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【参加型ワークショップ②】近藤貴馬氏×2㎜ずらして考える会

こんにちは、グローカルセンターインターン生のべるです🔔
2024年9月7日に、ラーニングイノベーションプログラムの参加型ワークショップ②を実施しました。

このプログラムでは、高校生、大学生、社会人の垣根を超えた多様な背景を持つ参加者が、月1回程度×6ヵ月間のプログラムで相互に学び合い、共創・実践する機会を通して、「学ぶ力」、「学びをデザインする力」を身につけます。公益財団法人トヨタ財団2023年度イニシアティブプログラムから助成を受けて実施しています。

▼【参加型ワークショップ①】の様子はこちら▼

本プログラムの目指すサイクル

本プログラムでは、キックオフの後、ゲスト講師を交えた参加型ワークショップが3回続きます。今回は、その第2回目で、株式会社Q'sメンバー、本職は創業およそ100年の八百屋、西喜商店の四代目の近藤貴馬氏をお招きしました。

近藤さんは大学卒業後、大手企業に勤めていましたが、東日本大震災などをきっかけに「地域貢献」に興味を持ち、実家の老舗青果店「西喜商店」の四代目となりました。八百屋として活躍する傍ら、フードロス対策プロジェクト「さらえるキッチン」を主宰し、また京都オーガニックアクションでの活動など外部プロジェクトにも多く参画されています。

近藤貴馬氏

〇チェックイン

今回、近藤さんが「八百屋」を営んでいることにちなんで好きな野菜をイメージした服装で今回のワークショップに参加してしてもらい、何の野菜をイメージした服装なのか共有しました!

チェックインの様子

【チェックインの内容】
1.呼ばれたい名前 2.なんの野菜をイメージした服装なのか
3.今日期待していること
【チェックインの様子】
▼今日期待していること▼
・フードロスについてあまり考えたことが無く、新しい領域の話をできることが楽しみ
・普段生活をしていて、八百屋さんの話を聞く機会は無かったので、どんな話が出てくるかわくわくしている。
・最近「フードロス」に取り組む企業が増えてきて身近になってきているから、どんな対話ができるか楽しみ。
・当たり前に食べている「野菜」。そんな身近な物を通して何に気づくことができるのかを知りたい。

〇八百屋の観点で起こっている「フードロス」とは?

今回のワークショップのゲスト、近藤さんより「市場を通した」青果流通のシステムとそこで発生している「フードロス」についてお話していただきました。

▼現在の青果流通

「西喜商店」は京都中央卸売市場の場外に位置しており、近藤さんは毎朝市場から野菜を仕入れています。そこで、農家・農協から出荷された作物が中央卸売市場を介して消費者に届くまでのルートを説明していただきました。

現在の青果の流通ルート

大まかに青果流通を見ると、出荷者→卸売市場→小売業者など→消費者というルートになっています。しかし、「卸売市場」の部分を細かく見ると、卸売会社→仲卸業者という細かい流通ルートが出てきます。農作物は全て卸売会社が管理していますが、直接小さい小売店とのやり取りをすると業務量が膨大/煩雑になってしまうため、小売店との中継役を担うのが仲卸業者という関係性です。

一見、とても上手に働いているこの流通システム。しかし、法律や業者間の力関係により、「フードロス」という課題を抱えていました。

▼青果流通における「フードロス」

青果流通における「フードロス」は大きく分けて出荷者仲卸業者の2か所で起こっています。

【出荷者で起こるフードロス】
農業の性質が大きく関わっています。農業は自然との共存であるため、種を蒔いた分だけそのまま収穫できるわけではないので、余分に野菜を栽培しています。しかし、天候が良好で豊作の年は売りすぎてしまうと、流通量が増え、個々の価値が下がってしまうため仕方なく出来上がった野菜を廃棄・肥料として活用するしかない状態に陥ってしまい、「フードロス」が起こってしまいます。ただ、出荷者で起こるフードロスは、自然との兼ね合いであることや野菜として出荷できなくても肥料として活用することができるため「フードロス」としてではなく、ある程度は「生産コスト」として受け入れられています。

【仲卸業者で起こるフードロス】
青果流通の仕組みが大きく関わっています。現在、小売店は仲卸業者に事前注文をして届けてもらうという形が主流になっています。しかし、現在の流通制度上、出荷者からは事前注文以上の過剰な野菜が卸売市場に流れ込んできます。そのため、事前注文分の野菜は売れるのですが、それ以外の過剰分の野菜は売れ残ってしまいます。小売店からすると過剰分の野菜は必要でないため、そのまま仲卸業者のところで売れ残った野菜が留まってしまい最終的には廃棄するしかない状態に陥ってしまい、「フードロス」が起こってしまいます。廃棄処分となった野菜は出荷者で起こる「フードロス」とは異なり焼却処分にしかならないため、仲卸業者で起こるフードロスは社会にとって直接的なダメージを受けてしまいます。

