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【ザ・会社改造編18:ミスミ流 変わり続ける組織】

本マガジンのこれまでの投稿は上記リンクに入っています。

本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回は最終章第8章の「元気な組織をどう設計するか」後半の解説です。

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👨‍🦳;おはよう。

🧒‍;おはようございます。いよいよ、最終章8章の後半だ。前回三枝さんは、全社経営フォーラムで彼の組織改革の方針を発表しましたよね。その後どのようにしていったかですね。

◆ミスミ流「いきいきした組織」

👨‍🦳;ああ、三枝さんはそれでもモヤモヤを持っていた。フレームワークが足りないと考えていたんだ。ミスミは当時売り上げ500億程度だったが、それが5000億円あるいはそれ以上になっても組織が生き生きしている組織論とは何だろうか考えたんだ。そして、ミスミをその実験場として、その組織論を試したいと考えたんだ。そして、20代のころから書き溜めてきたメモや切り抜き、自分で作った研修教材や文献など読み返した。社内研修に招いた講師の話も参考にした。そして、ひとつの表を作った。

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🧒‍;なるほど。生き生きとした変化創造型組織ですか。この条件はある程度しっくりきますね。この時ミスミはできている部分とできていない部分があったと。

👨‍🦳;ああ、そうだ。だが原理と考え方については、変化創造的組織に特性を持っていると三枝さんは考えた。

🧒‍;でも理想は良くても実際は、というところが前回ありましよね。

👨‍🦳;そう、だからどこが問題なのかを探した。そして複数項目で崩れが発生していることに気づいたんだ。表で×になっているところだな。最初の出発点は、①プロフェッショナルの弱さ、②結果追求の弱さだったという。ミスミに集まっている人々は経営者としてプロと言えなかった。かつ、結果追求を甘くしたため「赤字でも8年続ける」みたいな甘い経営となった。

🧒‍;確かに、、アマチュア人材に対して結果追求をきちんと行わなければプロ志向のマインドは生まれないですよね。

👨‍🦳;さらに③コーチングリーダーの弱さ④戦略追求の弱さがあったという。死の谷を乗り越えていくためには戦略技量がものをいう。甘い戦略が全社に蔓延していた。

🧒‍;なるほど、当時は理想に対して、4つの欠陥があったわけですね。これでミスミに必要な組織論のフレームワークが見えてきたということですね。

◆改革の打ち手 戦略研修講座

👨‍🦳;ああ、そして、下記の組織活性の循環動態論名付けるフレームワークを作ったんだ。これがミスミ組織モデルの基礎理論であり続けると三枝さんは考えた。

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🧒‍;まず何から手を付けていったのでしょうか?

👨‍🦳;最初の具体的うち手が、「戦略研修講座」の開設だった。社員の経営リテラシーを高めるための講座を行うと。三枝さん自ら塾長になったそうだ。具体的には、役員や部門長、チームディレクターを30名ほど小クラスに分け、丸一日かけて行う戦略講座を三か月に1度のペースで開いたそうだ。受講者にバンバン質問を与えてレポートを提出させる。講義が終わると飲み会を開くといったところだ。

🧒‍;すごいですね。レポート厳しそう。私なら耐えられないな・・。あえて塾長になって、指導することで自然に経営スタンスが伝わっていくという副次効果も期待できますね。

👨‍🦳;それを14年以上続けているようだ。すごい気力と体力だね。そして、指導教官も育ってきたそうだよ。すばらしい仕組みだね。教える側はさらに勉強になるからね。

🧒‍;でも、私はずっと思っていますが、教わるだけではだめで理論と実践が必要ですよね。

👨‍🦳;ああ、そこでミスミにはビジネスプランシステムというものがあるんだ。ビジネスプランは実行者が必ず作るという仕組みだ。そして戦略を組織に展開もしている。まさに実践だ。

 私(著者)は、ミスミのすべての事業を対象に、会社の制度として「ビジネスプランの策定システム」を導入した。狙いは、組織論と戦略論を「一体化」した制度として定着させることだった。それは、多くの日本企業においても絶対的といえるほど重要な課題なのだが、依然として多くの企業は、組織論と戦略論を別の問題として扱っている。
 事業計画を経営企画室のスタッフに作らせている会社とは、根本的に発想が異なる。ミスミでは、「実行者自らが戦略を作る」ことが絶対条件であり、「勝ち戦のストーリー作り」が組織論や人材育成論と結びついている。すべて経営ラインの責任だから、自分でお粗末な戦略しか考えられなければ、負け戦になっても、責める相手は自分しかいない。

🧒‍;学んだら実践なのですね。でも皆がついていけたわけではないのですよね。

👨‍🦳;ああ、論理的に考えることが苦手な人の中からは落ちこぼれが出たとも書いてある。

🧒‍;なるほど、全面とは言えないとも思いますが、ビジョナリーカンパニー言及していたカルト文化であるのかもしれませんね。それが強い企業の証でもあります。

◆社員とのコミュケーション

👨‍🦳;さらに三枝さんは、社員との直接のコミュケーションも開始した。経営フォーラムの開催(月に一度幹部や社員を階層別に集めて開催した。)ここでも課題を議論しレポート参加者に書いてもらい、三枝さんが添削という形をとったようだ。そして、三枝さんは3,4か月に一回のペースで全社員に向けたレターも書いたという。「経営の考え方」というタイトルの文書で、「ミスミ経営幹部の共同言語作りを目指して」というサブタイトルをつけていた。

