【ザ・会社改造編16:オペレーション革新、新モデルコンセプトの構築】
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本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回は第7章の「時間と戦うオペレーション改革に挑む」の後半を解説します。
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👨🦳;おはよう。
🧒;おはようございます。今日は、オペレーション改革の三度目の正直でどうモデルを構築していったかですね。
◆徐々に見えてきた成果
👨🦳;そうだね。リーダーの武田さん(当時36歳)がJOB種化(分業体制)の概念を根本から変えて「1個流し」「多能工化」の概念をオペレーションに入れていかなければならないことに気づいた。とはいっても、ここからどう具体的に実行していくかってというところだな。
🧒;ですね。
👨🦳;武田さんは元々「現場」志向だった。そこにもう一つの要素である、「フレームワーク」の探索が必要だと気づいたところで彼の強みがフルに機能し始めたんだ。トヨタ生産方式の「一個流し」「平準化」「ニンベンのついた自働化」「多能工化」のフレームワークの現場への適用ってことだな。(ぜひ、トヨタ生産方式編のマガジンを見ていただければ・・)
例えば、あるカスタマーセンターに行った時、そこで人が頻繁に動いているということを感じ、ある担当者に、「ここは他と違うね」と話をしたそうだ。そうすると、その担当は、「ここは人が歩いて行うというやり方で、チームのメンバーの役割が時間によって変わっていく、個人お席はなくて仕事の役割で席が決まって、役割が変われば席が動くんです。」と言われ、そのことから多能工化や同期化の知恵を拾ってきたりしたそうだ。
🧒;なるほど、現場に行って現実とフレームワークを組み合わせて帰ってくるということですね。
👨🦳;ああ、そうだ。そして社長から「きれいな書類ばっかり作りやがって」と言われてから2か月がたって、(プロジェクトは通算3年9か月)革新の設計思想をもって三枝さんに会いにいくんだ。詳しくは書いていないが、分業体制から、一人のオペレーターが多くの業務をこなしながらチームで連携してくチーム構想を提案したんだと思う。
🧒;ですよね。そして、情報をバッチ式で受け取るのでなく、それぞれの情報を各々で処理していく。つまり、一人の人が異なった作業を並行して行える状態を理想としたのだと思います。そうすると、待ち時間が無くなる。そして、情報のたまり方を中間在庫と見立てて、たまってしまった情報があった場合はチームメンバーの誰かがサポートするという構図ですね。そそこは、「必要数をタクトタイムで考える」に近い考え方のはずです。結果工程を同期化させていくのだと認識しました。
👨🦳;おれもそうだと思う。内容は良かった。ただ、この時、武田さんは焦っていた。二か月遅れてしまっていたとね。だから計画は非常に強行的なものだったようだ。だが、この時三枝さんはじっくり時間をかけてやれ、期限を気にせず、集約開発は遅れもたいいから拙速ではなくDo it right!!で行ってくれというんだ。
🧒;ここでも、制約条件の開放を行ったのですね。なるほど、実験フェーズを設けたわけですね。
👨🦳;そうだ。そこで実験が始まっていく。やはり最初は生産性はうまく上がらない。業務ミスも多発する。そりゃそうだ。ただでさえミスミの扱う商品点数、顧客数というのは膨大だ、見積もりから、納期確認、発注等、きっと多くの業務があるだろう、それを新しいシステムで学んでいかなければならない。その負荷に耐えかねて、「こんなやり方で社員に負荷かけるおはおかしい」と言い出し、同調した派遣社員が一斉に会社に出てこなくなる事件が起きたそうだ。
🧒;そりゃ大事だ。。実験でよかった。いくら上司が事業への思い入れを語っても、部下が皆、自分と同じ同期で動いているとは限らないんですよね。社員の頑張りにだけ頼ってしまうとしっぺ返しをくらうことがありますよね。
