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【東京六大学野球】続・FIPで見るプロ入りに必要な成績(投手・2022年版)【ドラフト】

 こんにちは、宜野座パーラーです。プロ野球もオープン戦が始まり、いよいよ球春到来という感じですね。オフシーズン中の自由研究もラストの第4弾です。今回は第2弾で書いたもの(以下の記事です。ぜひこちらもご覧ください)の続編となります。

 以前の記事では「FIP」という指標に注目し、東京六大学の投手がプロ入りするには「FIP3未満が目安」だと結論付けました。ただ、これも野手編と同様に、プロ入りした選手のみを分析対象としていたため、指名漏れの選手を考慮していない不完全なものでした。そこで、今回は指名漏れの選手も含めて、プロ志望届を提出した選手を対象にした完全版のようなものにアップデートしました。

1.結論:FIP「3.5」未満であれば大いに可能性あり

 以前の記事では2010年ドラフト以降のプロ入り投手のFIPを確認し、「FIP3未満がプロ入りの目安」だと結論付けましたが、いわゆる指名漏れの投手まで考慮した結果、これは少し厳しい結論だったことが分かりました。

 指名漏れの投手も加えた「FIPとプロ入り率」の関係は図表1の通りです。FIP「3.0以上3.5未満」のゾーンでもプロ入り率は約70%と高く、FIP3.5未満であれば十分にプロ入りの可能性があるといえるでしょう。

図表1:ドラフト指名の有無とプロ入り率(対象:通算50投球回以上の投手)

2.投手の方がプロ入り率が高い

 ここで改めて、プロ入り率とは「育成指名を含めたNPBドラフト指名選手数÷プロ志望届提出選手数」で算出し、社会人や独立リーグ経由でのNPB入りは分子に加算していません。図表2はそのプロ入り率を投手・野手に分けた推移です。

図表2:プロ入り率の推移(投手・野手)

 近年、プロ志望届提出数は増加し、特に2018年以降は投手・野手合計で8→17→15→16→24と大きく増えています。さすがにこれだけ分母が増えれば、プロ入り率の水準はやや下がりましたが、全体感で見れば総じて投手の方が高く推移していることが見て取れます。2018年や2022年はやや低いプロ入り率となりましたが、投手の方が「高い確率で指名されそうな」選手のみがプロ志望届を提出する傾向にありそうです。とはいえ、2020年は佐藤宏樹(慶大ーソフトバンク)と石川達也(法大ーDeNA)がともに育成1位指名でプロ入りしています。両投手とも最終学年は故障に苦しみましたが、育成契約からプロ野球に挑戦しており、必ずしも即戦力のエース級の投手のみがプロ入りするような時代ではなくなりつつあります。

3.2022年指名漏れ選手:宮・増居の両左腕の今後に注目

 ここからは2022年のドラフトで指名漏れした投手について見てみます(図表3)。大学通算45登板がすべてリリーフだった左腕・宮海土(立大ーNTT東日本[予定])は、FIP3.10の好成績を残しながらの指名漏れでした。K/9は9.99と高い奪三振能力が魅力でしたが、一方でBB/9は5.81と安定感に欠いたことが響いたのかもしれません。多少の荒れ球であっても魅力十分の鉄腕リリーバーなので、まずは社会人でフル回転して存在感をアピールしたいところでしょう。

図表3:2022年ドラフト指名漏れ投手

 慶大の左腕エース・増居翔太(慶大ートヨタ自動車[予定])も通算17勝と勝てる投手ではありましたが、打たせて取るタイプながら最終学年でも制球に苦しみ、いまひとつの成績で大学野球を終える形となりました。3年生までの制球力を取り戻し、社会人野球で力強い投球ができるようになれば、2年後のプロ入りもありうる存在です。

4.FIP「3」未満の指名漏れ投手:4年目ながら東京ガス・髙橋の指名はあるか

 最後に、2021年以前の指名漏れ投手についても見てみます(図表4)。指名漏れ投手の中で最も好成績を残したのは、現在は明大のコーチを務める西嶋一記(明大ー米マイナーー熊本ゴールデンラークスー富士重工業)です。FIP2.39は同期でプロ入りした投手と並んでも遜色のない数字で、特にBB/9は2.15、HR/9は0.18と丁寧な投球が持ち味でした。指名漏れ後、ドジャースとマイナー契約を結び米国に渡りました。

図表4:FIP「3」未満の指名漏れ投手

 表中でドラフト注目の投手は左腕・髙橋佑樹(慶大ー東京ガス)です。今年で社会人4年ですが、ここ2年は先発の柱として活躍が目立ちます。大学時代は丁寧な投球で、BB/9は2.37、FIP2.86と好成績を残しました。その出で立ちは一見バリバリの力投派のようにも見えますが、打者のタイミングを外すことが上手な技巧派の一面も持ち味です。個人的には今年もプロ入りのチャンスはあると思っています。

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