🧒‍;共通言語、文化、、これって「両利きの組織を作る、加藤雅明氏著」の中に出てきたAGCの島村社長が風土改革をしようとしたときのトップコミュニケーションの話と似ていますね。

👨‍🦳;トップからのダイレクトメールなんて本当同じだな。まあ当たり前のことかもしれないがしっかりやれているかと言われたらどうか・・といったところだな。

◆企業組織体系を考える

👨‍🦳;ちょっと話が変わるが、三枝さんが社長になってからミスミは急速に成長を遂げっていった。そうこしているうちに、ハンズオンをしていた三枝さんにレポートする人が20人もなったというんだ。

🧒‍;そりゃ難しいですよね。よっぽど天才でも多くて10人ですよね。

👨‍🦳;ああ、三枝さんも10人程度までだと言っている。ジャックウェルチは13人と言っているそうだ。いずれにしろ20人は多すぎるわな。

🧒‍;もはや、アポを取るのも大変ですね。

👨‍🦳;そこで、三枝さんは企業内に企業を作るということを考えたんだ。カンパニー制と似ているがこれは真似をしたくなかったそうだ。企業内企業は企業体と名付けた。三枝さんがこだわったのは、企業体のトップに「企業体社長」という肩書を与えることだった。なるべく若いうちに社長という立場を体験させることが重要だと考えていた。

🧒‍;なるほど、「社長直轄型組織」から「事業分権化組織」にかじを切る歴史的転換なわけですね。セル分裂の概念ですね。

👨‍🦳;ああ、自律性は高まり、その自律性を生かして自己主張の経営ができるかは、任命さえれた企業体社長一人一人の経営能力次第ってわけだ。

🧒‍;そこの自律性は過去のものをきちんと残しているのですね。非常に興味深い組織がミスミで出来上がったというわけですね、そして実際2000億までのうりあげを伸ばしグローバル企業になっていったと。

◆組織は変わり続ける

👨‍🦳;そうだな。でも、組織体系を長期的に固定化することは企業の活性の観点から見ると不適切なんだ。

🧒‍;組織は戦略にしたがう。戦略は市場や環境によって変わるということでしょうか?

👨‍🦳;ああ、そうだ。一見それまでの理念に逆行するような変更であっても戦略に適している場合はある。

🧒‍;変化するということですね。でもそれをどう仕組化していくかですかね。

👨‍🦳;実は、上で説明したミスミの組織モデルには「動態論」自体が組み込まれているんだ。会社の変化に合わせて、組織を変遷させていくんだ。その時々で「ミスミ組織モデル」は常に変わり続けることができるという。実際14年間の間に、「創業社長の組織論」から、「三枝さんの組織論」「分権化」と3つの大きな変化を遂げている。そして、現在の社長は世界4極の企業体組織などを考えているという。

🧒‍;なるほど。これからも変わっていくと。元気な事業、元気な会社を保ち続けるにのキーワードは「変化し続ける」ということなのですね。

👨‍🦳;最後に三枝さんは下記の課題を読者に与えているよ。これでこの本は終了している。これで解説を終わりにする。

「会社改造」によってリスクの高い「改革の連鎖」を積み重ね、グローバル競争力を次の高みへと押し上げることに成功した企業にとっては、いったん獲得した組織活性を維持し続けることが大きな課題となる。《ミスミ組織原論 》の2つのチャート(上術した表2つ)を広義にとらえれば、どこの会社にも適用できる普遍性がある。それに照らして考えたとき、あなたの会社の現在の組織はいま、どのステージにあるといえるか。もしあなたが社内の新しい組織問題を見つけたら、それを打開する打ち手とは何だろうか。三枝にとってこれは演習ではなく、彼が経営現場で常に答えを出すことを迫られたナマの課題である。

🧒‍;なるほど、ひとつの課題、例えば赤字から黒字化するなどと短期的にするとかそういう次元ではないのですね。いかに継続的に戦略を考え組織を対応させていく、変化させていくそういう会社組織を目指しなさいということなのですね。もちろんそのためには、7章までに書かれていた多くの苦労とリスクが伴う。しかし、それを継続して改革を連鎖させていく必要があると。なるほどで、自分が何をすべきかが見えてきた気がします。ありがとうございました。

👨‍🦳;ああ、そうか。がんばってくれよ。

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今回は、ミスミの組織モデルの変遷について解説しました。これからも変化していくのだとうと思いますよね。戦略と共に組織も変えていく。非常に難しいことですがシンプルに何が必要かということを考え抜くことが重要なのかと思いますね。さて、これで各章の解説は終了します。なんと全18回もかけてしまった、会社改造編。。。次回は簡単なまとめを投稿します。

そして、その後番外編を挟んで、次回のマガジンはトヨタ生産方式のJITおよび自働化の肝となる「自工程完結」について解説していきます。これは現場だけでなく営業やバックオフィス業務にも適応できる考え方ですのでお楽しみに💪

下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて説明しています。ご興味あればスキ・フォローいただければ嬉しいです。

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