👨🦳;そうだ、でもこれは実験だったから出社拒否が起きたとしても大きな損害にはならなかった。影響幅が小さいところでの対応だったからね。そうして実験は進んでいった。出社拒否のメンバーがいる一方、地方センターから来た現場リーダーたちは猛烈に頑張ってくれたという。やがて、仕事の対流が減り始めた。それが予兆だったという。
🧒;そうし、少しづつ波に乗ってくると大きいですよね。
◆地方センターの集約化
👨🦳;ああ、そして、そのこと武田さんはもう一つ大きな方針を決定していた。これまで派遣社員の採用が基本だったオペレーターを「社員化」するという課題だった。だがまだそれを社長と話したことはなかった。少しビビっていたんだ。だが、それを社長に話すと徹底的にやれとの指示をもらった。
🧒;確かに多能工化や同期化をしていくのであれば安定して仕事をしてくれる社員がよいですからね。それにこれまで顧客接点に社員がいなかったのですから、そこは強くした方がいいというの納得できます。
👨🦳;そうだな。そして実験にもどるが、当初の予定の3か月よりさらに遅れ5か月かかったが、業務プロセスが完成した。
・実験チームの業務生産性は、実験前より75%向上した
・クレーム発生率は27%削減できた。
・受注<TAT>は52%短縮した。
・オペレータの業務習熟度は2.3倍に高まった。
🧒;すばらしい。
👨🦳;だが、そうした数字の変化のみならず何よりメンバーのマイン語が大きく変わった。「顧客に対する思いと責任感」」「やらされ感からの脱却」「自ら改善提案できる喜び」というものに大きく変わっていった。そしてのこの成功を受けて新手法がQCTセンター全体に水平展開された。そして、新センターの組織を事業部単位に分けた。
🧒;準備が整ったというわけですね。
◆地方センターの集約を再開
👨🦳;これら体制が整ったことで、残りの地方センターの集約が再開された。今回は実験の甲斐もあり、大きな問題は起きなかった。そして、東京での将来の震災考え熊本にもQCTセンターを立ち上げた。各リーダーたちの活躍もありこの集約は終了した。つまり、5年以上にわたる調整が完遂した瞬間だった。
🧒;効率という意味では結果はどうだったのでしょうか?
👨🦳;下記だ。
・オペレーターひとりがこなす業務生産性は 2・ 2倍になった。
・その結果、オペレーターの人員数は約 60%削減することができた。集約完了時に 372人いたオペレーターは、売上高が倍増したにもかかわらず,2017年時点では 145人である。
・売上高に占めるセンター経費の比率を指数にすると、「三度目の正直」が完了したときの 98から 6年後には 36にまで下がった。
・顧客からの営業クレームは、全出荷数に対する比率数値で 57%減少した。つまり、コストだけでなく、顧客に対するサービス品質も劇的に改善した。
🧒:素晴らしい成果ですね。
◆ミスミ・オペレーション・モデルの世界展開
👨🦳;そして、ミスミの事業を支える業務オペレーションは、本章で描いた「カスタマー・センター」だけでなく、配送センターを運営する「ロジスティック部門」、業務フローを貫く「情報システム部門」、「営業マン組織」などがある。三枝さんは10年以上にわたり、すべての部門で同時並行定期に改革を進めたんだ。どれもこれも苦難の道だったという。これもすべて「創る、作る、売る」のサイクルを高品質で速く回すための改革だったんだな。そして、それを世界に移植していっている。三枝さんがミスミを去った今でもミスミの経営陣はそれを考えている。
🧒;終わらぬ革新・改善ですね。
👨🦳:ああ、そうだ。よし、3回に渡って解説してきた7章はここで終了だ。次回は大終章8章に入っていくぞ。いよいよ最後だ。
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今回は、カスタマーセンターの集約までの過程を解説しました。概念を変えたあと、まず実験的に時間をかけていっているというところがポイントですね。さて、次回はいよいよ最終章の8章「元気な組織をどう設計するか」に入っていきます。
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