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[解説と設問を発表]「クソどうでもいい仕事」が増えるのはなぜか?【英語で学ぶ未完の資本主義】第11回2/2(日)20時@オンライン
2024年9月から始まった講座&ワークショップ「英語で学ぶ未完の資本主義」。第11回はデヴィッド・グレーバー「ブルシット・ジョブ: クソどうでもいい仕事の理論」での主張をもとにグローバル資本主義と仕事・労働の価値との関係性について英語で議論。
2024年9月から始まった「英語で学ぶ未完の資本主義」に関するワークショップの2025年2月のお知らせです。2025年2月2日(日)夜20時@オンラインで開催するワークショップ第11回は書籍「英語で理解する未完の資本主義」で、文化人類学者であり、アナーキストの活動家でもあるデヴィッド・グレーバー教授が「ブルシット・ジョブ: クソどうでもいい仕事の理論」について述べている第3章の前半のセクション「無意味なBS職~」(P66-75)を使い、英語で議論します。設問はこの記事の以下のセクションの内容も踏まえた形で設定しますので、書籍の購入がまだの方も、ぜひご参加ください。このワークショップの解説と設問を発表します。
「クソどうでもいい仕事」が増えるのはなぜか?【英語で学ぶ未完の資本主義】第11回2/2(日)20時@オンライン
20018年に発表後、世界的なベストセラーとなった「ブルシット・ジョブ: クソどうでもいい仕事の理論」。著者のデヴィッド・グレーバー教授は2020年に59歳の若さで急逝しましたが、異色の研究者としても有名でした。亡くなった当時は英国のThe London School of Economics and Political Science の人類学の教授でしたが、2005年まで8年近く教鞭を取っていたイェール大学から契約更新を拒まれ、その後、英国に移住しています。イェール大学はその理由を明らかにはしていませんが、在職当時、グレーバー教授は世界各地で行われていた経済人が集まる国際フォーラムで、グローバル資本主義に対する活発な抗議活動を行っていました。
その中でも、最も有名なものが、2011年の「ウォール街を占拠せよ(オキュパイ・ウォールストリート)」運動です。「私たちは99%だ(We are the 99%)」 のスローガンは、グレーバー教授の言動から生み出されたともいわれており、彼はこの運動の理論上の指導者でもありました。
反格差社会デモ(ウォール街占拠運動)
[Occupy Wall Street ; OWS]
この運動は、2011年9月17日、米国の「富の象徴」であり、世界の金融の中心地であるニューヨークのウォール街で自然発生的に起こった「1%」の超富裕層に対する格差是正のための抗議活動です。この運動がもたらしたその後の影響は、以下の短い英語記事で紹介されています。
We Are the 99 Percent
これらの活動からも分かるように、グレーバー教授は彼の文化人類学の研究においても、従事する社会運動においても、現在の著しい社会格差を生み出した資本主義、そしてそれを支えてきた権力構造や社会の現状に対して、鋭い批判を加えてきました。「ブルシット・ジョブ: クソどうでもいい仕事の理論」はそのような彼の研究活動の中で、一般の労働者から集めた様々な「クソどうでもいい仕事」の事例を分析・評価し、「労働の価値とは何か」を問いかける作品になっています。
ブルシット・ジョブ: クソどうでもいい仕事の理論
デヴィッド・グレーバー 著 , 酒井 隆史 訳 , 芳賀 達彦 訳 , 森田 和樹 訳
以下は英語版の著書の紹介です。
Bullshit Jobs: A Theory
By David Graeber
この作品の内容については、以下のフォーブスの記事が詳しく紹介しています。
37%が仕事の意義を感じない「Bullshit Jobs」 人類学者が明かす衝撃 | Forbes JAPAN
1930年に経済学者のジョン・メイナード・ケインズは20世紀末までには技術の進歩により、先進国で週15時間労働が実現すると予想したそうです。しかし、現実にはそうならず、生産現場での労働は激減したものの、いわゆるサービス業及び事務職は増大を続けています。結果として、労働者の4割近くが「自分の仕事は世の中に意義のある貢献をしていない」という調査結果が複数の国で発表されるに至っています。さらに問題なのは、パンデミックの時に明らかになったように、必要不可欠な仕事をしている人が、低賃金に悩まされている一方、「どうでもいい仕事」のほうが、高給だったりすることです。
私が、この議論の中で、本来は「不要な仕事」であるべきなのが、日本では派遣産業やアウトソーシング産業が行っている仕事なのだと思います。かつては、多くの労働者は、直接働く企業から雇用され、中間業者に給与を「中抜き」されることは、ほとんどありませんでした。いまや、経済の「効率化」のために、それが必要なのだ、と信じ込まされていますが、そのために労働者がどんどん貧しくなり、日本経済が疲弊していったことを忘れるべきではないと思います。
あなたは、グレーバー教授の言う「クソどうでもいい仕事」について、どう思いますか?一緒に考えてみましょう。
日時: 2024年2月2日(日)20時~21時30分
場所: オンライン
定員: 10名程度まで
費用: 見学のみ: 500円、初回参加者:800円~
【チケット】
チケットの申し込みは以下のYahooチケットサイトから、または銀行振り込みでお願いします。
