ニューヨークの女性弁護士は超コンサバ!日米比較でわかった「日本人女性のオシャレに足りないもの」:『Precious.jp』インタビュー掲載
※本記事は『Precious.jp』 3月15日(2018年)日野江都子のインタビュー記事からの転載です。
アメリカのドラマ『SUITS(スーツ)』の女性弁護士にして事務所のボス、ジェシカ・ピアソンは、ベーシックなスーツ姿だけでなく、モダンなワンピースや特徴的なディテールのジャケットなど、さまざまなスタイルを披露し、本ドラマを観ているキャリア女性から「着こなしの参考になる」という声が相次いでいます。
では実際に、法律の世界に身を置くニューヨークの弁護士たちは、どんなスタイルに身を包んでいるのでしょうか? 信頼を旨とする人たちの装いは、私たちにとっても「ここぞ」という場面、たとえば重要な会議やプレゼン、海外からのお客様との会合といったときの参考になりそうです。
そこで世界のエグゼクティブのプレゼンスやスタイルを熟知する、国際イメージコンサルタントの日野江都子さんにインタビュー。
日野さんはニューヨーク在住で、日本・米国・ヨーロッパを中心とした通算数千人の企業エグゼクティブや政治家をはじめとした、ハイプロファイルなクライアントのコンサルティングを手がけています。その日野さんから見たニューヨークの弁護士スタイル、そしてそこから「日本の40代・50代女性が学べること」をうかがいました。
■ニューヨーク流「弁護士スタイル」とは?
まず「ニューヨークの弁護士の服装」と聞いて、あなたはどんな姿を想像しますか? もちろん弁護士といってもいろいろな人がいますが、ラグジュアリーブランドアイテムをいくつでも買える金銭的な余裕はありそうだし、『SUITS』のジェシカ・ピアソンのような人が、実在してもおかしくないのかもしれません。
でも日野さんによれば、そもそも欧米ではドレスコードや、立場や目的、仕事の文脈にふさわしい装いの方向性がはっきりしているので、弁護士のような職種ならなおさら、仕事着は非常にシンプルでかっちりとしたトラディショナルだそう。
男性のスーツスタイルに準じて、色は紺やグレーのダークトーンで、形はすっきり直線的なスーツが中心です。男性と違い、カラーレスジャケットなど多少エレガントな要素や、素材の選択肢などのバリエーションはややあるものの、あくまでベーシックの範囲内。
アクセサリーも控えめで、華美にしないのが一般的だそうです。たしかに(これもドラマですが)『Sex and the City』の4人の中でも、一番固めのスタイルなのは弁護士のミランダでした。
ニューヨークはファッションの一大拠点ですが、経済の中心でもあり、金融業や伝統的な大企業が集中する、保守的な都市でもあります。そのため、弁護士のような固めでプロフェッショナルな職業の人の装いも「米国のほかの都市に比べて特にコンサバティブ」と日野さんは指摘します。でもそれだけに、世界中どこでも通用する威厳のあるスタイルが確立されているのです。
■日本人女性は「お洒落」、でも仕事にふさわしい服装かというと…?
実は、日本人女性は一般的なアメリカ人に比べて見た目により気を使っていて、「おしゃれ」「かわいい」と評されることも多いのです。が、それは仕事のスタイルという意味では、あまりよいことではないと日野さんは言います。
日本で手に入れやすい服は、一見ベーシックなように見えてもトレンドが多分に加味されており、ディテールが多く、形がアレンジされていたりはしないでしょうか? そういったアイテムは自分を「おしゃれ」かのように見せるのには便利なのですが、そもそもプロフェッショナルのプライオリティは、「おしゃれ」という印象を打ち出すことではなく、「むしろ不適切ともなり得る」というのが日野さんのアドバイスです。
特に弁護士や固め企業のエグゼクティブ、または金融関係といった職業は、まずは知性、重厚感、そして信頼感を感じさせることが重要です。そのためには、お洒落はプライベートの時に、仕事では職業や役職、目的にふさわしいスタイルを選んでこそ、プロフェッショナルなのです。
■何かを加えるより、もっと「引き算」を
では実際、仕事のスタイルの中では本来、どのようなことを心がけるべきなのでしょうか? 日野さんのアドバイスは意外にも何かを「身につける」ことではなく、むしろ「ムダなものを身につけない」こと。
つまりアクセサリーでも小物でも「迷ったら外す/つけない」ということです。また全身で使う色の数を減らし、2~3色に抑える、すっきりと落ち着いた方向にシフトする、ということも有効だと言います。そういえばココ・シャネルの有名な言葉にも「家を出る前に、何かひとつ外しなさい」というものがあり、シンプルであることは時代や場所、立場を超えて大事なのだと感じられます。
特におしゃれが好きな人はついアクセサリーを重ねづけしたり、ひねりのあるデザインの服を選んだり、何かとMIXしてしまいがちです。身に覚えのある人、多いのではないでしょうか!?
