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【ザ・会社改造編8:努力の方向性〜原価計算 ABC分析を学ぶ〜】

本マガジンのこれまでの投稿は上記リンクに入っています。

本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回から第三章「戦略の誤判断を生む「原価システム」を正す」を解説します。

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◆少なくとも会計の基礎は必要

🧒‍:おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。今日は第三章に入っていこう。第三章は、「戦略のご判断を生む「原価システム」を正す」だ。

🧒‍:原価システムと言えば、前回出てきたABCということですね。ABCに行くには会計の基礎がわかっている必要がありますよね。

◆本当の利益ってなんだ

👨‍🦳;ああ、今回はABCについて解説していくが、最低限の会計知識はやっぱり必要だ。でないとイメージが出来ないと思う。(それでも実体験がないと難しいが)FA事業の改革がスタートしたころ最初に手を付けたのがABCシステムの導入だったのは覚えているな。前の章のFA事業部の改革では、さらっと流したがそれはあまりも重かったからだ。この章で独立して解説することになっている。早速だが、下記、本書から抜粋するが、下記はABC導入する際のやりとりだという。なぜ必要かが会話されている。

三枝:「長尾君ね、このチャートの横軸に書いてある営業利益率というのは、営業費用とか、ジスティクス費用などの間接費用を全部引いたあとの、本当の利益率のことなの?」

長尾「もちろんです。そうしないと事業部全体の営業利益率や経常利益率の数字と合いません」

三枝さん「間接費用の経費率は、全商品、同じ比率を使っているの?」

長尾さん「それに近いやり方です」

三枝さん「あのね、営業費用とか、ロジスティクスの配送料、あるいは宣伝などのプロモーション費用、商品のクレーム対応などにかかる人件費などは、商品によってずいぶん違っているのが普通だよ。だから、商品ごとに実態を反映した経費率を適用しないと、それぞれの商品の本当の利益率は見えてこない。競合に対する商品の強さもわからない」

長尾:「でも社長、うちの事業部の商品数は、数え方にもよりますが何十万点もあるので、商品ごとの間接費のかかり方の違いまで計算できません。そこで、まずは事業全体の出荷件数を合計して、たとえばカスタマー・センターの経費であれば、それを全出荷件数で割って出荷1件あたりの費用を出します。それを商品群ごとの出荷件数に掛けて、その商品群の間接費用にしています」

三枝:「ということは、ひとつの商品群では、すべての商品に同じ比率で間接費用を適用していることになる。だから、商品ひとつひとつの営業利益率が高いとか低いというのは、それぞれの商品の『粗利益率』に比例しているということだよね?」「君ね、粗利益の高い商品がすなわち『儲かっている商品』だと、どうして言い切れるの? 現実にはまるで逆のことがある」

🧒‍:ぎゃん。なるほど。確かにそうですね。比例費は確かにわかりやすいですが、経費の配賦は平均的にやってしま場合が多い。それが普通だと思います。本当はそれぞれの商品に明確に配賦しないといけない。製造のコストも同じですよね。そうでないと本当の商品別・顧客別利益はわからないですね。

◆ABC分析へのステップ

👨‍🦳:ああ、でも通常の会社は非常に多くの種類の商品がある。実際どうやって配賦していくかは大きな手間であり問題だ。総論は良いが各論になると本当に大変だ。下手に手を付けると泥沼にはまる。実際に長尾さんのチームもそうだったそうだ。何をしていいかわからず、頭がクラクラしたという表現を使っているよ(笑)。そして三枝さんのアドバイスをもらいながらステップを細かく刻んで達成していったんだ。それを図にすると下記だ。

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🧒‍:はい。

👨‍🦳;まずは

ステップ1:「前者の業務プロセスを整理し、各部署のアクティビティをとの関係は明らかにする。」

まず。顧客と商品の動きに注目するんだ。まさに仕事の流れ、業務フローだよ。注文から出荷に至る前での業務のリストアップが必要だ。当然製造業の場合、各プロセスの調査も必要だ。ミスミの場合も大変だったと思うが製造業の場合、ここに製造プロセスも含まれる。より複雑だ。

🧒‍:システムつくりの基本と変わらないのですね。すべての業務の洗い出しか。

👨‍🦳;ああ、ここは肝だね。ここの精度で結果が変わる。次だ。

ステップ2:勘定科目別経費とアクティビティの関係を分析し、コストドライバーを定義する。

ステップ1で「顧客と商品の動き」に注目したのに対し、ステップ2 では社内各部署で社員が何をしているのか、つまり、「社員たちの行動」に注目する。各々の人の活動が業務プロセスのどこに結びついているか整理していくんだ。例えばクレーム費用と考えた場合、営業やカスタマーセンター、ロジスティクスの社員も動く、この対応の人件費や経費も集計していかなければならない。ここも綿密な棚卸が必要である。

🧒‍:なるほど、このような分析を行っていけば、「組織上の部署」と「業務プロセス上の段階」での費用の流れがすべて関係づけられるのですね。しかし、想像するだけで、複雑怪奇・・。気が遠くなります。

👨‍🦳;ああ、そうなんだよ。これ、強いトップの意思がないと無理。そして、ABCで求められているデータには、ある程度、日ごろからとらえているものがある。だからまずは何とか役に立つ手持ちデータがはないかと探す。データがなければ後は自分たちで作っていくしかない。関係部署の協力が必要不可欠だ。

