詩)初めて、ぶりかまを調理す
年末に正月に使う鮪を買いに鮪屋に行く 中とろ、赤身が並ぶ中200円でぶりかまが売られていて 思わず買ってしまう どうやって食すのかいまいち判らぬまま 1月5日まで冷凍庫に眠っていた
通常モードに戻るために 正月用の残った食材を整理しなければならない 冷凍庫で王様のように場所を取っているぶりかまを何とかしなければならない 200円にツラレテ勢いで買ってきたぶりかま 塩焼き/煮つけ用とある スマホで手引きを見ながら塩焼きにしてみることにする パックから出し、えらは焦げるから切り落とせいう指示通り切り落とそうとするが、骨が硬くて簡単ではない それから塩でもみ少し置いてから水洗いして水気を取り、皮の部分に包丁で十字を入れ火が通りやすいようにする 少し厚い皮に包丁が入る手ごたえを感じる もう一度粗塩を振る 初めての調理というのはテンションが上がる このかまの大きさからブリ本体の大きさを想像してみる 冷たい能登の海を生きてきたこの寒ブリ 頭から尾っぽまで1メートルはあったかな 底引き網で引き揚げられ 市場で売られ 頭を切り落とされ 身は剥がされて刺身や煮つけになり 残ったかまがいまここにある それを食べ尽くそうとしている 200円じゃぶりにはちょっと不本意だな 魚焼き機にいれる 魚の網が焦げ付かないように米油を塗る 滴る油を受け取る魚焼き機の取り皿には水を入れておく 中火で20分 皮が焦げるにおいが充満する 油がぼとぼと滲み出ている 時々油に反応してバッバッと火が上がる その火を見ながら年末に母が「こうして普通にいるのが一番幸せよね」と唐突に言ったことを思い出す 1月1日能登地震 過疎と高齢化の街を地震が襲い9月には集中豪雨もあった 能登でいちばん人口の少ない市の珠洲市の蛸島小学校のたよりでの校長の言葉「私は,このような状況の中でこそ,子どもたちに「思いやる心」を改めて見つめてほしいと考えています。例えば,避難所の仮設トイレが汚れていれば,目に見えますから「誰かが汚したんだな」と分かります。 しかし,いつも仮設トイレがきれいになっているとします。なぜきれいなのかということは,仮設トイレの掃除を丁寧にしたことがない人には,すぐには分かりません。ここで,「思いやる心」で見つめれば,いつも丁寧に掃除をしてくださっている人の存在に気付きます。そして,その心を自ら行動することにつなげれば,人として大きく成長できるのではないでしょうか。 いつも満タンに補給されている水の容器,隅々まで掃除されている廊下や体育館の玄関,すぐに入れるようになっているシャワーやお風呂など,避難所の周りには「思いやる心」があふれているのですから・・子どもたちに,人としての生き方を示してくださる方々に感謝いたします。」
ぶりかまはうまく焼きあがった 初めてにしては上等だ 味は皮も身も甘みと独特の風味がありおいしい。骨までしゃぶるように食べた このぶりかまを2025年の1月5日に食したことを記憶しよう ここに生きているということ 能登の冷たい海で育ったぶりの骨をしゃぶりつくしながら僕らは生きていることを記憶に刻もう