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【ザ・会社改造編6:戦略思考を吹き込む】

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本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回から第二章「事業部組織に「戦略思考」を吹き込む」を解説します。

・・・・・・・

◆戦略の位置繰り

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。今日は第二章の“事業部組織に「戦略思考」を吹き込む”を解説するよ。

🧒‍:ありがとうございます。吹き込むというところが面白いですね。ただ、カリスマが戦略思考を持つということでなく、戦略思考を組織文化にしていくということですね。

👨‍🦳;ああ、そうだ。三枝さんが社長になって、打ち出した事業転換方針は明確であった。「本業回帰」と「国際進出」である。それを実行していく覚悟をもって社長になっている。本業回帰の対象である工業機械部品事業は、この10年間、多角化事業の赤字を補填して余りある収益性を保ち、良好な会社決算をたたき出してきた。しかしながら、この事業でも「戦略」のにおいはなかったという。

🧒‍;でも、ミスミの場合高収益でしたし、成り行き任せであったというのはわかりますよね。でも、戦略がなくそれでも高収益だったということは戦略の概念をいれたらどうなるんだろうと思いますね。

👨‍🦳;その通りだね。ただ、三枝さんが社長に就任した2002年は日本経済が大失速している住協であった。ミスミもその打撃を受けていた。ただ、これは改革の良いタイミングでもあった。ミスミには3つの主要事業があったが、これをどう手を付けていくかが重要であった。王道はどれか一つでモデルケースを作り上げそれに成功したら、他の事業に広げるやり方だ。なぜなら、改革の際は社員の心を揺らすことになる。組織の不安定化の心理をむやみに社内に広げる「全面戦争」仕掛けてはならない。これは注意しておいてくれ。一つの改革を成功させた上でその手法を水平展開するステップが必要だ。

🧒‍:なるほどです。

👨‍🦳;ここで、当時のミスミの主な事業について下記に抜粋する。

・金型部品事業部
ミスミ創業の事業であり、事業部のなかで最大の売上規模である。ミスミの経営の「本丸」として、多角化事業の赤字を補って余りあるキャッシュフローを生んできた。しかし、市場では中国シフトが進行し、国内の成長はとまっている。明らかにこの事業は改革を必要としている。幹部や社員はノンビリしていて、「まずいことになっている」という危機感を抱いている様子はまったくない。

・ファクトリー・オートメーション( FA)事業部
 ミスミの現在の成長を生み出している事業である。売上高は金型事業に次ぐ 2番目の大きさにまで拡大してきた。売っている商品は、工場の生産ラインで使われる「生産機械」に組み込まれる部品だ。 FA事業は 14年前に創設されたが、 3年前に事業部長に就任した長尾謙太(執行役員、 42歳)が急成長を生み出す立役者になっている。彼は、磨けば優れた経営人材になりそうだが、いまのところ企業経営に強い興味を持っているわけではない。雑談をすると、釣りやゴルフ、クルマの話題で盛り上がる。

・エレクトロニクス事業部
  11年前に立ち上げられた事業である。売上高はまだ 50億円前後だが、成長率は FA事業に次いで高い。生産機械のなかに組み込まれている電線やコネクターなどの電気電子部品を売っている。ミスミのなかでは、いわば「辺境」の事業に位置し、改革対象としては取り組みやすい規模である。」


🧒‍:なるほど。そして、この事業部のどこから手を付けていくことにしたのでしょうか?

👨‍🦳;ここで、三枝さんは条件を提示しているよ。古い歴史を持つが活力を失っている部門では、ほぼ例外なく抵抗勢力があるし強い。なので、その場合とりあえずそこを避け扱いやすい「辺境」の部門で変化鵜を起こして成功例が作るのがよいと。そして、改革を受けて立つ強いリーダーがいない組織は改革の対象に選んではいけないという。もう一つ条件というか判断が必要なことは、短期決戦かどうかという点だ。

🧒‍:短期決戦?

👨‍🦳:苦境に追い込まれている事業の再生であれば、短期決戦の救済が必要だが、高収益のミスミでは不要なんだ。だから、時間軸を長くとることができる。ここは大きな判で、道を間違えてはいけないと言っている。

🧒‍:なるほど、最初の話から言うと手を付けていくのは辺境のエレクトロニクスでしょうか?

👨‍🦳:いや、辺境と本丸と中間にあるFA部門を選んだ。辺境ではないが、本丸でないということ、そして、最大の理由は「人」であるという。リーダーの長尾さんという方が、優秀な経営人材だと三枝さんが見たんだ。また、もう一つの理由はFA事業は伸び盛りであり、改革の成果が早く出そうだったということだ。

🧒‍:なるほど。ではFA事業部の改革がこれから始まるということですね。

◆競合が出てこない事業計画

👨‍🦳;そう。この時FA事業部は長尾さんという方が事業部長であった。長尾が就任してから3年目になるが、初年度から新商品開発に注力し2年で85億円の売り上げを149億円まで伸ばしていた。しかしながら、3年目に景気失速の影響をもろに受け年度予算184億円に対sて、50億もの未達成が出る見通しになっていた。

🧒‍:そうなのですか。でも景気が減速ということは業界全体で落ち込んでいるんですよね。競合には負けていないのですよね。であれば仕方ないですよね。。。

👨‍🦳;競合には負けていないと長尾さんはいう。そして、今後の事業計画をを説明したそうだ。今後5年で400億程度までもっていくと。だが、そこで三枝さんは長尾さんに対して、「この情勢の中、本当に実現できるのか」と詰め寄る。そして、長尾さんは説明するがその事業計画の内容が雑だった。そうして、「勝ち戦になるのか、競争相手が誰かわからない、これは戦略と呼べない」と三枝さんは長尾さんに言い放つ。