近藤さんは特に「仲卸業者で起こるフードロス」に直面し、青果流通における「フードロス」をどうにかできないかを考え、活動されてきました。

▼「フードロス」と「フードウェイスト」

今回のテーマである「フードロス(food loss)」についての理解を「フードウェイスト(food waste)」と混同している人が多く、まず、二つの言葉の違いについて整理しました。

【フードロス(food loss)】
全体の流通を踏まえた上での食品のロスのことを指す。
【フードウェイスト(food waste)】
消費者やレストランで発生するもったいない食品の扱い方。

みなさんは、普段よく耳にする「フードロス」。混同されがちな「フードウェイスト」と区別して理解できていましたか?実際私は「フードロス」と「フードウェイスト」を混同して理解していたことに今回の話し合いを通して気づかされました。
このことを踏まえた上で、2㎜ずらして考える会では「フードロス」について考えていきました。

〇2㎜ずらして考える会

▼2㎜ずらして考える会とは?

「普段見ている物事や景色を2mmずらして考えてみよう!」というコンセプトで生まれた対話の会です。グローカルセンターの当時インターン生だった三谷さん(現在のスタッフ)とMeikaさんの「お金ってなんだろう?」という問いからスタートし、これまで様々なテーマが話し合われてきました。参加者は普段の生活の中で感じている違和感や悩み、人に共有したい知識、人と議論したいテーマなどを持ち寄って、普段の視点を2mmずらして考えながら、話し合います。

今回は、「フードロスを削減するには、どうすれば良いか?」というテーマで話し合いました。今回は、誰も明確に回答を出すことができない「社会課題」を取り扱うにあたって、必然的に多面的に物事をとらえ、思考することができるジグソー法を活用しました。

▼ジグソー法はどう進むのか

ジグソー法の進み方

ジグソー法では、参加者全員に何種類かの立場が振り分けられます。はじめは、その振り分けられた立場の人同士で話し合い、自身が割り当てられた立場について思考を深めていきます。その後、一つのグループにそれぞれの立場の人が集まることによって、様々な視点から対話ができるようになります。結果的に、グループ全体で多面的に思考ができている状態になっていきます。

今回のジグソー法を活用したワークショップでは、A「野菜農家」B「小売店(スーパー/八百屋)」C「飲食店」D「消費者(一人暮らしの20代)」E「消費者(4人家族)」の5つの役割に分かれてスタート。
今回のRound1・2ではそのうちのいくつかのグループの対話をお届けします。

▼Round1

【Bグループ「小売店(スーパー/八百屋)」】
はじめに小売店は青果流通ルートにおいて、どのような立場の人に影響を与える事ができるかという事を確認していました。その後、小売店が影響を与えられる範囲で「フードロスを削減するには、どうすれば良いか?」というテーマへの解決策を考えていきました。

〇仲卸業者で売れ残った野菜をスーパーが多く買い取り、「セール」などで安く売りだすことでより多くの野菜が購入されるのではないか。

〇余ってしまった野菜を仲卸業者から買い取り普通のスーパーが多く販売しても利益は出ない。しかし、小売店(特に地域に根差した八百屋)は契約している小学校や幼稚園などにお願いをして活用してもらう事はできないか。
→今まで契約をしている所でなくても、子ども食堂などできるだけ安く食材を手に入れたい会社と契約をし、確実に必要なところへ安く渡せるようにしていけばいいのではないか。

Bグループでは、仲卸業者で売れ残ってしまった野菜を小売店が買い取り、どうにかして消費者の元へ届けることはできないのかという視点で話し合いが進んでいました。

【Eグループ「消費者(4人家族)」】
はじめに、4人家族(父、母、子供二人)がどのような家庭なのかを想像し、その家庭ならどのようにして「フードロス」を削減していけるのかを話し合っていきました。

〇今まではきれいな野菜ばかりを選んでいたけれども、野菜で店頭に並んでいるものであれば、どのような物でも食べられるものだし多少形が悪かったとしても買うという意識があったら食品ロスは減ると思う。
→しかし、それでも子どものいる家庭であれば、子どもにできるだけいいものを食べさせたいのではないか。

Eグループでは、消費者として考えがちな「フードウェイスト」と分けて思考するのに苦しみながらも、どうしたら「フードロス」を削減していけるのか、またどのような「フードロスの対策」は受け入れられないのかという視点で話されていました。

▼Round2

【Bグループ】
BグループはRound1では農家、小売店、飲食店、消費者(4人家族)のグループで話し合っていた人が集まっていました。まず、Round1ではどのような提案が出てきたのかを共有しあった後、それぞれの立場を踏まえた上でグループでの「フードロス」をどう削減するかを考えていきました。

〇農家のグループでは、規格外野菜をもっと活用すれはいいという提案が出てきていた。それをレストランや小売店で販売することができないのだろうか。
→確かに、規格外野菜を活用すれば「フードロス」を抑えることができるかもしれないけれども、飲食店や小売店では消費者への信用問題になってしまうのではないか?
消費者の意識が変われば、飲食店や小売店が積極的に規格外野菜を活用していけるのではないか。

