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【ザ・会社改造編13:ダイナミックな戦略へ自律性をつかむ】

本マガジンのこれまでの投稿は上記リンクに入っています。

本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回は第6章の「生産革新でブレークスルーを起こす」の後半を解説します。

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◆再び大きな一手。関西パークの竣工。

🧒‍:おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。今回は第6章の後半を解説していくよ、前回、事業革新のメガトレンドの背景を考え、弱点の生産をトヨタ生産方式を導入し改善しようとした。しかし抵抗が各社から起きてなかなか進められないという状況を話したね。

🧒‍:はい。そこで、三枝さんが大きな手を打とうとしたということろで終わりました。

👨‍🦳;ああ、そうだ。当時ミスミの打ち上げは1000億を超え始め、各協力メーカの生産キャパも超えそうだった。それもあって、上海に作ったミスミ村のように、国内に団地を造り各社工場を増設してもらったらどうかと考えたんだ。そのように団地を作ればそこで、信頼している改善の先生がまとめて指導をすることができる。今は当然の事ながら散り散りばらばらに存在しているからな。

🧒‍:ええ。。工業団地をミスミが作ると。。すごい発想です。ただ、確かにもしそこでの改善が成功すれば元々の工場への展開も可能になりますね。しかし、本当にそんなことができるのか・・。

👨‍🦳:三枝さんは大まじめだった。中国のミスミ村と異なり、今回は土地も建屋もミスミが用意するというんだ。協力メーカーは生産機械設備の投資だけで新しい工場を一つ立ち上げられる。しかし、散り散りだったとは言え、関東に協力メーカーの工場は集中していた。そのため関西に作ることにしたんだ。しかも関西は短納期体制も手薄だったので一隻2兆だったんだ。そして、株主も説得し40億円の投資をすることを決める。

🧒‍:すごいですね・・。実行力の塊だ。

👨‍🦳;そりゃ一流中の一流なわけだからな。そして、関西に作るミスミ村を「関西生産パーク」名付けた。これは社長就任から5年3か月経ったときのことである。2007年頃だ。そして、各社の入居が完了したころ改善指導の先生による改善研究会が毎月開催されるようになった。三枝さんも時々参加割いていたそうだ。

🧒‍;それであれば、ぐいぐい改善が進み各協力メーカー内での横展開が進んでいったのですね。。

👨‍🦳;いや、それはしばらく進まなかったようだ。関西パークだけでなく全体でね。まだ活発になるには時間がかかるようだった。各社の経営者がそれに熱心ではなかったそうだ。

🧒‍:そうなのですか・・・。全体が進まない・・・。その大きな一手も成果はまだ先ということですね。

◆駿河精機の生産革新 覚悟・知恵・汗の結晶

👨‍🦳:全体の協力メーカーでのが進まない。そもそも、お膝元の駿河精機の改善業務が進んでいなかった。

🧒‍;まあ、三枝さんが駿河精機には手を出すなといっていましたからね。

👨‍🦳;とはいえ、徐々に動き始めたんだ。三枝さんが兼務で社長になり、少し時間を置いたタイミングでミスミ本社の改善スタッフ2名を東京から駿河精機に移したんだ。

🧒‍;いよいよ、本格的に意思がある交流が始まるわけですね。

👨‍🦳;ああ、だがここでも大きな抵抗があったそうだ。

🧒‍:どうやって打破していったのでしょうか・・。

👨‍🦳;三枝さんは、改革が停滞した時には力のあるリーダーが現れない限り、ブレークスルーは生まれないと考えおり、ここでミスミのエース級のリーダーである西堀さん(最年少役員)を生産統括役員に着任させた。(生産改善室の室長を兼務)彼はずっと流通のキャリアでの生産と関わるのは初めての経験であったが、経験、リーダーシップから彼を指名した。

🧒‍:確かに、何を知っているかではなく、どう吸収し、変化させていけるかの能力が大事ですもんね。役員レベルでありますしマネジメントの領域ですしね。

👨‍🦳:ああ、最初は、無能を実感したものの3か月もすれば社員に指示を出せるようになっていった。実際、部署や環境が変わった時というのはそこに対応するのに多少の時間はかかるものだからね。

経営者の謎解き   経営技量の汎用化  経営者人材は、経験したことがない分野に携わる機会を得ると、そのたびに自身の経営技量を多面化させていく。それによって、経営技量の汎用性が高まる。プロスポーツ選手が、どこに移籍しても 1日目から発揮できる技量を持っているのと同じだ。

