マガジンのカバー画像

diary

42
運営しているクリエイター

記事一覧

自分のためのメモ

自分のためのメモ

ずっと胸に重い石のようにあるものがあって、うまく言語化できないでいたけど、流れてくるハン・ガンにまつわる投稿を読みながら霧が晴れるように明確になった。
 
誰かから「存在しない」と思われていても、その人の中には「存在する」ことがある。特にSNSでは提示されていないこと、例えば政治や社会問題について、SNSで語っていようがいまいが、その人の中を「見る」ことは誰にもできない。SNSで提示されておらずと

もっとみる
小さな森と湖の見る夢

小さな森と湖の見る夢

湖畔には、木々が見る夢があらわれる。あるいは、誰かの霊が立っている。
 

心を預けられる場所といえばどこだろうか。安心して身を預けられる場所、同時に自分の心が寄り添いたいと思うところ、魂たち、そういう場所はどこにあるだろう。

 
“小さな森”は小さいが、通うたびにどんどん深く、広く、豊かになっていく。人間を含んだ正常な生態系があり、幻想の国の扉があり、地球にあるどこかの景色を重ねて見せてくれる

もっとみる

青空の下で破片と火を呑む

疲れたな、と思う。またこれか、とも。

たった一度の嵐のような暴力で、それまで頑張ってきたわたしは壊れてしまった。

もっとみる
another world

another world

もう一人の自分が、「どこか」で暮らしている、という感覚になることがある。

都会の、古いマンションの12階。レースのカーテン。シンプルな家具。ベランダがあって。“わたし”はいつもTシャツとショートパンツを履いてる。髪は肩より少し長いくらい。軽くウェーブしている。棚の上には硝子の器にヒヤシンスが咲いている。レースのカーテンが風になびく。そこではいつも春と夏が続いていて、たまに一日二日、秋や冬が来る。

もっとみる
flowers blooming in hell

flowers blooming in hell

自分の中に地獄がある。ぐろぐろと燃えるタールのような地獄があることを知っている。
自らの地獄を知覚し、“現実”の地獄を感じる。ふたつは繋がっている。
ある種の“空想”でもあるが、私はそれが実在することを知っている。

揺らぎを少なくすること、できる限りフラットであること、よろこびを感じる心を我慢しないこと、健康的で健全な生活を送ること。庭づくりをすること。森へ行くこと。
植物や動物、鳥や虫や、他、

もっとみる
空想ごっこ

空想ごっこ

空想ごっこ。

私が小さな喫茶店のマスターだったらいいのにな。
ブラウンの壁と小さなステンドグラス窓、椅子はビロードの赤色のソファと木製のアンティーク、人工大理石のテーブル、古い天体模型。
私はここではただの「無口なマスター」で、他には何も求められない。

不登校の少年には甘くないココアを、無口な美しい女性には紅茶を、本を片手にやってくる初老の男性には珈琲をいれてあげられる。小さなチョコレートを添

もっとみる
最近の日記

最近の日記

世界をいろいろカテゴライズするとして、今は動物や鳥、植物、鉱物と呼ばれるひとたちと仲良くなりたいと思っています。

誰でもない自分のためにしたことが、誰かのためになっていることが、ある。

白木蓮の木が庭にある想像。しあわせ。

春分
-
光るように満開の辛夷を見あげながら、もうずっと昔にもこうしていた、と思う。母に手を引かれて覚束なく歩いていたころだったろうか、それとももっと昔の、わたしがわたし

もっとみる
240228

240228

珍しく晴れる。その下の土を思いながらざらついた雪を踏み締めて、祈りを込めて歩いた。一歩一歩、ただしく冬が行き春が訪れますように、と祈りながら。柏の枯れた葉がざわざわと挨拶をしてくれる。風が吹いている。あの山から、遠く、あちらの山まで。見えない道が敷かれ、糧を求める白鳥たちが声をあげて飛んでいく。

ふと目の前に湖があった。どこまでも続く巨大な湖だ。私はその中に波紋もなく立っていた。端は深い霧によっ

もっとみる
beautiful code

beautiful code

世界は美しい暗号に溢れている。

そのとき見ている景色に、もう一つ別の、どこかの、いつかの景色が重なることがあった。それは過去に行ったことのあるどこかであったり、ネットや雑誌で見かけたことのある景色であったり、まったく情報も知らず行ったこともない異国、もっと言えば「ここ」ではない、地球にはないどこかの景色であったりした。

アート作品や器、音楽、鉱物もそうだ。
美しいものは景色を呼び起こし、重ね、

もっとみる

夏の祭りのこと

吹雪の中で雪かきをしながら。夏に。なぜあの祭りが行われてきたのかを唐突に理解する。どのようにして発生し、どのようにして形を変えていったか。血が交わり世代が変わっていくごとに。脈々と。精霊送りと呼ぶには荒々しすぎる祭り。武者や鬼を模した極彩色の巨大な灯篭。最後には海に流される灯り。(流し雛、のことも思い出した)

同じ掛け声を繰り返し、トランス状態の若者が笛の音と共に踏み鳴らす舞踏。同時に体につけた

もっとみる
最近のこと

最近のこと

懐かしいもの。竜の鼓動。野に吹き渡る風。羊飼いの角笛。水辺。水草の揺れる澄み切った水。熱い砂。紺碧の夜空。ウールにくるまって見る天の川。あたたかなお茶をくれるひとの笑み。湯気。花畑。果樹園。煉瓦の塀。鉄の柵の向こうに見える家。高く広い空。

かかりつけの薬局に行く途中で路地裏を歩いていくのだけど、古い住宅地の中になぜかぽつんと煉瓦が使われた元・雑貨屋さんみたいな外観の建物があって、いいな~と通るた

もっとみる
それでも美しいと言う

それでも美しいと言う

ご近所の草原が紅葉していて、綿毛の種を持った植物を見られて、光るように美しい野菊が咲いていて、ここがかつて名も無い湿地帯だったころを思って。

世界があまりにも美しくて、絶望も希望もいっしょくたにして、犬と歩きながら

かつてのわたしであったひとと、その相棒と、あるいは誰でもなかった影と、歩きながら。

救われてしまった。

あの日選ばれなかったはずのわたしは、それでも、この世界を美しいと言ったの

もっとみる
無垢という宇宙

無垢という宇宙

青森県立美術館で開催されている奈良美智「The Beginning Place ここから」に行ってきました。

開催されてからそれほど日にちが経っていなかったためか人が多く、普段多人数と接することがないわたしは頭がくらくらしてしまいました。でも、それだけ人気だということ。見に行けてよかったと思います。

わたしが心惹かれたのは、メインビジュアルにもなっている《Midnight Tears》などの近

もっとみる
水面のように揺らぐ

水面のように揺らぐ

小さな森へ行く。湖の水が少ないが、夏に感じた危機感のようなものはもう感じなかった。虫が多い。きのこと蜻蛉はまだ例年よりも少ない。歩いていくと色々な種類の蝶がふと思い出したように姿を見せる。

そこかしこに「どこか別の国の、遠い場所の」景色が重なっている。ここであって、同時にここではない場所の気配をまとい、妖精に手を引かれるようにして立てば、わたしは「ここ」からいなくなってしまうだろう、というような

もっとみる