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9.人生で初めてお花をプレゼントした話

花は、受け取ってもらったときに、一番輝く

人生で初めて、
好きな人のために
フラワーショップでお花を買った

ドイツ語ではGermini,
日本語ではガーベラと呼ぶらしい
ドイツ人の生態学者から名付けられたとか

向日葵にも似た、
オレンジと黄色のその色味は
「明るい」の一言がとてもよく似合う
あの子にぴったりだ


花の人生は、とても短く、そして儚い
でも咲き誇るその一瞬は
この世の何よりも美しい
何百年も何世紀も前から
地球と共に繁栄してきた植物たちが
今ではデートの代名詞として
時には悲しく、時には嬉しい、
思い出の一幕を担い、彩っている

そんな大役として選ばれ
自分のもとに渡ったガーベラの4輪
お花屋さんの人に聞くと、
「うちのお花は1週間の保証があるよ」
もっともっとこの状態が続けば良いのにな、
なんて最初は思った。

人生で初めてのフラワーアレンジ
長さを調節するために茎を切って
少しはぐれた花びらを取り除いて
紙で包んで
テープを貼って
紐を結んで
一緒に渡すチョコレートと
小さなメッセージカード
クラフト自体
何年ぶりか分からない

日本では
付き合ってもない関係でお花を渡すなんて
聞いたこともない
驚くだろうか
困惑されるだろうか
それとも、
喜んでくれるだろうか
少なくとも
オモチャのバラより
あなたには本物のお花のほうが
ずっと似合っている
何も言われなかったけど
きっと不細工な完成度だったに違いない


それでも当日、相手の手に渡り、
嬉しそうに持ってくれている
明日とか明後日とか、
1週間後には枯れてしまうかもとか
そんなことは関係ない
あの一瞬
あの時間
ガーベラを手に話すその子は
自分が生きてきた人生の中で
断トツ一番の笑顔を見せてくれていた


それだけでいい、それだけで
ガーベラには花として
凛として開花した花としての価値
そしてそれ以上に
あの子に一番の笑顔を届けてくれたこと
それだけで100%以上の価値がある

A thing isn't beautiful because it lasts.
「続かないからこそ、美しい」

映画
『アベンジャーズ: エイジ・オブ・ウルトロン』のラストシーン
人工生命体であるヴィジョンが
人類の愚かさを憂る一方で
儚く散る人類と
生命の美しさを語る

自分が1番好きなセリフだ。
終わりがあるからこそ、美しい。
まさに花であり、恋愛であり、人生でもある。

直訳すると
「続いてしまうものは美しくない」
続くというのをどの程度の期間なのか
定義によって意味は様々だけど

それでも、世の中の殆どの物事は有限
セミの命は1週間
自分のマスターは2年
人の一生は長くても100数年
人類だってせいぜい約500万年
地球だって大体100億年くらいで
いずれ終わりが来る


好きな人に、お花をプレゼントする
受け取ってもらうその瞬間に
一番綺麗に咲き誇っていてさえくれれば
例え1週間後に枯れようと
その一瞬の栄光を
渡した自分も、受け取ったあなたも
決して忘れないだろう

その時になって初めて
この言葉の深さを理解したような
そんな気がする


花よ、
俺のもとに来てくれてありがとう
そして、お花を受け取ってくれて
自分の気持ちと真剣に向き合ってくれて
ありがとう

花は枯れても
自分の想いは枯れない
まだまだ100%の満開を待ちながら
日々想い続ける

いずれ終わりが来るからこそ
美しいのかもしれない
そう分かっていても
この気持ちを燃やし続ける
きっといつか見る
満開の日を、
振り向いてもらえる
その時を待ちわびながら

ここで1曲

Back Number: ささえる人の歌

水辺で座って
腰が曲がりそうになるまで
お互いの過去の思い出を
シェアしあった時間
好きなアーティスト、部活、家族の話
バックナンバーは
恋愛ソングも中高生向けで良いけど
それと違うテーマの歌も好き

「元気で毎日暮らしてますか
朝は起きられているのでしょうか
野菜もキチンと食べていますか
つらい思いはしてませんか」

家族と離れて外国で暮らす
弱冠24歳の自分たちには
その歌詞が痛いほど心に響く
実際親はこんなこと言わんやろうけどね
なんて笑いながら
口ずさみ始めた
2人の日本人の小さな歌声が
ドイツのとある水辺に漂う

とても美しい風景と
幸せな時間
そして
素敵な思い出

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