🧒‍:なるほど。

👨‍🦳:そして、問題の駿河精機に入っていたそうだ。改善の先生と共にね。そこで、駿河精機に行ってみると下記のような状況だったようだ。だが、そこでは

-正しいKPIがない。
-改善スタッフのみ前面に出ていて実際の工場長や当事者の自主性が見られない。
-改善のためのコンピューター管理システムはかえって改善を阻害している。
-出来上がりの姿=ゴールイメージが誰にも見えていない

という状態だったという。そこでレポートを西堀さんのチームに送る。

🧒‍;超あるあるですね。こういう状況は経験したことがありますが、全くかみ合っていない状態ですね。こういうときは、三枝さん(トップ)の意図が届いていない、そして、トップも改善室含む現場の話を聞けていないときに発生しますよね。まあ、そんな時間はなかったのでしょうが。要するに心理的安全性が築けていない状態なんだとは思います。

👨‍🦳;ああ、本は三枝さんが書いているから、表現はされないと思うが、本当は現場も自分たちの職場をよくしたい。トップも現場をよくしたいと思っている。同じ目標のはずなのだが、ほぼ80%以上の改善現場で発生するボタンの掛け違いがここでも起きたのだろう。ここを西堀さんが入って、縦横無尽に動き回ったんじゃないかと推測するよ。そして、この時具体的には書いていないが、三枝さんは複数のアドバイスと制約条件の開放も行ったそうだ。より、西堀さんを動きやすくしたのだろう。なお、三枝さんからのレポートは現場の状況を的確にとらえたものだったそうだ。

◆真の改革のスタート

🧒‍:なるほど、制約条件の開放は生き詰まったリーダーには有効ですよね。

👨‍🦳;そしてちょうど、この時、西堀さんが駿河精機の社長に就任する人事が行われ、さらに新たに生産改革のリーダーが2名入れ替わった。一人は自動車メーカーでの改善経験がある星川さん、もう一人は電子機器メーカーからの来た夏井さんだ。二人は西堀さんの下の生産改善室副室長に任命され手分けして改善活動を行っていった。ちなみに、この当時のこと星川さんは「現場はひどい状態で、とんでもない会社に来てしまったと思っていた」と語っているよ。

👨‍🦳:そして、本格的な駿河精機の改善に入っていく。のだが、やはり、一人の大きな抵抗勢力がいた。太田さんという現場リーダーの方だ。そうなると、ここで切断力を発揮するか本人に変化してもらうかしかない。

🧒‍;しかし、こういう時は1オン1でトップが話せば大抵変わりますよね。私の経験でもこういう方は、実力もプライドもあるのだが意固地になっているだけな場合が多い。本人はそんな風には全く思っていないと思うのですが、まわりから見るとですけどね。だが、現場のリーダー的存在が、野党になると嵐が去るのを待つまでの活動になるか(一時的な活動)、
進まないかのどちらかになりますね。

👨‍🦳;ああ、そこで、改善の先生、西堀社長、星川副室長は改善指導会の後、その現場リーダーと食事に行くこととしたんだ、そこで「腹を割ってしゃべれ」と話したそうだ。そこでその現場リーダーは「この改善手法はおかしい。これまでの生産方法で充分だ」という。そこで、西堀さんは「この三年感、新しい手法を試していない。良いも悪いもない。言える根拠はあるのか。新しいことをとことんやってもないのに悪いも良いもわかるわけがない。君が君の職場の強化の可能性を止めている」といった。そこでやっと、本人も自分が改善の足かせになっていることに気づいたそうだ。そこから駿河精機の改善はみるみる進んでいったという。

🧒‍:おお、ここだけでものがたりが賭けちゃいそうですね。わかりますね。そういう事件がないと改善の歯車ってあってこないのですよね。最初は皆が活動自体に違和感をもつ、違和感が表出して不満になってくる、それが蓄積させず言葉にさせる、それをトップとすり合わせ両者の考えを統合した活動が始まる。つまり、改善のトップと腹割って話すことになる。これで改善チームが、徐々にできてきますよね。

👨‍🦳;そうだな。しかし、ここまで現場リーダーに気を遣う企業もすごいけどな。アメリカならこういう社員は一瞬で首だろう。あと3年はかけすぎだと思うかもしれないが、こういう時はアドラー心理学のリフレーミングの考え方を適応して進んだということに注目すべきだな。

