詩)ホムンクルス
「神奈川県藤沢市今田の下水施設「今田ポンプ場」の建物内で、生まれて間もないとみられる男児の遺体が見つかった」
いまって沈むイメージだね 僕は沈んでいく 穴はだんだん広くなる 終わりがない 方向感覚を失い 行き場をなくし ここにいるしかないけれど ここはどこなのかはっきりとわからない
毎日朝7時33分に家を出る 茅ヶ崎駅まで14分歩く
48分または53分の東海道線上りに乗る
横浜駅に8時22分に着く
28分の横浜発相鉄線快速に乗る
途中で快速から普通に乗り換え
三ツ境で降りる
8時55分に職場に着く
3月31日でこの習慣も終わる
足りないものを探して どろどろになり
言いたいことは 早口でしかいえない
誰かが言わないと始まらない
くるくる くるくる まわる
青く透けた いまにも消えそうな
そのことばを。
何かを書きたい。 でもこの喪失感はなんだ。 片耳が聞こえ無くなってしまい トゥルルとしか聴こてこない ちくしょう俺はなにをやっているんだ 何を 書きたいんだ 何を?
お前自身を隠して。 逃げても逃げられないこの感覚はなんだ 時計の針は進み 涙が不自然に溢れて来る 砂利の上で誰かに呼ばれている ここはどこか ここにあることを書けないのはなぜか
準備はいいか。 もう時間切れが近いのか そうなのかもしれない 止まらないものを止められない。沈黙。 問いかけが問うことが 彷徨う。
救われないものたち。 生きることを突然断ち切られる ところでお前はまだ まだ何も書いていない? まだここでのんびり生きている?
ホムンクルス 慎重に生きても そうでなくても
けたたましいサイレンがなり続ける中 銃口が突きつけられ 手を後ろに組み 自分のついてきた嘘は大したことなかったことを知る その時 手のひらには一滴の水 透明な一瞬 なんの理由もない そういうものだ 最後はいつも
ただひとつわかる または ただ ある
沈むこと
言いかけの
言葉
のよう
だけど