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ものづくり現場でアドラー14(終):「まとめ〜勇気と共同体感覚〜」

本マガジンのこれまでの投稿は上記に入れています。
これまで13回にわたって解説してきたアドラー編のマガジンですが、今回これまで記載してきたポイントを総括します。これを読んでもらえれば、本マガジンの大枠は理解できると思います。詳細は各投稿を見てもらえればと思います。

なお、本マガジンは、“もしも上司がアドラーだったら“を参考に記載しています。ぜひ原本購入し読んでみてください。より理解が深まると思います。audible もあります。

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ある工場に勤務する30歳になる若者紫耀(ショウ)の前に、アドラー心理学をマスターした上司の土良(ドラ)が現れます。まず、彼は上司からアドラー心理学が「勇気」と「共同体感覚」の二軸に成り立っていることを学びます。最初は何のことだか全くわかっていない様子です。

◆前半:勇気を手に入れる

この物語の前半は勇気を手に入れる思考を学びます。

◆できていないところに注目するのではなく、できているところに注目せよ。「正の注目」

まず、勇気とは何かから学んでいきます。最初彼は自分を追い込むことで自分を成長させるという思考を持っており、「自分のできないところ」を常に見て自分の心を痛めていました。しかし、上司から「できている部分を注目する」こと、「正の注目」を学びます。私たちも日々あると思います。ミスばかり自分で攻めてしまう。でも、できていることもたくさんあります。そこを見るということです。できていないところを見て、自分を鼓舞することを「ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるようなもの」と表現しています。

◆事実を多面的に見よ。「リフレーミング」「自己一致」

 しかしながら、どうしても失敗やできていない部分に目が行ってしまう。そんなことがあるかと思います。主人公の彼も同じでした。しかし、そんな時上司のドラさんは「「失敗」を“見ない”“忘れる”のではなく「失敗」を“見つめる時間”を減らすべき。そして、「失敗」ではなく「経験」として注目する時間を増やすことが重要なんだ。」といいます。これをリフレーミングとアドラー心理学ではいいます。失敗は失敗として、事実としてとらえる。だが、それは大事な経験であることも事実としてとらえる。そして、「経験」という事実に注目する時間を増やすということですね。さらに「否認」「抑圧」「歪曲」せず、ありのままを認める、そのまま見る。「自己一致」が必要であると学びます。これは言うは易しですが、心の訓練が必要ですね。

◆すべて、自分で決めている。「自己決定性」

「正の注目」、「リフレーミング」、「自己一致」で自分の心を整えながら日々の仕事をこなしていく紫耀(ショウ)君でしたが、仕事が山積になり、それをやらされ仕事だと認識してしまいます。やりたくない仕事であると自己一致させているわけです。そこで、また上司の土良(ドラ)さんが登場し、「そんなにやりたくなければ、やらなければいいじゃないか?」と示唆を与えます。そこで「やらなければ、評価が下がってしまう」と反論します。しかし、「“評価が下がるかもしれないからやる”ことを自分で決めている」といわれます。そして、どんなことでも「最終的にそれを受け入れたのであれば、受け入れることを決めたのは自分である。」と言われます。これをアドラー心理学では、「自己決定性」と呼びます。つまり、やりたくないと言いながらやることは、本質的には自分がやりたいことであり、すべて自分で決められることなのです。自分の思考の前提を変えていくということですね。アドラーも下記のように言っています。

「人間は自分自身の人生を描く画家である」

◆存在価値を認識せよ。「機能価値と存在価値」「自己受容」

心を整えようとしても、他者が成果を上げて自分が成果がでないとき自分は相手よりも劣っている。会社で評価されなければ「自分はダメダメだ」なんて思ってしまうことがあるかと思います。紫耀(ショウ)も同期に差をつけられそんな気分になっています。しかし、それは「機能価値」でしか自分や人を見ていないということなのです。「人は皆、無限の可能性があり存在自体に価値があることを認めることが重要」と上司に示唆されます。それを「存在価値」と呼びます。そして、「存在価値」を認めることは「自己受容」につながり、「自己受容」をすることで自己の芯ができる。そして、ゆとりのある判断をできるようになり、結果「機能価値」も向上すると説明されています。私自身これはその通りだと思います。本書の中でも、「機能価値と存在価値」「自己受容」の考え方は非常に重要なものになっています。これが出来ればだいぶ心が軽くなります。

