無表情をほころばせた一瞬、仕事の意味を知る
心に残っている仕事
今から12年ほど前、私の働いているデイサービスに東日本大震災を体験された方の受入がありました。
まだ私がヘルパー4年目の出来事です。
先ずは、体験で、、、と
娘さんからの相談でした。
サービスを使われるのは、
花さん(仮名:70代後半)
娘さんは、花さんの事をこう話されました。
半年前の震災に遭う前迄は良く笑う母だった、、
なのに、笑うことが無くなった、、、
笑顔一つない、表情を変える事はなく
感情を外に出さ無くなった、、、と。
環境を変えることで、何か変わるかも!との一心で、東北で1人住まいをしてた花さんに、「こっちで一緒に住まないか?」と話し、自分の住まいに引取られて居ました。
娘さんは50代、家族も有り
旦那さまや、お子様を説得しての同居でした。
この状況をスタッフ一同共有し、花さんを迎え入れる体勢を考えました。
そして、花さんの初利用(体験)の日は、年に一度ある、デイサービスのイベントの日、と決まりました。
(丁度、良いタイミングであったので)
この日は、いつもとは違い、施設が開放され誰でも出入り自由。色々な体験コーナーやゲーム、食べ物も振る舞い、劇などもやる。
そんな、半分お祭り見たいなイベントです。
(地域の方にここを知って貰おう!イベント)
職員は、基本全員参加。
なんだったら、職員の家族(子供や旦那)も一緒に来て楽しんで下さい。といった感じです。
この日なら、花さんの家族が一緒に来て付き添い、様子を見る事が出来ます。
ダメだったら、そこで帰る事も出来る。
御家族様は、花さんが何をどう受け入れてるのか分からない、、、
と心配もされていました。
現に、このデイサービスの利用も、娘さが提案したら「うん」と頷いただけで
行きたいとも、行きたくないとも、はっきりとした本人の意思は分からない、、、と言う事でした。
スタッフも介護の経験は有りますが、あの震災を体験し、心の傷を抱えたままの方の対応は、誰もが初めてでした。
娘さんの「母が昔のように笑ってくれたら、、、」との言葉を胸に
とにかく、私達に出来る事はやってみよう!
と、当日を迎えます
イベントが始まって、人が集まってきます。
花さんも、家族に連れられやって来られました。つかさず見つけたスタッフが、近寄ります。
それに気が付く他のスタッフ
一気に、2.3人は駆け寄っていました笑。
「こんにちは!始めまして」
「来て頂けて嬉しいです!」
「こんにちは!こんにちは、、、、、、」
この時のスタッフ、元気いっぱいなメンバーです。
そして、《染め物体験コーナー》へと、案内します。娘さんから、花さんの好きな事はリサーチ済です。体を動かすゲームより、手芸など手先動かし出来る作品作りが好きとの事。
「花さーん、こちらへどうぞ!」
「待ってましたよ!」
「こんな柄のハンカチ出来るんですよ!」
「やってみますか?!」
わちゃわちゃ3.4人で囲っちゃってる
「・・・・・・」
花さん、座席に座られる。
ほぼ強制的な誘導(^.^;、スタッフ圧もありますが、それでも花さんは表情一つかえず、無言のまま、、、
本当にこんな感じなんだ、、、
普通なら、少しは回りを見回してみたりされるもんなのに、、顔の筋肉が何処も動かないまま、娘さんの横を歩いて来て座られた、、、
初めて会った花さん、娘さんの話されていた通り、リアクションはゼロでした。
横に居る娘さんは、落ち着いてみえ
「母さん、やってみる?」と改めて聞かれる。
花さん 無言で頷く
ここからは、染め物担当の私の出番
それにしても、回りの見守りスタッフの圧凄い(^_^;)笑顔だけども、、、
「始めまして、本当にいいですか?染め物で、、、、」
おっ!私の顔は見ないが頷いてくれた!!
私の緊張はMAXです。
反応もして貰えないと思っていたのに、反応して貰えた!上手に説明しなきゃ、、です。
「何色がいいですか?」
花さん・・・・・無言
あっ、慌てて絵具(のような物)を、数色手で持ち、花さんの机の前で広げ見せる。
すると、、、、選んだ物を指で指し教えてくれた。
「あっ、これでいいですか?」
・・・・無言
無言の時間はコワイ、、、
焦る私、間を開けずに
「これでいいですねっ」(ニコッ)
「じゃ、これで、、、次は、っと、、、」
と白いハンカチを用意しようとした時
上手く1枚が取れない
私は、独り言の様に
あっ?これ3枚?2枚?もぉ〜1枚だけ欲しいのにぃ〜
せっかくキレイに並べてたのに、グチャグチャにしちゃいましたよ花さん、、、なんてやってる、、、
その時、
花さん「フンッ」 娘さん「えっ?」
私「お待たせしました、、、次はこれに、、、」と説明を続けようとした時
娘「今、母 笑いましたよね?」
私「えっ?」
周りに居たスタッフ
「うん、今 フッ ってされた!!」
「一瞬表情か変わったよね!」
「あれ、、、笑い声ですか?」
「・・・・はい、確かに笑いました。
今迄、あんな事もなかった、、、
母さん・・・(母の肩を撫でる娘さん)
こっちに連れてきて、初めて母が感情出すの見ました、、、(泣)」
「すごい!花さん!」
「今笑ったの〜、もう一度見せてくださいよ〜」
・・・・・
周りのスタッフも、もらい泣き
その後 花さんは、無表情に戻ったままでしたがあの時、確かにほんの少しだけ笑ってくれた。
私はその時、何とも言えない感情になった。
自分達の行動で、1人の人が笑ってくれた。
そして、その家族様が涙を出して喜ばれている。
1秒にも満たない笑顔が、どんなに大切な事だったのか
その瞬間に、立ち会えた事がどんなに奇跡な事なのか
人の心が現れる、一瞬の表情
それが、誰かにとって、とても大切な瞬間かも知れない。
今回の出来は、この仕事をしているから出会えてた体験だと思い、改めてやってて良かったと思いました。
※今は、病気がありこの仕事は辞めてしまいましたましたが、今でも心に残ってる一コマです。
ここ迄読んで頂き有り難う御座います🍀