Bグループでは、農家、小売店、飲食店、消費者それぞれの立場から出てきた意見に対して、別の立場の人からすると不利益になってしまう点を指摘しながら話し合っていました。

【Eグループ】
EグループはRound1では農家、小売店、消費者(一人暮らしの20代)、消費者(4人家族)のグループで話し合っていた人が集まっていました。ここでは、別の立場の消費者がいたので、そこでどのような話し合いがあったのかを共有してから話が始まりました。

〇今まで生活をしている中で、フードレスキューのアプリを見かけたことがある。
→確かに一人暮らしで節約をしたい人からすると賞味期限が近づいていても安く手に入るのはうれしい
→しかし、4人家族からすると子供に捨てられる直前の物は口に入れて欲しくない。ただ、規格外の野菜は大丈夫だと思っている。
→それなら、欲しいものに合わせて売れていない野菜を手に入れられるアプリがあったらいいのではないか。それを配達で手に入れられたらより良いと思う。

どちらのグループも様々な立場(多面的な立場)から思考することによって、社会課題の解決策を考える話し合いが現実を無視して進まず、具体的なイメージを持った上での解決策が生まれていたと感じました。

▼Round2の共有&近藤さんからのフィードバック

共有の時の様子

インターン生のみさきちゃんが今回の共有&近藤さんからのフィードバックの様子をグラフィックレコーディングでまとめてくれました!

共有&近藤さんからのフィードバックのグラレコ

〇振り返り

▼参加者の感想(同志社大学 政策学部 西村帆香さん)

「フードロスはあった方が国民は幸せ」という近藤さんの言葉がとても印象に残っています。これまで私は「フードロスは悪いこと」、「フードロスはなくすべきもの」という視点からフードロスについて考え、学んできたので、近藤さんのお話は私のマインドセットを問い直すきっかけとなりました。食べ物がないことで国民が飢えるよりも、フードロスはあった方が良いという「必要悪」としての見方を聞き、物事には良い面と悪い面が表裏一体であることを改めて実感し、「フードロスの何が問題なのか」を自分の中で具体的に再理解する必要があると気づかされました。

また、近藤さんのお話を聞いて、流通システムの中で発生しているフードロスに興味を持ちました。私は普段、祖父の畑から野菜をもらっているため、「商品」としての野菜について考える機会があまりありませんでしたが、野菜の価値を保つために捨てざるを得ない野菜が存在し、その中には見た目が悪い野菜だけでなく、作りすぎたために捨てられるものもあるという話を聞き、驚きました。流通システムの中でも、消費者に近づけば近づくほどフードロスが起こっているなと感じました。

▼参加者の声

〇指定された立場になりきることで、本来その立場の人がどう考えているのだろうかをイメージしながら、話を進めることで自身の立場だからこそ出てくる問いを話し合いに出すことができた。

〇自身の立場で勝手に置いていた他の立場からすると不利な前提を異なる立場で考えていた人と話すことによって発見できた。

〇それぞれの立場で課題があり、見え方も異なる事を知った。自身の立場の意見を一方的に主張するだけではまとまらないことに気づかされた。

〇自分とは異なる立場に立つことよって自分ごと化しやすいと気づくことができた。それによって、何を明確にして話し合いを考えていかないといけないのかを考えることができた。。

〇普段自分が考えないような考えが出てきた。一つの立場で考えると、こうしたら解決できるでしょうと簡単に言えるけれど、実はその案が実現するには各方面でいろいろな問題が出てくるということの方が多かった。その問題について、自分とは異なる立場で考えると問題解決が可能になるような具体性が増していくと思った。

ワークショップの振り返り内容より抜粋

▼インターン生べるの感想

今回は正確な答えが無い問いを学ぶ場を体感するワークショップでした。その中の手法として、何もない状態から個人、グループで考えるのではなく、「ジグソー法」を活用し、それぞれの立場を作ることによってグループ単位で自然に「多面的な思考をする」状態が作りだされていたと思います。

今回のワークショップで作られた場で「フードロス」についてどのような学び(考えの変化や知識の変容)があったのか、「どこで」「なぜ」その様な学びが生まれていたのかを俯瞰して考えてみると、今回の社会問題のような「答えの無い問い」について学ぶ場を作る上で「ジグソー法」という手法以上にどのような意識が重要であるかを考えるいい機会になったと感じました。

〇終わりに

ワークショップ終了後、八百屋になる近藤さん

ワークショップ終了後には、近藤さんが仲卸業者で売れ残っていた野菜を売っている姿が。
こんな光景が街中であふれかえったら「フードロス」もなくなっていくのかもしれませんね。

次回は10月5日の参加型ワークショップ③村田和代先生をお呼びし、多様な考えをぶっちゃけ合います。
どの様な学びがあり、学びの場が生まれるのか楽しみです!

執筆者
グローカルセンターインターン生
鈴木優太

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