🧒‍:トップの強い意志がないと難しいことよくわかりました。

👨‍🦳;次だ

ステップ3:アクティビティごとの経費を出荷商品レコードに紐づける。

ここまでくると、活動単位でのコストが細かくわかっている状態になる。その活動は、どの商品にどの程度繋がっているかを見える化していくんだ。どの商品に対して、どの程度経費が掛かっているか充てていく作業だ。業務フロー・それに対しての費用がわかっているため、各々の費用がどの程度割合で、どの商品の為だったかを分けていけるんだ。

👨‍🦳;確かにここまでくれば、わかってきますが、ここでも決めごとが多いので完全に正しいコスト配賦ができるかどうか。。不安になりますね。だって、人は毎日毎日”この業務に何時間かけた”なんてメモっていないですもん。

👨‍🦳;そうそう。こういう場合は、“見えるようにしておく”ということが大事だ。こういう考え方で、配布したということが細かく細部まで確認できるようになっておけばいい。ただし、その全体を理解している、かつバランスが取れた人材が必要だ。今回はそれが長尾さんだったのだと思う。三枝さんが人を強調する理由もそこで、こうやってステップを理解したからってできるものではなく。そういう現場での“人の力”が必要なんだよ。その見極めが大事で、人がいないならば手を付けないほうがいいとも言っているように思う。はっきりは言えないからこそ、“いたからできた”と書いてあるんだと思うぞ。ここがミスミの強みでもあったのだろう。

🧒‍;なるほど。人ですか。そこに教育する三枝さんもいたというのもありますね。なんか、このあたりにABCを実現していくためのヒントがありそうですね。

👨‍🦳;ここまできて、やっとこ分析だ。

ステップ4:ABCを使って「損益分析」を行う。

商品へのコスト配賦が出来たら、分析だね。ここまでくれば、情報を並べて評価することができる。ミスミの場合も、粗利益40%程度もあって、高く儲かっていると思った商品が営業利益マイナス1500%大赤字であったりした。

🧒‍:マイナス1500%??ちょっとよくわからない数字になっていますね。

👨‍🦳;それと、ロジスティック経費や売掛金回収費用、情報システムも商品に配布してみると意外に大きな負担になっていることもわかったんだ。さらに顧客の分析でも新しいことがわかっていた。利益を上げている顧客と思っていたがそうではなかったなどだ。

🧒‍;でも、一度やりきるのもすごく大変ですが、どう継続させていくかはさらに重要ですよね。一過性ではどうしようもないですよね。

経営者の謎解き 
ABCを社内で経常的に使う試みはほとんどの企業が失敗している。 ABCの導入を阻む大きな壁は4つある。 ①導入作業が複雑、 ②精緻さを求めるほど、社員による時間報告など、隠れた人件費が高くなる、 ③業務フローの変化に合わせて ABCを修正しないと、間違った原価情報を流し続けることになる(陳腐化リスク)、 ④ ABCで得られた情報を社員が頻繁に利用できるように社内業務とつなげておかないと、 ABCは使われなくなる(形骸化リスク)。  

◆戦略思考の組織にするために

👨‍🦳;ああ、その通りだ。だから三枝さんは2つの手を打つことにした。一つは「戦略策定ツール」に落とし込むことで、「ABCから得られる情報がミスミでの戦略策定に不可欠なものである」という認識を一気に社内に広げた。もう一つは、FA事業部で造りこんだABCシステムをすべて事業部に水平展開し、全社員がそれを使いこなせる体制を作り上げることだ。

🧒‍;誰もが、使えるものにしていく、そして仕事のそのものにしていく。それ自体が戦略思考の組織になっていくということですね。

👨‍🦳;そう。三枝さんはそのために、社内に<ABCナビゲーター>というソフトを作るプロジェクトを立ち上げたんだ。誰でもできるようにそして、それを自発的に使って上から言われなくても自分の事業の健全性を判断し、自ら手を打っていくという経営者人材を育てていくものなんだ。

🧒‍:ものすごい構想ですね。

👨‍🦳;そう。このシステムの開発は、5年の歳月をかけたという。さらにこのソフトのコンセプトは、これまでのコンサルたちによる「精密の巨人」であるABCソフトを作るのではなく、「精密さと簡便さのバランス」「サボりを入れる」ことを重視したんだ。

🧒‍:そこがポイントになりそうですね。

👨‍🦳:ああ、だがその詳細は残念ながら書かれていないんだ。あまりにも個別事案ということだろう。実際自分自身で実践しながら学んでいけということなんだとう。ただ、5年もかけたというのは、三枝さんとミスミでも試行錯誤を繰り返しながら進めていったんだと思うぞ。経営人材教育も含めて進めていくというのもあると思う。時間をかけるということが必要だったと。

🧒‍;なるほどです。

👨‍🦳;今日はこれで終了だ。次回は、4章の「成長を求めて「国際戦略」の勝負に出る」を解説しよう。

🧒‍:よろしくお願いします。

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本日はここまでです。3章を解説しましたが、ABCのステップについて主に解説しました。戦略の精度の基礎になっていく非常に重要なポイントなんだと思います。ただ、やりきれないと本当に泥沼にはまっていくと思います。トップの強い意志と正確な知識と実現できるミドル人材の3つが揃わない限りなかなか難しいと思います。逆にこれが出来ていないと正しい戦略は作りにくい。このあたりが各企業が苦しんでいるポイントだと思います。さあ、どうしていくかですね。
さて、次回は第4章の解説に入っていきます。ぜひ、スキ・フォローよろしくお願いいたします!

なお、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

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