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エッセイとイタリアからのおいしいもの

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日々の何気ない事柄、ふと道で思いついたことを書き綴っている、そのエッセイとともに繰り出されるイタリア料理のレシピ。色々と考えていると結局何かおいしいものにたどり着きます。Prim…
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#スローフード

Farinaが肌に触れる(北イタリアのパスタ)

 今朝は子どもと一緒に屋上へ出て、ヒッチコックの裏窓で覗かれるダンサーみたいな格好でストレッチをしていたら、やっぱりこの気持ちいい陽射しがもったいないなと思いはじめて、かけ布団を洗うことにした。真っ白の羽毛布団を四つ折りにして、浴槽の中で足踏みして洗うのは、うどんの生地が素肌に触れる感覚を思い出すような、そういう心地よさがあった。  私は粉が大好き。食べ物として好きなのもあるが、やはり自分でこねる時の感触がたまらない。いつもまとめて10kgぐらい様々な種類を買いおきし、和洋

イタリアのレストランの吉野家化もしくは一蘭化への危惧

 昨年末イタリアでクリスマスを過ごしている時は思ってもいなかった。まさかこんな報道のされ方でこの国が世界から注目されるときが来るとは。私たちが1月6日に北京経由で帰国した時、武漢で良くわからない肺炎が流行っているというのは小耳に挟んでいた。イタリアではそんなニュースはまだ全然報道されていなかったと思う。しかし今やイタリアのコロナ感染は把握されているだけでも感染者数223,885件、死者数31,160人と日本とは比べ物にならないぐらいのパンデミックだ。総人口60.6百万人と日本

Mammaとの約束(乾燥パスタの茹でかた)

 このコロナ騒動下、80歳の義母はローマのアパートで一人きり家に篭っている。そのことを思うと毎日気の毒で仕方ない。しかしもちろん高齢なので外には出て欲しくない。けれどもあの人は無駄に散歩して、出会した犬という犬に「bello? o bella?」と話しかけて、(『可愛い』を男性名名詞と女性名詞両方で聞いて、暗にオスかメスか尋ねている。AnconaのVittoria通りなんて犬の散歩だらけで、1mごとに立ち止まるので全然目的地につかない)何かにかこつけてすぐに銀行に行って、美容

ファッション化する料理 (Amor polenta)

 今日は少し悲しいことがあって珍しく心が沈む。心が沈むと文章は書けないのだろうか。そんな気もしていたが、とにかく書き始めてみる。もしかしたら書いているうちにテンションが上がっていくかもしれない。それに今朝読了したアガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」がどうもシンクロしてしまっていたのだ。(あとがきは後で読んでみる。自分の感覚が他人に被せられて、知らず知らずのうちに自分の元ある感情が消えてしまいそうで怖いから)この小説はミステリーだけれども実際には何も起こらない。ずっと母で

スロースロースロー 〜便利じゃないイタリア〜

 先日「洗濯マグちゃん」という、洗剤を使わずにマグネシウムで洗うという方法をブログでも紹介したが、 それを昔イタリアに住んでいたという近所の人にもおすすめしたら、 「そう言えばイタリアに住んでいた時、近所のおばさんがクルミで洗ってたなあ」 と衝撃の一言。クルミ洗濯!?そんなの私は初めて知りました・・・!上には上がいる。早速”Noci(クルミ), lavastrice(洗濯機), bucato(洗濯物)"と検索すると・・・なんと、なんとたくさん検索ヒット!  クルミの皮

オーブンからの小麦の匂い

 近所に少し有名なパン屋さんがある。老夫婦でやっているパン屋で、みんなあの店の名前を覚えていないから「あのアンパンマンパンが売っているお店」と言っている。絵本に題材にもなったことがあるお店らしい。そんな老舗のいかにも昔ながらの日本のパン屋。 そこのおじさんは鼻高々に言う。 「パンが好きすぎて、夫婦でパンをめぐる世界旅行をしたんだよ。フランスはやっぱり美味しかったな〜けど意外にもスイスがおいしかったよ、仕事が丁寧だった。イタリアはね、パン、不味かったね。」  きっと外資系