見出し画像

電通が正社員の一部を業務委託契約に切り替えると発表!問題点を元司法書士が解説!

2020年11月11日 20:32付の日本経済新聞Web版によれば、電通が一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を始めるとのことです。

誰もが知っている事実なので改めて書いておきますが、電通は超長時間労働などの過酷な労働を強いて高橋まつりさんを含む少なくとも2人の自殺者を出しており、労働基準法違反で罰金刑に処されたこともある前科持ちの企業です。

業務委託契約ということになれば、労働法の適用がないからサービス残業などやらせ放題となるわけですが、果たして超長時間労働で過去に2人も自殺者を出したことを猛烈に反省するべき立場という自覚があるのか甚だ疑問です。

…しかし、実はこの手口は電通だけでなく割と広く行われています。そこで本記事では、労働法講座の番外篇として、雇用契約と業務委託契約の違いなどについてまとめてみます。

わんこ

☆「業務委託契約」による「個人事業主」の罠

個人が企業の仕事に従事する場合には主に2つの方法があります。

✅「雇用契約」を締結し、「労働者」という立場で働く。

✅「業務委託契約」を締結し、「個人事業主」という立場で仕事を請け負う。

言うまでもなく労働法は前者のみが対象です。ですから後者ということになれば、8時間までという制限がなく何時間働かされても文句は言えないですし、そもそも「残業」という概念自体がなくなるわけですから、いわゆるサービス残業もやらせ放題となります。遅刻したら罰金いくら、のような損害賠償の予定も許されてしまいます。しかも、労働基準監督署に訴えても相手にしてくれません(そもそも「労働者」ではないからです)。

一般に「業務委託契約」とか「個人事業主」といった言葉にはフリーランスなイメージをお持ちかもしれませんが、実態はそうとは限らず、むしろ労働者としての権利を剥奪された奴隷みたいな存在もたくさんあります。

コンビニのフランチャイズ契約が大きな社会問題となっています。コンビニ店長は本部の締め付けが厳しくほとんど自由裁量はないにもかかわらず、労働者ではないので誰も守ってくれず、文字通り24時間働かされているような実態があります。土屋トカチ監督のドキュメンタリー映画「コンビニの秘密」がこの問題を詳しく取り上げているのでご興味があればぜひご覧ください。

コンビニの秘密

いずれにせよ、あなたが企業と結ぼうとしている契約は「雇用契約」なのかそれとも「業務委託契約」なのか、押印する前によく確認してください。

☆脱法行為は許さない!

…腹黒い経営者は、「だったらすべての従業員を業務委託契約ってことにすればいいじゃん!」などと考えるかもしれませんが、そんな不正義はまかり通りません。

裁判所は、契約書の題名が「雇用契約」なのかそれとも「業務委託契約」なのかという形式的なことだけでなく(それも重要な一要素ではありますが)、実質を見て判断します。

つまり、契約書のタイトルがどのようなものであれ、あなたと企業との間に「使用従属性」が認められれば、それは「業務委託契約」の名を借りた「雇用契約」であるということになり、あなたは「労働者」として労働法上の保護を受けることができるのです。

「使用従属性」の判断のポイントは例えば以下のとおりです。

✅仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由があるか?
✅業務遂行上の指揮監督の程度はどうか?
✅勤務場所・勤務時間が拘束されているか?
✅報酬が仕事の成果ではなく働いたことそのものに対するもの(時間給や日給によって定められるなど)であるか?
✅機械・器具が会社負担によって会社所定のものが用意されているか?
✅報酬の額が一般従業員と同一であるか?
✅「その会社の仕事しかできない」といった専属性はあるか?
✅就業規則・服務規律などの適用があるか?
✅給与所得として源泉徴収されているか?
✅退職金制度、福利厚生制度などの適用はあるか?

要するに、「個人事業主」とは名ばかりで実質は企業の言いなりなんじゃないの?…ということを、それこそ「総合的・俯瞰的」に裁判所は判断をします。

ストールと女の子

☆労働者の権利は本来こんなに手厚い!

もしあなたが実質は企業の言いなりであって、あなたの契約が雇用契約と認められれば、あなたは「労働者」として例えば以下の権利を主張できます!

🌹雇用保険、健康保険、労災保険、厚生年金保険等の社会保険制度の利用
🌹有給休暇の取得
🌹会社はあなたを簡単には解雇できない
🌹労働基準法に基づく残業代請求

ですから、そもそも契約時点で契約内容はよく確認するべきですが、契約書が「業務委託契約」となっていても諦めないで、労働事件に精通した弁護士さんなどに相談してみてください。

☆まとめ

「業務委託契約」に基づく「個人事業主」は労働法の保護が受けられない

「雇用契約」か「業務委託契約」かは形式面だけでなく実質を見て判断される

✅労働者の権利は本来は手厚い!

ですから電通の件も、「業務委託契約」であるという主張が裁判所に認められるかどうかは争ってみないとわかりません。契約がどうであれ、非人間的な労働状況は許されないものと言うべきです。

電通だけの問題ではありません。「働き方改革」という言葉が躍る昨今、ぜひこの問題に皆さんが関心を持っていただけたら幸甚でございます🙇‍♀️またねー🧡


<併せて読みたい!>

私の原点について

マガジンをフォローしてブラック企業から命を守ろう!

この記事を書いたコペル&アヤはこんな人です🧡



この記事が参加している募集

あなたのスキ・コメント・サポート&おススメが励みになっています!本当にありがとうございます🙇‍♀️いただいたサポートは 🍎noteを書くための書籍購入、資格検定の受験料 🍰アヤ先生の胃袋へスイーツ補給 に主に遣わせていただきます😋私と一緒にハートフル社会を築きましょう💕