◆大変身とそれによる改革の躍進

🧒‍:やっとこさ改革の歯車が動き出したのですね。

👨‍🦳;そう。そして、同じようなことを並行して関西パークでも行っていったのだろう。全体の改善も動き出し、指定された工場でモデルケースを作っていくことにも成功していった。そうこうしている間に協力メーカー間でライバル意識が芽生え始めるという効果も出ていたそうだ。さらに、その中で駿河精機でも大きな変化が起き、抵抗勢力だった現場リーダーが自分でトヨタ生産の効果を確かめるかつ確かなものにするため、ミズスマシの役割を自分で買ってでて工場内を走り出した。万歩計を付けて毎日20キロほど歩くというっていぶりだった。(ミズスマシに関しては下記ノートに少し記載しています)

🧒‍;それはすごい・・。小さな変化の積み重ねが徐々に大きな波になってくるときの現象ですね。そこまで持ってくると狙いが常に実行される状態になりますね。

👨‍🦳;そんな中、副室長の星川さんと夏井さんは「改善の基本コンセプト」や「改善手順書」などを作り上げていった。そして、ミスミの協力会社すべて改善活動を浸透させていった。

🧒‍:モデルケースを作ってそこから改善を展開していくというストーリーが上手くできたのですね。ただ、基本は同じだとしても各工場で自分たちで考え基本を適応させていくという考え方自体を指導していったんだと思います。なんでもそうですが、モデルの咀嚼力(個々の工場への独自の適用)が横展開力ですからね。

👨‍🦳;でもミスミは面白いぞ。その全協力会社展開では、ミニ新聞を作ったり、すべての協力会社の経営者が集う会議を月に一度開いて成果と今後について話したりしながら全体の底上げを図っていったんだ。当然サプライチェーンでつながっているから1社の遅れが全体の遅れになるからね。その中で、通常機密事項である改善ノウハウもすべて開示していったそうだ。

🧒‍:そして、ミスミ全体として強くなっていったのですね。そして、「ミスミは商社だから生産のことは言われたくない」という協力メーカーの考えは消えていった。つまり、ミスミが生産をコントロールできるようになっていったことを意味しますよね。

◆ダイナミックな戦略へ自律性をつかむ

👨‍🦳;そう。そこなんだよね。これはただの生産革新を意味しているわけではないんだ。事業革新のメガトレンドを思い出してほしいが、「創る、作る、売る」の事業を速く回していく、つまり国際競争力を高めていくために弱点で生産が強みになったということを意味するんだ。それもパートナーのそれを築いた。ここで事業採掘をサイクルを自立的に戦略的に早く回すことができるようになったんだ。三枝さんが就任した8年経ったときだった。ここでミスミは商売の強さだけでなくものづくりの強さも念頭に置く組織になっていったんだ。そして、さらにリードタイム短縮の挑戦へ突き進んでいくんだ。うーむ。すごいね。戦略自体に生産をつなげていくという発想を実現させてしまうんだからね。それも8年もかけて地道にやっていくんだ。

🧒‍:なるほど。全体で生産の意味付け位置づけを考えるということですね。

👨‍🦳;そして、三枝さんはこの章の最後に下記の設題を投げかけているよ。ここで第6章も終わりだ。次回は第7章に入っていくよ。この本も残り7章と8章で最後になる。もうひと踏ん張りしていこう。

「会社改造」で取り上げる改革テーマには抵抗やサボりの症状がつきものだと述べた。あなたが本章から読み解く「改革への抵抗パターン」にはどんな特徴があるだろうか。本章と異なる抵抗パターンにはどのようなものがあるだろうか。あなたが経営者ならそれにどう対処するのか。三枝にとってこれは演習ではなく、彼が経営現場で答えを出すことを迫られたナマの課題である。」

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今回は6章の後半を解説しました。様々な現場の考え方、姿勢含む細かい課題を乗り越えながら生産を強みにしていった過程を簡単に解説しました。この革新が全体の経営戦略とつながっている。事業を高速で変化させていくことへの執着、そのための生産革新というストリーが勉強になりますね。次回は第7章に入り、オペレーション改革(システム改革)に入っていきます。今度は物流・バックオフィス側の改革ということになりますね。いよいよ後半に入ってきました。ぜひ、スキ・フォローお願いいたします!

なお、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて説明しています。

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