◆後半:「共同体感覚」を感じる。理解する。

勇気の手に入れ方をこれまで解説してきました。もう一つの軸の「共同体感覚について」後半解説していきました。

◆他者を勇気づけよ。「共同体感覚」

紫耀(ショウ)君は勇気を手に入れて、自分自身の心の整えることを徐々にできるようになっていきます。そして、次に共同体感覚について学んでいきます。ある発表会の表彰式で、“自分を勇気づけてくれる同期”と“自分の勇気を挫く同期”二人に会います。そして、「相手を勇気づけるということは自分も勇気づけられる。しかも自分で勇気づけるより大きな効果がある」「自分は誰かに貢献できていると思うことで勇気は大きくなる。」と上司から学びます。その通りですよね。お互い貢献できていると思えると勇気を与えあうことになり、信頼も向上していきます。

◆どうにもならない相手の心をどうにかしようとしてはならない。「課題の分離」

相手を喜ばそうと努力するも周りからバカにされたり、感謝されなかったりということが主人公の周りで起きます。バカにされるというのは少し大げさですが、相手を喜ばす時、少し恥ずかしいという気持ちになりますよね。そこで、「課題の分離」という言葉を学びます。バカにするのも感謝しないのも相手の課題であって、自分の課題ではないと考えるのです。相手の課題をどうにかするということは不可能で、どうにかしようとすると余計にこじれます。(人に迷惑をかけるのは論外ですが)相手の感情とは割り切って、自分の信じる行動をすべきとアドラー心理学では言っています。

◆話を聞くのと受け入れるのは別である。「共感と同意の違い」「共感からの提案」

紫耀(ショウ)君はあるプロジェクトに参加することになり、メンバーで議論をします。ある提案をしたところ、ある同期から罵倒のような否定を受けます。本人は言い返そうとしますが、もう一人の同期が否定的なメンバーの話に共感し始めます。しかし同意はせず一呼吸置いた後、彼の提案を始めます。そして、その提案は紫耀(ショウ)と同じ内容なのにもかかわらず受け入れられていきます。このような場面は実際よくあると思います。強い意見はまず「共感」し、よく耳を傾ける。内容によって、そのまま「同意」または、別の意見を「提案」をすることが肝要ですね。これは「課題の分離」の応用です。ここでは、その「共感」自体が「共同体感覚」を生むとも言っています。

◆より大きな共同体の利益を優先せよ「永遠の視点」

紫耀(ショウ)君はある大きなコストダウンのチャンスを迎えます。しかしながら、どうやらそれを実行するのはコンプライアンス的にNGの可能性があるようです。そこで彼は、目の前の利益ではなく、より大きな視点での判断を行います。結果自分の目標は達成できませんでした。しかし、自分の良心にうそをつかない判断ができたようです。

◆信用と信頼の違いを理解する。「存在価値の再確認」

自分の良心にうそをつかない判断をして、結果目標未達であったことにより、会社からの評価が受けられず担当も変えられてしまいます。非常に落ち込みかつ怒りを覚える紫耀(ショウ)君に上司は「信用」と「信頼」の違いを説明し、信頼はゆるぎないことを伝えます。そして、もう一度心を整え活力を取り戻します。この信頼は「共同体感覚」に重要な要素になっていきます。

◆リーダーは部下の活躍を奪ってはならない「所属感と共同体感覚」「相手を信じ、自分信じて、頼る、甘える、任せる」

評価されなかったことをバネに挽回し、紫耀(ショウ)君は課長に昇進し、部署も変わります(IoT推進部課長に抜擢)。同期も同時に昇格するということもあり、ドラさんの企画で大規模のお祝いのグランピングバーベキューが行われます。そこで、紫耀(ショウ)君は準備を率先して頑張ります。しかしその横で部下も一所懸命頑張って会話がなくなってしまいます。そこで、上司から「彼らに必要なのは彼ら同士の対話であり、君との対話なのではないかな?それで信頼関係を作っていくのではないかな?」と指摘されます。そして、任せること、相手を信じることの重要性に気づき、「共同体感覚」について改めて考え直します。ドラさんからこれが最後のアドバイスとることを告げられ、そして、チーム作りを一から始めることを決意します。

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これで、アドラー編のマガジンを終了します。13回にわたりお付き合いいただきありがとうございました。誰しも、いろんな苦難が仕事で起こると思います。不運な時もあります。むしろ、うまくいかないことがほとんどですよね。そんな時、自分の心を整えるのに、自分のパフォーマンスを安定的にするのにこの考え方は役立つと思っています。私自身何度も救われました。
 今回は、個対個の中で使うアドラー心理学を解説しましたが、次回は、チーム全体に関する「心理的安全性」について、「世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法」を使って解説していきたいと思います。ぜひ、スキ・フォローをよろしくお願いします。

また、下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

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