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【ザ・会社改造編14:オペレーション改革に挑む】

本マガジンのこれまでの投稿は上記リンクに入っています。

本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回は第7章の「時間と戦うオペレーション改革に挑む」の前半を解説します。

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◆オペレーション連鎖不全

🧒‍:おはようございます。

👨‍🦳:おはよう。今日は第7章に入っていく。残りは7章と8章だけだ。第7章はカスタマーセンターの改革について解説する。元々最初に挙げた「ミスミの8つのう弱み」のうち、最初に挙げられていたのが営業組織とカスタマーセンターの弱体だった。そこで三枝さんは中国進出プロジェクトととカスタマーセンター改革を「2大リスキープロジェクト」と呼んでいた。

🧒‍:そこまで優先順位を上げていたのですね。要するに受注業務ということですよね。

👨‍🦳:ああ。ただ、この改革も苦難の連続だったそうだ。2回失敗して。3度目の正直で環椎することができたそうだ。

🧒‍:そうなのですか。

👨‍🦳:当時、ミスミのカスタマーセンターは全国に13か所に設置されていた。東京都大阪以外のセンターはどこも小規模でアウトソーシングの方針のもと、顧客とやりとりするオペレーターの仕事は業務委託先からの派遣社員が担当していた。

🧒‍;でもそうなると定着率が低い、つまり転職率が高いから育ったと思ったらすぐ離職。また教育という状況に陥ってしまうことが多いですよね。それにミスミは1000ページを超えるカタログが複数ある。深く知識を持っている人間が自分でその知識を抱えてしまい、自分の仕事の領域を作ってしまいますね、そうするとチーム連携なんてあったもんじゃない。

👨‍🦳;その通り、まさに定着しないための教育コストの無限浪費、そして、固有の人材への知識集中による連携障害が起きていたんだ。創る、作る、売るのサイクルの中で、カスタマーセンターの機能が低く、カスタマーセンターからの情報を受けて実務を行う事業側との断絶が起きていたということになる。アウトソーシングの難しさを物語っているね。

「経営者の謎解き  過度のアウトソーシング  アウトソースを重視するあまり、革新への感性が鈍ってしまうほど社内機能を削ってしまうと、その会社は「戦略を自律的に切り替える能力」まで失ってしまう。そうなると、深刻な戦略の陳腐化に陥りかねない。」

🧒‍;イメージできてしまいます・・。アウトソーシングはコストダウンが目的なのにコストアップになっている可能性がありますね。まずは、離職率を下げないといけないですよね。

👨‍🦳;ああ、その通りだ。ミスミの商品は技術難易度が高い、消費者向けの商品と同じだと思って入社してきた派遣社員の多くは、仕事の煩雑さに音を上げてやめていくそうだ。結局、新人は成長しないから給料ほど働けないし、ベテランは教育に時間を取られ給料ほど働けない。。三枝さんはこれを「2重ロス構造」と呼んだ。

🧒‍:そこで改善が始まるということですね。

👨‍🦳;本社の幹部にどれほど関与しているかと聞いても「自主性に任せている」という回答だったという。自主性というかお手上げ状態だったということだな。ここがスタートラインだ。

🧒‍:なるほど。会社は改善をしない。そして、地方センターがそのしわ寄せを受けていたという構造っぽいですね。しかし、カスタマーセンターは会社規模が拡大すればするほど、複雑な問題になっていきますよね。早く解決しないとですね。

👨‍🦳;その通り、だからこそ優先順位を上げて解決を目指すということだ。

🧒‍;なるほど。

👨‍🦳;だが、これも道のりは平たんではなかった。この先2回の挫折含め、5年8か月もの泥沼のような格闘になっていく。

◆一つ目の挫折

🧒‍;5年8か月・・。粘り強くやらないとこの手の問題は解決しないのですね。

👨‍🦳;ああ、まず、本社の担当部門長がチームを組んでセンターの改革の検討を始めたのだが、その時点で不安であると感じた三枝さんは外部コンサルの導入を考えたんだ。だがこれがうまくいかなかった。

🧒‍;どういうことでしょうか?