🧒‍;「競合」、「勝ち戦」ですか。

👨‍🦳:これはミスミにはなかった文化だそうだ。なぜならば、ミスミは「ユーザーが求めるものをユーザーに代わって、調達し供給責任を果たす会社であるべきだ、「購買代理店に」徹すれば競合は存在しなくなる」という理論を口癖のように言っていたためだ。

🧒‍;確かに商社ですからね。そういう発想にはなりますね。でも、どの商品にも競合はありますからね。きっと、「購買をすべてミスミに代行させて、自社では一切やりません」といっている会社はないですよね。

👨‍🦳;そう。三枝さんは、「競争相手が誰かを考えない事業計画なんて、ナンセンス、経営にならない」っていうんだ。そして、「大きな成功にはリスクが伴う、だから事前に戦略を描いておくんだ。そうすれば、たとえ間違えていても気づきが早くなる。」とね。

🧒‍:長尾さんも好業績かつ事業計画も準備していた上で、FA事業部門がいきなり改革の旗になるとは思っていなったでしょうね。

👨‍🦳:だろうな。そして、長尾さんは部署に戻って幹部たちと議論をする。だが、幹部たちは戦略と言われたの初めてだったそうだ。研修とかでは勉強していると思うが、実際に自分で戦略を作るというのは初めてだったのだと思う。(一流のミスミさんで戦略と言われたの初めてというのは信じがたい)そして、一度、幹部に戦略を書いてもらったが、戦略と呼べるものではなく、長尾さんも具体的には指示できなかったようだ。最初長尾さんが幹部と提出したものは「競合」も「勝ち負けもないもの」だったと三枝さんはいっている。

経営者の謎解き
経営リテラシー  経営リテラシーは、座学で取得した論理を、経営現場で試し、失敗と成功を繰り返すことで高まっていく。経営トップの「戦略創造性」が勝負を分ける時代が来ている。慢性的な不振企業では、日ごろから論理的に議論し、数字を重視する気風が弱く、古い社内力学に流されやすい。会社を抜本的に強くするカギは経営リテラシーだ。

🧒‍;うーん。他人事でないですね・・。私の会社でもありそうです。

◆考える癖をつける

👨‍🦳;だが、三枝さんは遅くまで会議を実施している長尾さんのチームにふらっと入って参加することもあったそうだ。

🧒‍:え?それはなかなか・・すごい。一緒に議論したんですかね?

👨‍🦳;アドバイスはしたそうだ。だが、答えは言わなかったんだ。だが、1か月経過しても最初のレベルから変化がなかったそうだ。さすがに三枝さんも我慢しきれなくなってきたそうだ。

🧒‍:であれば、社長なのだから最初から答えを言えばいいのではないでしょうか?

👨‍🦳:簡単に答えや道具を出してはいけないんだ。少し自分たちでのたうちまわって、自分で考える癖をつけてもらうことが必要だったんだ。これは改善でもすべてのことに言えるね。

🧒‍;はい。まったくその通りですね、時間がないからって優秀な人間(その職場のトップ)が案を提案して実行してしまうと、一瞬で元に戻るか、実行そのものが出来ない場合がほとんどですよね。ところで、結局そこで三枝さんは答えを教えたのでしょうか?

👨‍🦳;結局、我慢できたんだ。経営人材の育成を宣言していたからね。やっぱり急がば回れということで、待つことを決めたそうだ。

🧒‍;なるほど、は長尾さんはどうしたのでしょうか?

👨‍🦳:実はこのとき長尾さんも部下に戦略立案を投げていたんだ。そして、自分が考え方や道具を身に着け部下を先導しなければならないことに気づくんだ。

🧒‍:今更感はありますが、フレームワークの蓄積がなかったらそういうこともありますよね。それに、こうやって戦略的でなかった企業が戦略思考に変わっていくということは個人レベルでの変化が組織内に伝播していくことそのものなのでしょうね。
でも、リーダーが自らリスク取って考えるって当たり前のようですけど結構やっていない組織もあると思いますね。部下に任せてそしてそれをダメ出し修正程度しかしないというのは、どこでもあると思います。

経営者の謎解き ハンズオン
経営リーダーは現場の実作業に触れつつ、部下よりも一段高い視点で問題をとらえなければならない。部下が過度の回り道で消耗しないように、タイミングを見計らって「考え方」と作業の「出口」の方向を指し示す。それは余計な作業は捨てろという「サボり方」を教えてあげることを意味する。《ハンズオン》はリーダーシップの要諦のひとつである。」

👨‍🦳:ああ、そうだな。きちんとやってくれるリーダーもいるが両方いるのだろうがな。

🧒‍;いよいよ、ここからなのですね。長尾さんはどんなふうに進めていったのでしょうか?

👨‍🦳;よし、それは次回解説しよう。今日は時間だ。

🧒‍;引っ張りますね。気になりますが、わかりました。また、次回お願いします。

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今回は、三枝さんがどんな部分から手を付けていったか、そして手を付けるFA部門をどのように変えていこうとしたかについて解説しました。次回は、そのFA部門のリーダーがどのように戦略を描いていったかを解説します。プレッシャーに苛まれながらもがいていく様子が描かれていきます。自分だったらと思うと身が引き締まりますね。
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