「クソどうでもいい仕事」が増えるのはなぜか?【英語で学ぶ未完の資本主義】第11回2/2(日)20時@オンライン
【銀行振込での申し込み】
振込用紙は以下のサイトからダウンロードお願いいたします。
このワークショップの設問は参加申し込み者、サロン会員、有料ニュースレター購読者及び後日発表するnote記事購入者にのみ送付します。過去の【英語で学ぶ大人の社会科】ワークショップと同様の設問を設定しますので、以下のマガジンの2020年4&5月の記事(設問を公開しています)を参考にしてください。
【英語で学ぶ大人の社会科】世界の知性が語る現代社会
【未完の資本主義】
2019年に出版されたインタビュー集『未完の資本主義』。その特徴は、現代社会で「知の巨人」たちと呼ばれる気鋭の識者7人に、「テクノロジー」と「経済」の観点から今後の資本主義の行く末について尋ねる内容となっています。
未完の資本主義:テクノロジーが変える経済の形と未来
今回新たに、この書籍の英語版の内容と関連記事について月2回のペースでワークショップを開催していく予定です。以下、それらの識者のラインナップです。
◆ポール・クルーグマン(ノーベル賞経済学者)――我々は大きな分岐点の前に立っている
◆トーマス・フリードマン(『フラット化する世界』著者・NYタイムズコラムニスト)――「雇用の完新世」が終わり「人新世」がはじまる
◆デヴィッド・グレーバー(文化人類学者・ウォール街占拠運動の理論的指導者)――職業の半分がなくなり、「どうでもいい仕事」が急増する
◆トーマス・セドラチェク(『善と悪の経済学』著者・チェコ共和国経済学者)――成長を追い求める経済学が世界を破壊する
◆タイラー・コーエン(ジョージメイソン大学教授・経済学者)――テクノロジーは働く人の格差をますます広げていく
◆ルトガー・ブレグマン(ジャーナリスト・歴史家)――ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う
◆V・M=ショーンベルガ―(オックスフォード大学教授・ビッグデータの第一人者)――「データ資本主義」が激変させる未来
英語版の書籍はこちらです。今後、参加を希望される方は、以下の書籍を購入してください。特にグローバル経済について学びたい方に、うってつけのワークショップです。
英語で理解する未完の資本主義
「インタビューの英語書き起こし」「日本語訳」「用語解説」「7人のインタビュー音声」をまとめた、「英語を学びながら、英語で学べる」1冊です。英語を使って勉学・仕事をしたり、最先端の知に関心のある人におすすめの内容です。
【解説】
グレーバー教授は『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の著書の中で、「エッセンシャルワーカーなど、主に対人サービスを提供するような、社会的価値がある仕事をしている人たちの賃金が低いのはなぜなのか」、私たちが、これまで当然と考えてきた「仕事の価値」に疑問を投げかけています。
現代社会において、私たちは、金融やコンサル業務、STEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)などの仕事は、それらの希少性、専門性、すなわちその仕事の遂行を可能にする職業スキル獲得のためにかけた時間や費用に対する見返りとして高い報酬を得ているのだ、という説明を受けてきました。また、リスク、特に労働安全性に関する危険度の高い仕事(例:原発の作業員など)も、それを補償するために給与は高いのだ、という議論もあります。
しかし、パンデミックは、私たちが持っていた「仕事の価値」に対する常識を覆した感があります。一方、1980年代くらいから、3K労働と呼ばれる「きつい、汚い、危険」の頭文字からとった、リスクが高く誰もがやりたがらない低賃金の仕事という概念が登場しています。このような仕事は、英語では、しばしば「shit jobs」と呼ばれており、この類義語の「McJob(マックジョブ:マクドナルドなどのファースト・フードチェインの仕事)」は、スキルが殆ど必要なく、昇進の機会もほとんどない低賃金の仕事、として認識されてきました。
McJob
しかし、賃金については、特に日本の場合、必要とされるスキルがほぼ同じ職種でも、業界間で大きな差があるのが現実です。また、同じ職種でも、男女間にも大きな差があります。いわゆる男女賃金格差(gender pay gap)です。実は、報酬が極端に高い仕事、特にCEOなどが受け取る高報酬に対しても、以前出席した公開講義で、社会学の権威、アンソニー・ギデンス教授は、会場からの質問に答えてその正当性に疑義を呈していました。報酬、特にトップマネジメントのそれに関しては、多くの研究が発表されています。
Who Gets the Lion's Share? Top Management Team Pay Disparities and CEO Power - Patrick L. McClelland, Tor Brodtkorb, 2014
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/030630701403900404?icid=int.sj-abstract.citing-articles.217
グレーバー教授は、「職場にひそむ精神的暴力や封建制・労働信仰」を職業による賃金格差の根源だ、と著書の中で分析しています。
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