👨‍🦳:部門長のリードが弱く主導権はコンサルタントが握っているようになっていた。そして、問題を情報システムで解決しようとしていたという。そして3か月後の報告では、「20億のシステム投資を行う」という内容のものだったそうだ。

🧒‍:それはだいぶ危険ですね。現場を精査して、きちんと業務フローの精査・要件定期ができているようには思えないですね・・。たった、3か月で20億のシステムの投資を提案というのはちょっと信用できませんね。

👨‍🦳;ああ。三枝さんも同じように感じていた。そして、このプロジェクトは撤退の指示がでることとなった。リーダーも退職してしまったようだ。経営者人材を育てることを標榜していても、全員が残るわけではないということだな。

🧒‍;もちろん。それはそうですよね。

◆改めて出発

👨‍🦳;しかし、三枝さんはあきらめてはしない。新たな改革チームを編成した。そのチームを5C改革チームと命名した。5つの連鎖( Chain:チェイン)とは、すなわち「価値連鎖」「時間連鎖」「情報連鎖」「戦略連鎖」「マインド連鎖」である。このことを抜本的に変えない限り改善効果は見られない。

🧒‍;前回の失敗はこの基本部分に着目できなかった部分なのでしょうか?

👨‍🦳;ああ、それとリーダーシップの欠如であったと考えているそうだ。また現場経験が浅いものが集まっていたというのも原因と考えた。そこで、元和の細目を熟知しているメンバーをいれた。13か所のセンター長の中かか現場を熟知し、ガッツと知恵がある者を抜擢して改革チームのリーダーとした。さらに追加で1名のフルタイムと3名の兼務メンバーを付けたそうだ。そして、改革の計画をオペレーターの監督者として働いている、社員全員に計画を打ち明けることを決めた。実態分析と集約の際の協力を得るためだ。

🧒‍:非常にいいことですよね。でも改革って、リストラも伴う可能性があるからそれを全員にいうってなかなかリスクですね・・。私がメンバーなら不安を覚える気がします・・。

👨‍🦳:だが、そう思うよな。そして、三枝さんは関係者全員を集め、下記のことを説明する。

問題点:
・顧客の視点から見ると、ミスミは「遅い、的はずれ、気が利かない」
・経営の視点から見ると、「戦略の停滞、資源のムダ、機会の損失」
・そして現場の社員にとっては「倦怠感、不信感、閉塞感」
・このまま放置すれば、「顧客が離れ、競争に負け、事業が衰退」の運命

なぜ、これまでの改革は成功しなかったのか:
1  全社的視点での「最適組織」になっていない。
2  「改革のコンセプト」や「システム戦略」が不明瞭。
3   13カ所がバラバラで、改革エネルギーが束にならなかった。
4  抜本改革に向けたリーダーシップが弱かった。

🧒‍;なるほど、末端の人間が理解するには、もっともらしい解説ですね。でもここからですよね。そのために改革チームを作って、集約をするということになる。そこのモチベーションの低下が懸念です。

👨‍🦳;そうだな。そこで、最後に集約化のプレゼンを三枝さんはする。そして参加者は仕方ないが、自分の仕事はどうなるのかと不安になったそうだ。だが、そこで三枝さんは、

「私はここでハッキリ言う……。私は、あなたたちの雇用を完全に保証します。いですか。ミスミの社長が約束します。センターがなくなっても、皆さんにミスミの社員としてやってもらいたい仕事は営業所にたくさんある。いいか、みんな、だから退職は一切、考えないでほしい」

というんだ。

🧒‍;おお。それは頼もしいですし改革への意欲を掻き立てられますね。

👨‍🦳;ああ、そうだ。でも経営的にも皆が辞めないで改革が定着し、カスタマーセンターが正常(離職率が低く、各人が給料ほどに働いている)ことの方がよっぽどもメリットが大きい。

🧒‍;そうですね。そしてプロジェクトが始まっていくと。でも、、まだうまくいかないのですよね・・。3回目のチャレンジがあるようですし。

👨‍🦳;ああ、そうだ、もう一度挫折がやってくる。だがそれでもあきらめず最後は完遂させるんだ。次回そこを話そう。

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今回はカスタマーセンターの改革について前半部分を解説しました。カスタマーセンターのような部署はどこもアウトソースになり、離職率は高く、コントロールに苦戦していると思います。実業とは違ってスポットライトも当たらずかつ当たり前の作業と思われがちです。本社やトップが本気にならない場合が多いと思います。しかし、全ては連鎖ですので、同じように改善が重要な部署ですよね。次回は、さらなる失敗、そして完遂させていく後半を解説していきます。

なお、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて説明しています。ご興味あればスキ・フォローいただければ嬉しいです。

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