顧客がその商品を選ぶ。

2, ミスミから見た、顧客側を「フロントエンド」と名付けた。上述のミスミが起こしていた流通イノベーションは、起爆剤であった。そして、QCTの武器が作動した。
Q:カタログに記載された情報は、営業マンを介することなく。顧客に届く情報の質が上がった。
C:営業マンを持たなくてよくなったことにより、コスト削減ができた。
T:2.3週間かかっていた納期をミスミは標準3日目出荷に縮めた。

3, ミスミの背後にいる協力メーカー側をバックエンドと名付けた。商品の「標準化」が「起爆剤」になってバックエンド側でもQCTの革新が進んだ。
Q:協力メーカーの生産数量は飛躍的に増え、「標準化」を通じて生産技術の改善が進み品質が向上した。
C:生産数量増加による、「規模の利益」だけでなく「習熟」によtって歩留まりが向上した。フルコストは、それまでの3分の1くらいまでに劇的に低下した。販売価格を落としたが、それでも利益幅があった。
T:協力メーカーは「1個流し」生産で「生産リードタイム」を大幅に短縮した。結果注文から、配送まで含む「トータル・リードタイム」の大幅な短縮を実現した。

🧒‍:なるほど。なるほどです。

👨‍🦳;それと、トヨタ生産方式を知っている君ならわかるだろうけどリードタイム、つまり時間というのは非常に重要なんだ。三枝さんは、ビジネス人生の中で決定的ともいえる重要な役割を果たしてきた戦略概念だったといっている、そして、経営者を目指す人にとって、「時間の戦略」は必須科目であるとも言っている。


経営者の謎解き  時間の戦略
  90年代初め、トヨタ生産方式は単なる生産改善手法ではなく、企業の《時間の戦略》として機能している、と米国人が喝破した。それは、改善の視野を工場だけでなく事業全体にステップアップさせる歴史的発見だった。それが、リエンジニアリングやサプライチェーン、 ERP、最近では欧州のインダストリー 4・ 0などの歴史的な概念の変遷につながってきた。企業の競争性を高めるには、社内の仕事のプロセスを見直して「時間短縮」の武器を導入する必要がある。

🧒‍:はい。わかっています。非常に面白いです。

👨‍🦳:だが、さらなる疑問を三枝さんは自分に投げるんだ。このモデルは陳腐化しているんじゃないかってね。社員が、事業モデルという形で、明確な認識を持っていないということは、過去に築いた事業の優位性に胡坐をかいていて、次の革新ができていないんじゃないかってね。

🧒‍:まだ、調べることが必要なのですね。

👨‍🦳:ああ、こういうことをあぶりだしてくれるのもフレームワークのいいところだ。そして、三枝さんは社内を調べ続けた。そしたら胡坐をかいているわけではないことがわかったんだ。ミスミは歴史的に金属部門から立ち上がった事業を強くするため、インフラ部門に強化についても様々な手を打ってきた。そして、納期尊守というDNAがミスミに沁みついていた。面白いことにこの機能がミスミの強みとして認識されていたのである。そして、「この仕組みに載せて違う商品を売り出せば十分に会社の成長につながる」とミスミは考え多角化を始めた。(自動織機のための部品、エレクトロニクス部品や配線部品。これらは配送部門を土台として次々と多角化されていった。)そのことで、ミスミは高収益と高成長を成し遂げてきたんだ。

🧒‍:非常にユニークですね。

👨‍🦳:そう。三枝さんも同じように思ったんだ。そしてユニークな会社であると納得できたとね。

🧒‍:なるほど、それで社長を引き受けたと。

👨‍🦳:いや、まだ社長を引き受けるかは判断はしていない。

🧒‍:え?そうなんですか?

👨‍🦳:ああ。重要なことは海外に売って出ていく潜在性をどれほど秘めているかだったそうだ。そして、人生の最後に「日本発」の新しい国際企業をひとつ育て、その中で、日本の経営者人材を育成したいと思っていたそうだ。これをさらに調べていくんだ。ここまでで、社長になってくれと言われてから4週間経過していた。

🧒‍:4週間でここまでつかんでしまうのですか。。すごいですね・・。うーんちょっと自慢話みたいだけど。。

👨‍🦳:今日はここまでにしよう。明日は、この時点でのミスミの弱みについて、そして、最終的にどのように社長を引き受けるように決めたのかについて話すよ。

🧒‍:よろしくお願いします。

・・・・・・・・・
 今日は当時のミスミの強みについて解説しました。流通イノベーションを起爆剤にして、QCTを強くしていったという経緯があったのですね。そして、特にTの時間が重要であると。さて、次回は1章の後半、弱みの部分(戦略なきよろず屋)と改革シナリオの「1枚目」について解説します。ぜひ、スキ・フォローお願いします!!

なお、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

番外編マガジンもあります。是非覗いてみてください💁‍♂️

#製造
#理論と実践
#ものづくり
#成長
#5S
#トヨタ生産方式
#ジャストインタイム
#自働化
#リーンプロダクション
#ザゴール
#制約理論
#ドラッガー
#ビジョナリーカンパニー
#アドラー
#コーチング
#情報リテラシー
#要件定義
#会計
#損益計算書
#決算書
#損益分岐点
#原価低減
#平準化
#両利きの経営
#両利きの組織
#心理的安全性
#グーグル
#推薦図書
#システム
#発注側
#会社改造
#事業再生


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?