ところが、ビジネスの場面でゴテゴテ盛ってしまうと、情報過多で本人が見えにくくなるだけでなく「自信がない人、何かをごまかしている人かのように見えてしまう」のだと、日野さんは指摘します。
「引き算の装い」と「最低限のアイテム」で自己表現できるようになれば、盛った装いよりはるかに聡明な印象を与えられそうです。また背筋を伸ばすこと、声の高い人はワントーン低い声で話すことも、信頼感を築くためには重要、と日野さんは言います。本物のクラスが現れるスタイルに必要なものは、モノやお金ではなく、その人の意思や知性、価値観が見えることだといえそうです。
■大人が持つべき一着は「上質なネイビーのスーツ」
とはいえ、やっぱり具体的なマストハブアイテムも知りたいですよね。日野さんがおすすめしてくれたのは、タイムレスでシンプルなテーラードスーツ。色はネイビーかダークグレー、無地か遠目無地が基本ですが、ひとつだけ選ぶならネイビーがベストだそう。
というのは、スーツのグレーは「昼間の色」のため、夜には使いにくいということだけでなく、日本人の髪/肌色と合わせた場合、選び方を間違えると見すぼらしくなってしまったり、疲れて老けて見えたりすることもあるからです。それに対し、青系の色であるネイビーは、落ち着きや誠実さとともに、爽やかさや若々しさも感じさせてくれる、ビジネススタイルに効く色なのです。
女性のスーツではボトムスの選択肢もいろいろありますが、日野さんのおすすめは「ひざ丈のストレート」または「タイトなスカート」。丈はひざ中央程度から、ひざがちょうど隠れる程度の間で、自分にとってのベストを選びます。
最近はミディ丈で、ややすその広がったスカートを着ている人も増えていますが、これはビジネスに必須のシャープな現役感を欠き、奥様的な印象や、緊張感のない印象を与えてしまうこともあるので、要注意だそう。パンツはアクティブな印象が強くなるので、業種や目的・場面に応じて取り入れるとよいそうです。
ベーシックなスーツ選びで重要なのは、自分の体のサイズ、シルエットにぴったりと合っていること。日野さん自身は日本を代表するテーラー「英國屋」の、女性向けフルオーダースーツを監修することで、これらの理想をかなえるスーツを実現されています。
■一見、何の変哲もなく見えるスタイルだからこそ、人物が伝わる
このようなスーツに合わせるインナーも、変化を持たせようと躍起になることはなく、プレーンなシャツやブラウスこそ最善。靴は黒かベージュ(ヌード)のパンプスで、7cmほどの細めのヒールが足をきれいに見せてくれるそうです。フラットシューズはもとより、「3〜5cmのヒールでは、足元がもっさり見えてしまう」と日野さんは言います。逆に高すぎるヒールは動きにくくなるので、素敵なピンヒールは、パーティなど特別な場面用にとっておきましょう。
テーラードジャケットにタイトスカート、ベーシックなパンプスというスタイルは、一見何の変哲もなく、面白みもありません。雑誌の特集にもなりにくいし、ソーシャルメディアで拡散されることもありません。でもこれこそリアルでシビアなビジネスの場に最もふさわしい、ビジネスプロフェッショナルに必須な、オーセンティックなスタイル。服ではなく、その人自身がしっかり際立つのだと日野さんは言います。
もうひとつ大事なのは、このようなスタイルは「必要になったときに服だけ買えばいい」というものではない、ということ。日野さんは先日、ある企業の謝罪会見で、頭を下げている社長や役員のスーツが、急場しのぎに買ってきたものだと見抜いてしまったそうです。普通の人にはそこまで見抜けなくても、どこか落ち着かない感じは伝わるもので、目的とは真逆のバタバタ感を醸してしまいます。謝罪に限らず、有事のための服こそ、日頃から着慣れておくことが大事なのですね。
現在、アラフォー終盤の筆者自身を振り返ってみると、就職活動すら黒のスーツだったので、ネイビーのベーシックなスカートスーツなど、一度も買ったことがありませんでした。
そして確かに、会社員時代もフリーランスになってからも、「ここぞ」という場面で着るもの選びにバタバタしていた気がします。タイムレスでシンプル、上質な一着を持っていれば、いざというときに自分に感謝できることになるかもしれません。
クレジット:WRITING/福田ミホ
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